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海蛍 50
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「クロエは……」
眠ったクロエを女たちに任せ、隣室で薫は腿を撃ち抜かれたジョージの手当をする。
刺々しく、自分に絶えず殺意さえ向けていたジョージ。
今は牙を抜かれたオオカミのように静かになっていた。
「頑張ってます。あんな小さな体で生きようとして病魔と闘っています。
あなたやヘレンさんが大好きなんでしょうね。
正直、幾度か危ない局面もあったけれどクロエは自らの生命力で乗りきっています」
傷の縫合をしながら、薫は答えた。
「俺はこんな荒くれ者だが、ヘレンとクロエは違う。
あのふたりは神様が俺に与えてくれた家族なんだ」
麻酔もなく縫合されかなりの痛みがあるはずだが、ジョージの頬を伝う涙は痛みから来ている
ものでないことを薫は理解していた。
「俺は今日まで自分がヘレンの良き夫であり、クロエの最良の父親だと信じて疑うことはなかったよ。
しかし、ヘレンに撃たれてこのザマになって初めて……
自分がクロエの親になりきれていなかったって気づいた」
包帯を巻き終え薫はジョージに肩を貸そうとしたが、ジョージは力なくそれを拒否した。
それは薫を拒否しているのではなく、誰の目にも触れないようにそこに静かにいたいが故の行為だった。
「クロエは……私の血のつながった娘じゃないんだ。
クロエの父親はアランの兄のライナスだ。妻のヘレンもライナスの妻だったんだ」
俯いたままのジョージの突然の告白に、薫は驚きすべての動きを止めた。
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