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海蛍 58
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「私はあれから丸三日も寝ていたんですか!?」
「あぁ。私がセイラムから戻った時、カオルは二階で深く深く眠っていた。
倒れたカオルをニールたちが部屋へ運んで寝かせたそうだ。
カオルに必要なのは睡眠と休養だと言ってな。
クロエの意識が戻った日の夕方、私は戻ったんだ」
久々に静まり返った診療所でふたりはコーヒーを飲みながら、アランがセイラムへたってからの
話をしていた。
「町の者たちの態度を見ていたら、何をしてもカオルへの悪い刺激になると思ってあえて
音信不通にしていたんだ。
電話をするにも誰かを通さないとならなかったしな。
しかし、まさかクロエにあんなことが起きていたなんて」
今更ながら、アランは大きなため息を一つ吐いた。
「クロエへの処置だが……」
「教えてくださいっ、私はどうすれば良かったのでしょうか!?」
コーヒーカップを手荒く置いて、真剣な眼差しで自分を見つめる薫の姿にアランは微笑んだ。
「カルテを読んだ。あの状況での対応、私は満点を出すな。しかし……」
「……はい」
「牧師には謝ったのか?仕事を無くして済まなかったって」
アランの軽口に、薫も思わず笑みをこぼした。
「もしも私ひとりで対応していたと思うと正直、ゾッとしたよ。
クロエを助けるために歯を何本もへし折るなんて、治療の名の下で果たして自分はそこまで
冷静に非情になれただろうかってな。
実は私はクロエの本当の……」
「その件は、ジョージから聴きました」
薫の言葉にアランは目を丸くした。
「その話をジョージの口から聴いたって言うのか!?」
「はい。クロエの治療中に聴きました」
「おいおい、なんてこった」
アランは今度は躊躇わず大声で笑った。
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