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吉野の恋人(1)
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<前回までの吉野くん>
片思いの相手・碧にフラれて傷心の吉野。しかしその後碧の態度が急変。話しかけられてデートして告白されて付き合うことになってしまった。その正体は双子の弟の翠なのだが、吉野は全く気づいてない。
(「淫魔vs天使」「翠と碧」を参照だ!)
ーーー
碧くんは不思議な人だ。以前からそう思っていて、そこが好きだったんだけど、最近ますますそう感じている。
お付き合いするにあたって、碧くんは奇妙で厳密なルールを設けた。
学校では一切会話をしないこと。
目を合わせるのも不可。
基本的にお互い近寄らない。
付き合ってるのを他の人に隠したい…ということなんだろうか?
それにしても、一切会話をしないというのはやりすぎな気がする。破ったら別れるというやけに重いルールだし…。
それでも僕は満足だ!憧れの碧くんと、つ、つ、付き合ってる…!
「どうした?」
碧くんにちょんと肩をつつかれた。
「碧くんと一緒にいられる幸せに浸ってました!ごめんなさい!」
「馬鹿だな、吉野は」
「うん!馬鹿だよ!」
何を言われても嬉しくなる。
なぜなら僕は今!碧くんと休日デートをしているから!
「碧くん!碧くん!今日は素敵な一日にしようね!」
「はあ」
「どこに行く?映画館とか?最近面白そうな映画が始まったらしくて〜」
「映画はダメ」
「え!どうして?」
「話、できないじゃん」
「あ、碧くん〜!」
僕と話をしたいってこと?嬉しい!
「えーっとじゃあ、甘いものでも食べに行く?…あ、だめだ。そういえば碧くん、甘いもの苦手だったよね」
「…そんな話したっけ?」
「しっ…してない…。ごめん!碧くんのこと知りたくて、色々観察してたから…」
どうしよう。ストーカーだと思われちゃう。
「……プリンなら、食える」
碧くんが不機嫌そうに言った。
「えっ?でもそんなデータどこにも…」
「俺が食えるっつったら食えるの。パステル行くぞ」
「かっ…」
かわいい〜!
甘いもの苦手なのにプリンだけ食べられるとか、超かわいい〜!
普段はクールなのに、何このギャップ。ずるい。
パステルでパスタとプリンを食べることになった。
プリンが出てきた瞬間、碧くんの顔が別人みたいにふわっと柔らかくなったのに気づき、幸せな気分になる。
しかし一瞬でいつもの堂々たる真顔に戻ってしまった。
「プリン、そんなに好きなの?」
僕がそう聞くと、碧くんはこくりとうなずいた。
「そっかー。意外だな〜。でもそんな碧くんも好き!」
「ふーん…そんなに好きなの?俺のこと」
「好きだよ!」
「付き合う前と付き合った後、どっちの方が好き?」
「え…?」
付き合う前と付き合った後??
これはどう答えるのが正解なんだ…?
「どっちと言われても、比べられないよー」
「へえ…」
どうやら不正解だったらしい。碧くんは口を閉ざしてしまった。
妙に居心地の悪い沈黙が流れる。
「あ…えっと、碧くん!僕のプリンあげるよ!」
「…え、いいの?」
碧くんは嬉しそうに顔を上げた。
「いいよ。僕実はプリンそんなに好きじゃなくて…」
「あ…そうなんだ…」
碧くんはなぜか少しがっかりした様子でプリンを口に運んだけど、食べた瞬間ころっと笑顔になった。
「おいしーい!」
「あはは、碧くん、かわいいね。こんなに子どもっぽいとこ初めて見たよ」
「そっ……そうだよね」
「でも僕、こういう碧くんもすごく好きだよ。比べられないって言ったけど、付き合ってから碧くんの色んな面を知ることができて、いっそう好きになっちゃうっていうか…」
「あのさあ」
碧くんは僕の言葉を遮った。
「な、何でしょうか。しゃべりすぎでしょうか」
「名字で呼んで」
「…名字?」
「せっかく付き合い始めたんだし、呼び方変えようよ。今までは碧くんだったけど、三崎でいいよ」
「そういうのって普通逆では…?」
「嫌なら別れる」
「えー!そんなこと言わないでよ。わかった。これからは三崎くんって呼ぶね」
「うん」
「じゃあ逆に、三崎くんは僕のこと、下の名前で呼んでよ」
言っちゃったー!
なんとなく遠慮して言えなかったこと、言っちゃったー!
碧くんは少し考えたあと言った。
「吉野は吉野だな」
「なっ……そっか…」
「…齟齬がなぁ」
「そご?SOGOのこと?あれそごうって読むんだよ」
「あー、はいはい」
碧くんはテキトーに返事をして、にこにこしながらプリンを食べ終えた。食べ終えてしまった。碧くんの可愛らしい食べっぷり、もっと見ていたかった…。
「三崎くん、この後どうする?」
「んー……特にしたいこともないし」
「か、解散はやだよ!」
「じゃあ吉野の家行っていい?」
「えっ」
えーっ!僕の家!
ど、どうしよう。こんなに急に距離を詰めていたら、碧くんのインフレを起こしてしまう!
固まっていたら、碧くんにプリンのスプーンでほっぺたをつつかれた。
「何?だめなの?」
「行きましょう」
あはぁ…幸せ…。
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