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距離
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【冬弥】
「なにしてんの?」
冷たい言い方に聞こえた
千秋には俺の気持ちなんてわからない
だから答えてなんかやらない
無言で荷物を奥へ移動させる
泣き顔も見られたくない
暗闇で、鼻をすする音だけが響いている
俺、もう泣いてるって確定してんじゃん
軽くため息をついて、千秋を見た
「冬弥…俺から逃げんの?」
逃げる………そうか、そんな風に思われてるんだ
俺は逃げるとか、そういうことをしたいんじゃない
自分をリセットしたかっただけ
荷物を見れば、出ていこうとしているのが否が応でもわかるだろうが、それだけの問題じゃないのだからそこは反論する俺
「違う、やり直すんだ、俺たち」
普段から雄弁な千秋とは違って、口下手が邪魔をする
上手く言えないし伝えられないもどかしさ
なんとかしたいけれど、今の自分ではどうにもならなかった
少しだけ離れて見直したい
カッコつけみたいに思われるかな?
ところが、千秋の反応は違っていた
「冬弥が居なくなったら俺はもうここへは戻ってこないから」
絞り出すように発せられる言葉
俺はてっきり鬱陶しがられていると思っていた
だったら距離を置くことも必要だと
「千秋…俺そんなんじゃないよ、ちょっと距離を置く方がいいのかなと…」
「なんで?」
遮るように重ねてきた
……………怒ってる?
慌てて訂正するも、千秋の様子がおかしい
「千秋?」
無言で俺の隣に座った
そして、噛み付くようなキスをした
「……っ、ち、あ……ふぅ、んっ」
喋らせないと言わんばかりに舌を絡ませてくる
頭の芯に響くような感覚…
やっと離してくれ、息を整える……何、千秋?
「逃げるとかズルいから、嫌なら…別れたいならはっきり言えよ!」
「…や、そうじゃ…な…千秋?」
涙がスーッと頬を伝った
ポタっと手の甲に落ちたけど、それよりも……
「嫌なら嫌って、なんでちゃんと言えない?好きなら…愛してるんなら俺を手放すな!」
そうか、俺はやっぱり逃げようとしていたんだ…
答えの代わりに、俺は強引に引き寄せて抱きしめた
「馬鹿、千秋のこと嫌いになんて一生ならないよ、愛してるよ…めちゃくちゃ愛してる…だから俺から逃げないで」
俺、言ってる事とやってる事が違うよね?
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