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エピローグ→ユキの場合(1)
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他人から見れば、僕は波瀾万丈な人生を送ってきたほうだ。
幼少期に両親が事故で亡くなり、歳の離れた兄と2人でなんとか暮らしてきた。
でも時々…違和感に襲われる。
僕の人生は、本当にこれで合ってるんだろうか。何か大切なものを忘れてしまったような気がする。
しかし僕が何を思ったとしても、時間はどんどん流れていく。中学生を卒業し、高校生になり、大学生になり…
そして現在、僕は25歳の夏を迎えている。
「兄ちゃん、ただいまー」
深夜2時、僕はほろ酔い状態で帰宅した。
どれだけ帰りが遅くなっても、兄は寝ずに僕を待ってくれている…と話すと、大抵の人に驚かれる。だけど僕は何とも思わない。兄がしたくてしていることなんだ。
「おかえり…」
兄は机の上に突っ伏していたが、眠そうに目を擦りながら顔を上げた。
「遅かったな、ユキ。何してたんだ?」
「んー…別に?まあ色々〜。あ、焼肉食べたよ!高いやつ!」
「いくらしたんだ?」
「わかんない。焼肉は人のお金で食べるもんでしょ」
「あんまり危ないことはするなよ」
ため息をつく兄の腕にぎゅーっと抱きついた。
「大丈夫!毎日すっごく楽しいもん」
「ユキは…いつまでそんな生活を続けるつもりだ?大学卒業して4年も経つのに、就職もせずに毎日ふらふらして…」
「兄ちゃん、怒っちゃやだなぁ」
顔を近づけると、兄はそっぽを向いた。
「…別に、怒ってるわけじゃない。聞いただけだ」
どうしてかわからないけど、兄は決定的に僕に強く出られない。僕のぶりっ子が1番効くのは、たぶん兄だ。子どもっぽくわがままを言ってみせると、簡単に言うことを聞いてくれる。
「ねえマオくん、今日は一緒に寝よ?」
甘い声でそう誘うと、兄の体が強張った。
「名前で呼ぶなっていつも言ってるだろ…」
「なんでー?マオくん、マオくん」
「…俺はもう寝る。ユキも風呂入って早く寝ろよ」
兄は僕を腕から引き剥がし、寝室へ足早に去っていった。
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