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06> Addition Story
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「おーい、彼方! 帰るぞー」
俺は、彼方にそう声を掛ける。もう、一緒の登下校は毎日の日課になっていて、俺はそれを毎日楽しみにしている。
……なーんていったら、あのツンデレな彼方は、すごく怒るんだろうなー。
「おー、ごめん、今日バイトあってさ、一緒に帰れねぇや」
「そうか……わぁーった」
その日、俺は一人で帰った。
俺が告白した日から、早5年。俺らは、高校二年生になった。勿論、小学生の時から、たまに喧嘩はするけど、恋人同士のままだ。
あの日から、ずっと俺らは一緒の登下校……のはずだった。いや、そうなるべきだった。周りの人にも、俺らが恋人同士だってことは話してあるし、隠す必要はない。
しかし、ここ数日、なぜか彼方は一緒に帰ってくれない。いつも、バイトバイト言って先にどこかへ行ってしまう。
バイトの話をすることも多いし、なんだよ、彼氏よりも金かよ。と、つい不貞腐れてしまう。
元から、彼方の家は裕福な方じゃないし、大変なのかもしれない。だけど、やっぱりちょっと妬いてしまうのは仕方ないことだ。
まぁ、登校は一緒だから、我慢するしかない、と言われればそこまでなのだが。
そして、今日も一緒に帰ろう、と声を掛ける放課後がやってきた。もしかしたら、一緒に帰れるかもしれない、と俺は毎日声をかけている。
だから、いつもどおり、彼方の方に目線を向けた時だった。
「なぁ……亮、ちょっといいか?」
「うぉっ!?」
いつも彼がいるはずの席に彼はいなくて、なぜか俺の目の前に彼方がいた。つい、びっくりしてしまう。
なんでか、彼方の様子がいつもとは違っていた。目はせわしなくキョロキョロしていて、雰囲気が落ち着いていない。いつもなら、ぶっすーっと冷静を貫き通しているのに。……そういうところも好きだけど。
どうしたんだろう。もしかして、別れ話? と、縁起もないことを考えてしまう。だって、こんなにオロオロしてるこいつをみるのは初めてなんだよ。
とりあえず、「おう」と返事して、彼方についていく。ひと気のないところで話がしたいらしい。やっぱり……。
そして、空き教室の中にはいると、彼方がゆっくりと振り返った。
「なぁ、今日がなんの日か、知ってるか……?」
ぼそっ、と彼方が聞いた。なんの日って……うーん、平日じゃないのか? 俺は、よく分からなくて、首をかしげた。
すると、彼方がまたゆっくりと口を開く。
「今日はさ、亮の誕生日だよ」
そう言われて、俺はすべてを思い出した。
12月25日。俺の誕生日。
すっかり、忘れていた。小さい時は誕生日が楽しみだったのに、今は忙しくてそんなものを気にしていなかった。
でも、まさかこいつが覚えてくれているなんて。
彼方は、ゆっくりと俺に近づいた。
「あのさ、亮。俺、亮の為にがんばって金貯めてさ、ほら……これ、買ってきたんだぜ?」
そういって、亮がポケットから取り出したもの。それは……なんと、指輪だった。
驚いて、声も出ない。
「まだこんな安いのしか買えないけどさ……いつか、本物買うから。な、一応ペアリングだぜっ!!」
黙ったままの俺。今度は、嬉しすぎて感激してしまって、声を出したら涙声になりそうで怖かったから黙っていた。
でも、彼方はそれが俺が嫌がっているかなにかだと勘違いして、ずっとペアリングだとかなんとかいっていた。
俺は、ぎゆっと彼方を抱きしめた。
「ありがと。彼方……大好き」
「 ……そうか、良かった」
「彼方……愛してる。もう、絶対にお前から離れる気ないから」
「……分かってるって。俺も離れねぇし」
「なぁ、彼方」
「ん?」
「彼方も、俺のこと、好きっていってよ」
「…っんで、そんな恥ずかしいこと…」
「俺も言ったんだぞ?」
「…俺も、亮のこと、……愛してる……っって、言わせんなよっ……照れるだろ…っ」
その後、最終下校のチャイムが学校に響き渡るまで、俺らは甘いひと時を過ごした。
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