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03
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俺はただ、ひたすら走った
歩夢に会いたい…
その一心で
待ってて…歩夢…
今、会いに行くから…
そしてしばらくして
俺は歩夢の家へとたどり着いた
2階にある歩夢の部屋を見ると
カーテンは閉められたままだった
「…歩夢…」
俺は焦る気持ちを落ち着かせながら
チャイムを鳴らした
数分後、ガチャという音がして
ドアが開けられた
「…歩夢…!」
出てきた人物は歩夢だった
ひどくやつれていて、前よりはるかに痩せている
顔色は悪く、白い肌が
さらに白くなっていた
着ていたジャージから見えた腕は
ただでさえ細かったのに、さらに細くなっている
右手には包帯が巻かれていた
その包帯が痛々しい…
「……とりあえず…中入れよ…」
「うん…」
力なく歩夢はそう言った
立っているのも辛そうだ
足元がふらついている
「…どうしたんだ?いきなり来て…」
歩夢の部屋に入ると同時に
不思議そうに歩夢が聞いてきた
「心配だったんだ。歩夢の事が…」
「…そっか…心配かけて悪かったな…」
「…歩夢…」
囁くそうな声でそう言うと
歩夢はうつむいてしまった
その姿を見ているだけで…
俺の胸は締めつけられる
「…紘…」
「ん?どうしたの?」
「…嘘つきで…ごめんな…」
「っ?!」
今にも泣きそうな声で
歩夢が言った
「俺は…嘘つきだから…だから琉衣にも…嫌われるんだよ…」
「そんな事ないよ…!歩夢は嘘つきなんかじゃない!」
「…いや…俺は嘘つきだ…最低だよな…本当…バカだよな…俺って…」
声を震わせながら
歩夢は言った
かすかに体も震えている
「…嫌われたくなかった…琉衣にだけは…嫌われたくなかったのに…!」
歩夢…
泣かないでよ…
俺がいるから…
喉まで出かかったその言葉を
ギリギリで飲み込む
「やっぱり…俺じゃダメだった…愛斗に勝てなかった…!」
「……っ」
「俺の方が…琉衣の事…好きなのになぁ…琉衣を好きな気持ちは…誰にも負けないって…思ってたのになぁ…」
独り言のように
涙をこらえながら
歩夢は呟く…
「…俺じゃ…琉衣の1番には…なれなかった…!琉衣のそばにいる事さえ出来ない…!こんなに好きなのに…!俺は…!」
「歩夢…もういいよ…」
それだけ…
琉衣のことを愛してたんだね…
よく…分かったよ
伝わってきたよ…歩夢の気持ち…
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