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始まりの始まり。
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朝はいつも忙しく過ぎていく。
「兄ちゃん、朝ごはん~!」
「はいはい、テーブルに座って待ってなさい!」
白身だけ火が通ったような半熟の目玉焼きをプレートにのせ、一緒に焼いていたウインナーを添えてテーブルへ持っていく。
「はい、出来上がり。祐希、残さず食べろよ?」
コートを羽織りながら言うと、まだ施設に来て1年の祐希は、タコさんウインナーに目を輝かせながら頷いた。
「わかってるよ!深秋兄ちゃん今日は学校おやすみ?」
「そうだよ。だから、ちゃんと自分で準備して学校行きな。俺はもう出るから。」
「うん。行ってらっしゃーい!!」
元気な声を背中に感じながらリュックを背負い、玄関を出る。
俺は生まれた時から親がいなく、施設の前に置き去りにされた。いわゆる孤児ってものだ。
でも、施設ではそれなりの生活が出来たし、歳の近い子供もいて悲しいことなんてなかった。
さみしいことは、少しあったけど。
今俺は高校3年生で、まだ施設にいてもいい年なのだが、少し訳がありバイトをかけ持ちして、ボロアパートで一人暮らしをしている。
そして時々俺のアパートに、施設で面倒を見てやった子供らが遊びに来るのだ。
「にしても今日は寒いな……。」
早足で電車に乗り込む。この時間帯は毎回満員電車で息が苦しい。
通っている学校は都内の中心にある高校。色んな所から人が集まるから、色んな話を聞けて楽しく通っている。
にしてもこんなに密集していたら、人酔いしちゃいそうだなと、いつも思っているんだ。
学校に着くと、後ろから声をかけられる。
「輝~!おはようさん!」
「おー!おはよう楓。」
俺より少し背の低いこいつは、高校入ってから親しい友達、宮前 楓だ。
過剰な防寒対策でモコモコになった楓の体の横に、折りたたみ傘がさしてある。
「なぁ、今日折りたたみ傘なんて要る天気か?」
「輝知らないの?今日は夜に雪が降るかもって予報だったんだよ。」
「確率は?」
「30%。」
「それなら振りそうもないから大丈夫かぁ、」
そうかなぁと言いながら歩き出した楓の後に続き歩き始める。
俺の運命の歯車は、この時から回っていたのかな。なんて、今はおもっているんだ。
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