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「慎吾クン、改めて当選おめでとうー!」
役員の当選結果が発表され、ホームルームが終わるとクラスメイトの一人が拍手をした。続いて「おめでとう」の言葉が次々に投げかけられ、拍手も大きくなっていく。
「ありがとう」
慎吾はニコリと微笑むと、礼を告げてさっさと教室を出ようとカバンに手を伸ばす。だが、あっという間にぐるりと周りに人が集まり、まるで逃げ道を塞がれたようだった。
「ねぇ慎吾クン、実はね、前から皆で慎吾クンが当選したら何かお祝いしたいねって話をしてたんだけどっ」
学年の中でも上位にいる可愛さを持つと言われている一人がそう口を開く。慎吾にとって、彼女がどれほど可愛いかなんてどうでもよかった。去年も似たようなことがあったような気がする。と慎吾は心の中で大きなため息を吐いた。
どうせ強制的に参加させられるであろう未来が容易く見える。去年は壮馬がいたからまだ良かったものの、今年は壮馬はいない。そんな地獄のような時間を過ごすのかと軽く目眩を覚えた。
「でね、今から皆でご飯食べに行くんだけど、慎吾クンも行こう?」
「…いや、俺は…」
どう断ろうかと、慎吾が口を開いたその時だった。聞き慣れた声が自分の名前を呼ぶ。
慎吾はハッとなって教室の扉の方へと視線を向けると、壮馬が扉に凭れて立っていた。
「慎吾、何やってんだよ。早く飯食いに行こうぜ」
「壮馬…!」
「今日行くって約束だったろ?電車遅れるぞー」
「あ、うん、悪い。すぐに行く」
そんな約束していないのだが、壮馬が自分をここから逃がそうとしてくれているのがすぐに分かった。カバンを手に取り、席を立って壮馬の元へと駆け寄る。
「ごめん、今日壮馬と先に約束してたから行けないわ」
振り返ってこちらを見てくるクラスメイトにそう言うと、壮馬と一緒にその場を後にした。
※
「…えーっと、壮馬?これは一体どういうこと?」
逃げるように学校を後にした慎吾が連れてこられたのは、カラオケルームだった。小さな個室にテーブルとソファが備え付けられており、テーブルを挟んで慎吾の真正面では壮馬が頼んだドリンクをストローで啜って飲んでいた。
困惑する慎吾に壮馬はストローから口を離すと、少しの沈黙の後小さく口を開いた。
「………ト」
「え?」
「…デート、だよっ!で、え、と!」
顔を林檎のように真っ赤にして、やけくそ気味に告げた壮馬の言葉に、慎吾は一瞬理解が出来なかった。目を見開いて目の前のお試し期間中の恋人をただじっと見つめる。
「…なんだよ、あんま見んじゃねぇよ…」
穴が開くほど慎吾に見つめられて気まずくなったのか、壮馬はふいっと視線を逸らして再びストローに口をつけた。
「えっと…壮馬」
「…なに」
「今、俺は…壮馬とデートしてるのか?」
「………そうだよ」
むっ。と小さく唇を尖らせて壮馬は頷く。慎吾は突然の事に頭が追いつかず、くしゃりと前髪をかきあげた。どう反応したらいいか分からず、「あー」だの「うー」だの小さく呻いていると、壮馬は「嫌だった?」と首を傾げる。
「っ!いやな、わけない!」
それは全力で否定する。好きな相手からのデートのお誘い…というかもうしてるのだが、嫌なハズがなかろう。慎吾が思い切り首を横に振れば、壮馬は「そう、か…」とホッとしたように胸を下ろした。
「…でも、どうして急に」
「嫌だったから」
「嫌?」
「…慎吾が、俺の知らないところで女の子と一緒にいるのが、凄く嫌だった…から」
ただでさえ真っ赤な顔を、更に赤くしながら壮馬は答える。
心臓の鼓動が五月蝿い。こんなに五月蝿いのは、壮馬に告白した時以来だろうか。自分の顔にも徐々に熱が集まってきているのが分かる。喉が急速に渇く。言葉を発する声が酷く震えていて、情けないとどこか頭の隅で思うが、取り繕う余裕なんてそれ以上になかった。
「それってさ、壮馬」
「……」
「…期待、していいって、こと?」
壮馬は何も答えない。
「…隣、いいか?」
また問えば、今度は小さく頷いて慎吾が座るスペースを壮馬は空ける。
「慎吾、あのな。今日で、お試しは終わろうと思ってる」
慎吾が隣に移動すると、壮馬はそう切り出した。顔を赤く染めながら、壮馬は真っ直ぐに慎吾を見つめて微笑む。
「色々考えたんだけど、俺、慎吾のことすげぇす…っ!」
壮馬の顔を引き寄せて、自分の唇を壮馬の唇に重ねて無理矢理言葉を途中で塞いだ。もう、我慢の限界だった。
ゆっくりと唇を離せば、壮馬は零れそうなほど瞳を大きく見開かせてこちらをじっと見つめてくる。それに慎吾は小さく笑い、「ごめん」と呟く。
「…バカ慎吾」
「ふふ…ごめん、壮馬。だけど、俺から言わせて欲しい」
そう言って慎吾は触れるだけのキスをすると、まるで桜の蕾が開いたような笑みで壮馬に告げた。
4月下旬。桜の花びらは殆ど散り、青々とした葉が風に揺れている。
もうすぐ、5月が始まる。
※※※
いつも閲覧ありがとうございます。作者のかなえと申します。
漸く二人の本格的なお付き合いが始まりました。ここまでどうしても書きたくて勢いに任せて書き上げました…誤字脱字などありましたらまた追々修正します( ̄▽ ̄;)
次回からは本格的なお付き合いを始めた壮馬と慎吾の、いちゃラブ話を書いていく予定です!慎吾の新たな一面に戸惑いつつもドキドキが止まらない壮馬を書くのが今から楽しみです。エッチな話もそろそろ書きたいぞ!
そして、壮馬の友人である涼にもとある出会いが…!こちらも書くのが今から非常に楽しみです!
文章がめちゃくちゃで色々至らない点もあるかと思いますが、これからもどうぞ宜しくお願いします!
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