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学園もの(5)
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悪魔の世界のはしっこに、人間界と直接つながる大きな穴があいている。
その穴に飛び込めば悪魔も人間になることができる…らしい…という…うわさがある。
学校を飛び出した僕は、その穴の淵で三日三晩ぐずぐずしていた。
僕は人間になる!
でも、本当にここに飛び込んだら人間になれるの?
人間になったら、ユキやタカネに会えなくなっちゃうのかな…。
ああ、でも、メロンパンをめいっぱい食べたい!
そんな感じで勇気が出ないまま。
今ごろ学校はどうなってるんだろう。誰か僕のこと探してくれてるのかな。それとも、放っとかれてるのかな。小さい悪魔1人いなくなったところで何の支障もないし。
どちらにしろ学校にはもう帰れない。帰りたくない。
ここに落ちるしかない…。
ごくりと唾を飲み、穴をのぞいてみる。底の方には人間界の様子が見える。…あっ、メロンパンも見える。メロンパンがたくさん並んでる!メロンパン工場ってやつ?!あそこ、行きたい!
ぐっと身を乗り出すと、今にも落ちてしまいそうだ。メロンパンの上に落ちるなら、それも幸せ…
「おい!」
大きいメロンパンに着地してメロンパンの香りに包まれる、というところまで想像してうっとりしていたのに、後ろから強い力で肩をつかんで引っ張られ、しりもちをついた。
「うわあ!いたた…」
振り返ると、やけに怒ったような顔をしたリリツが立っていた。
「リリツ?なんでここに」
「探したんだぞ」
「えー、リリツが…?」
「どうしてこんなとこに来てるんだよ。お前、本当に人間になるつもりか?」
「リリツには関係ないじゃん。それより学校はどうなってるの?ユキはどうしてる?」
「お前…っ」
リリツは大きく息を吸いこんだ。
「……知らねえよ。学校がどうなってるかなんて」
ふと思いついて、リリツの顔を見上げてみた。
「もしかして、僕のことずっと探してくれてたの?学校も行かずに」
「は…」
リリツの顔がさっと赤くなった。
「なわけねえだろ」
「じゃあどうしてこんなところに」
「た、たまたま通りがかっただけだ」
「えー?たまたま来る場所かなあ」
「うるせえ!いいから帰るぞ!」
「やだよ!僕は人間になるんだもん」
「じゃあさっさと飛び込めばよかっただろ。そんな勇気ないくせに」
「ぐう…」
リリツに手を引っ張られた。
「立て」
「いやだ」
「ここは本来立ち入り禁止の場所だ。あんまりいると危ないぞ」
「リリツと帰るのはなんかいやだもん!」
「そんなに嫌いかよ、俺のこと」
「嫌いだよ。すぐいじめてくるし」
「…じゃあもういじめないから。一緒に帰ろう、な?」
「……」
どうしてリリツはこんなに僕に構ってくるんだろう。僕のこと嫌いなら、ほっといてくれればいいのに。
「リリツは…」
「しっ。誰か来るぞ」
「えっ?」
リリツに乱暴に腕を引かれ、大きな岩の後ろに隠れた。
この3日間、誰も来なかったのに。珍しいなあ…。
2人分の足音が聞こえる。
「本当にここで、あくまさんに会えるの…?」
「…まあ」
知っている声のような気がして、ちらっと覗いてみると、なんとユキとマオだった。珍しい組み合わせだ。残念ながら僕を探しにきたわけではなさそう…。
「ねえリリツ……リリツ?」
リリツを見ると、なぜか少し笑っていた。
なんだか、嫌な予感がする。
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