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自分のものだとおもっていた⑤完結~腐二次弱ペダ東堂/荒北/巻島
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一
後輩ができたのだよ
いや、他にも後輩はいたのだがな。
特別気になるのは一人だけだ。
いやいやいやいや。
一番はやっぱり巻ちゃんだがな。
そっちはどうだ。
秘密か。
あいかわらずつれないな。
まあいい。
インハイ楽しみにしてるぞ。
決着だ。
ではな。
電話を切る。
巻ちゃん。
感じ変わった気がする。
気のせいか。
まあいい。
俺もリドレーも、その日を目指して走り込んできたのだ。
今年、俺の山で、巻ちゃんは完全に俺のものになるのだ。
二
戦うべきところで、巻ちゃんは出てくれなかった。
荒北がかなり決めつける口調で言った。
そいつは出ないんじゃなくて出れねーんだヨ!
黙れ黙れ黙れ黙れ!
おまえに巻ちゃんの何がわかる!
わかってんぜ。
内気で、人よくて、飛びっきり速い他校のクライマーだ。
ボトルドリンク、ストローでのむんだぜ!
荒北靖友。
なぜそこまで知っている。
おまえは何を知っている。
俺は、
俺は何か見落としていないか??
三
三分ショ。
つぶやくように言ったやつを、一瞬愛しくみつめた。
ボケナスは俺だ。
今は敵じゃねえか。
あきらめてない理由は何だ。
意外性の後輩だと?
そんなやつ、存在しねえ。
存在した?
来てる!?
来てる!????
そいつが届く直前に、巻島はチームを切り離した。
東堂を追っていくのだ。
美しい走りにみとれる。
見とれてる場合じゃねえ。
ほんとどうなってんの俺。
コドモかよっ!
四
追いかける。
ひたすら追いかける。
あいつには音がない。
だから感覚で追うしかない。
俺の前には屍累々。
やつに無音で忍び寄られ、撃破された選手たちだ。
つまり、東堂はもっと前にいるのだ。
ペダル踏む足に力込める。
右に左に傾ぐタイムが俺の好調を示してる。
山神の名はおまえのものだが、俺もスパイダーダンシングの巻島ッショ。
必ず追いついて、
おまえをしとめる…
七戦七勝。
勝敗なし。
ここが決着の時だ。
五
追いついてきた巻ちゃんとの、心臓が破裂するほどの激しいバトルの末に、俺が手にしたのは輝かしい勝利だった。
にもかかわらず、俺の心はザワザワしていた。
巻ちゃんは確実に成長していた。
もうカチューシャ!! クモ!! と怒鳴り合ってた俺たちではなかった。
何とはわからない何かが変わっていた。
早期卒業と渡英が答えだとしても、俺的には納得ができない。
東堂庵のコネクションのすべてを使って、渡英の日程を割り出した。
当日、空港で待っていると、巻ちゃんが現れた。
ぱっと現れて、ドギモを抜くつもりだったけど、連れがいるのに気づいていったんやめた。
巻ちゃんより少し高い。
ギザギザした短髪。
猫背。
細っちい…
そしてそいつと巻ちゃんは、紛れもない恋人つなぎをしていた。
巻ちゃんははにかんで笑っていた。
苦手な作り笑顔ではない、真の笑顔。
俺がほとんど見たことのないそれを、巻ちゃんはあいつに、
荒北靖友に向けていた。
自分のものだとおもっていた。
つれなくすればするほど、彼の気持ちは俺に傾くと思っていた。
そうはならなかった。
ライバルにはなれたけど、恋人にはなれなかった。
二人の瞳には、距離をものともしない信頼があった。
もともと距離のあった二人なのだ。
新しい距離も大して気にはすまい。
俺はこの日のために用意していた箱根神社の御守を尻ポケットにねじ込み、その場を離れた。
携帯を出して3383回目の発信をした。
出ないだろう?
いつものように。
万一出たらありがとうだけ言うさ。
自分のものだとおもっていた。
おもっていたかった。
完
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