アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
海蛍 47
-
「ヘレン、その銃を返すんだ」
薫の血に塗れた手を差し出すジョージ。
「いやよ。あなたに銃を渡せばクロエは助からない」
「お前はこのジャップにクロエを治療させようと言うのか?
俺はそんなこと、絶対に認めたりはしないからなっ!!」
「クロエの命が懸かっていても?」
「そうだ」
躊躇うことなく答えたジョージの語尾が消える間もなく、ヘレンが手にしたライフルが二度めの
火を噴いた。
「うあぁぁっ!」
弾はジョージの左太腿を撃ち抜いた。ジョージは壁際まで飛ばされ低く唸り声を上げた。
二発の銃声に町の住人が駆け付けて来た。
「ジョージ、一体、何があったんだ!?」
銃口をジョージに向けたまま、更に二発目の用意をするヘレンを目の当たりにした町の民は、
その光景に息を飲む。
「クロエが!クロエが破傷風に。
隣町の診療所へ運ぶ時間がないの。
ここで、この診療所で直ぐに治療を開始しないと、クロエは死ぬのっ!」
ヘレンは目に涙を溜め叫んだ。
「でも、ジョージがここでは治療させないと言うの。私はクロエを殺したくはないっ!」
涙で揺らいでいたヘレンの瞳は次第に、兵士のように鋭くなってきた。
「私はどこの国の医師でも、誰でもいいの。クロエを助けてくれるのなら、それだけでいい。
カオル、あなたに託せば本当にクロエは助かるの?」
ヘレンは薫に問いかけるが、目は片時もジョージからは放さない。
「私は……人を殺すために生まれて来たんじゃない。
誰かを見殺しにするために、生き残った訳でもない。
命を、命を救いたい。それだけなんです!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
47 / 200