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pink motor poolは
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pink motor pool、専ら『pmp』と略されるそのユニットは、ギターボーカルの木田悠とベースの前島弘介の2人からなるロックデュオである。しばしば木田は「ピーエム」の長さにまで略する。
結成の経緯はあるものの結成日は明確でない。大学時代、2人が軽音サークルでバンド参加するためにメンバーも名前も急ごしらえで登録したバンドが、そのまま木田と前島の2名で活動を進めた形だ。
現在は芸能事務所へ所属し、インディーズレーベルに登録されて3年。年に一度ほどアルバムを出し、一年の半分はライブハウスにいる生活だ。
活動は順風満帆のように見えるが、ベースの前島は現在、厄介な悩みを抱えていた。それは今日も事務所に向かう車中の彼に、ため息を付かせている。
「そんなに憂鬱か」
運転席でハンドルを握るpmpのマネージャー、櫻井がため息に呼応する。
「もうそろそろ慣れろ、前島。あいつだって何が変わったわけじゃないし、悪いこともしちゃいないんだから」
「そりゃそーだけどね……」
前島は窓の外の景色から人のいない隣の席に一瞬目を移した。少し前まで、その席ではあいつ……木田が豪快に鼾をかく姿をよく見たものだ。
おそらく、木田は自分たちより早く事務所に着いている。前島はそこに辿り着くのが憂鬱で、順調に車を走らせる櫻井の背に非情すら感じている。
そして予定の5分前に車は事務所の駐車場に停まる。前島は櫻井の後に付きながら、木田がいるであろう喫煙室に向かうまでに、ため息をもう一度吐き出しておいた。
「おっす」
喫煙室の扉を開け、すぐに木田から挨拶をされる。前島はまた喉元にたまりかけた息をぐっと飲みこんで、少し笑顔を作った。
「おう……健嗣さんもおはようございます」
「おはよう、こーちゃん」
木田の隣に座るその男は、いつもの柔らかな声色と視線を前島に返した。
彼は室井健嗣、事務所ではpmp二人の先輩に当たり、現在は木田と交際中である。
前島の悩み。それはユニットの相方が男と付き合い始めたことであった。
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