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表の顔と、裏の顔【0日目】
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______ヨウコソ、私ノ館ヘ。コレヨリアナタ達ニハ、《人狼ゲーム》ヲシテイタダキマス。尚、拒否権ハアリマセンノデ悪シカラズ。精々、“死ナナイ様ニ”頑張ッテ下サイネ?
突如、無機質なアナウンスが響いて、黒マスクの男性は意識を取り戻す。絨毯が敷かれた床から顔を上げ、まだハッキリとしない視覚で部屋の全体を見回した。
「……ここ、は?しかも人狼って…」
中世のヨーロッパを思わせる椅子が円を描くように並べられた部屋。中央には音源であろうピエロの人形が、偽り臭い笑みを浮かべて項垂れている。
「………ッ、頭が、痛い……?」
後頭部に殴られたような痛みを覚え、男性___スナザメは顔を顰める。見れば、同じように気を失っているであろう数名の人々。自分を含め彼らには共通点があって。
___ゲーム実況者。某動画投稿サイトにて、ゲーム実況の動画を投稿する人間。おそらく、いや、確実に。自分たちは連れ去られたのだろう。スナザメは状況を簡単に理解して___そして、昨晩耳にしたニュースを思い出し、焦りを隠しきれないでいた。
《今日未明___都内____9人の男性が遺体となって____警察は_____尚、彼らの共通点は___》
「まさか、ね………」
自身が立てた仮説の、あまりの現実味に身震いがする。そんなことは絶対にないと信じよう。固く誓ったスナザメは、徐々に意識を取り戻した他のメンバーの会話に加わるべく立ち上がった。
_______________《人狼ゲーム》0日目、開始。
******
「《人狼ゲーム》って………まじかよ」
先ほどのアナウンスで目を覚ました人々の間には、混乱が広がっていた。皆突然連れてこられたとあって、まだ状況の整理が出来ていないらしい。突然の環境変化にパニックを起こす者、笑うピエロに「出せ」と喚く者、固く閉ざされた入口を協力して壊そうとする者……各々が違った行動を起こし始めて、まるで落ち着きがなくなってしまっている。
「……なあ、ちょっと落ち着こーぜ?」
パンパン、と手を叩き注目を集めたのは、青ジャージの青年___確か名前は、キヨといった気がする。デカボイス実況でお馴染みの声はよく通り、人々は行動を静止して彼に目を向けた。
「このまま騒いでたって埒が明かねぇだろ?だから、一旦状況を整理して考えようぜ?お前ら実況者だろ?尚更じゃんか」
次いで、関西訛りが特徴的な鼻声の彼が手を挙げた。
「僕も珍しくキヨくんに賛成や。今は情報共有せな。このまま何もせんでいたら、犯人の思う壷やしね。早く出る為にも、協力せな」
まずは自己紹介しよか、と彼は軽く咳払いをする。
「僕はレトルトや。こっちのキヨくんとは全身ラジオなんかで共演しとる。人狼の経験は浅いんやけど、人を疑うことには多少の自信があるんよ。ここに来る前は…確か、実況を撮ってたなぁ。ま、宜しく頼むで。」
レトルトの言葉に数人が頷いて、「宜しく」と返される。キヨとレトルトの間に割り込んだ眼鏡の彼は、おそらく牛沢くんだろう。仲良さそうに「お前もいたのかよー」と笑いあっていた。
「んじゃ、次はうっしーな。こっから時計回りで自己紹介していこうぜ」
最初に声を上げたキヨが提案して、結局用意してあった椅子に全員が座ることになる。時計回りというと、レトルト、牛沢、キヨ、フジ、ヒラ、コジマ店員、テラゾー、スナザメの順で並んでいるので、自分が自己紹介をするのは最後になるだろう。少しだけ安堵して、スナザメは椅子に深く腰をかけ直した。
「えー……どうも。牛沢です。隣の二人と直々共演してます。人狼は…まあ、それなりに。ここに来る前はコンビニに酒を買いに行ってました。宜しくお願いします」
彼は律儀にもぺこりと頭を下げ、横を見やった。
「俺?えー、キヨです!!二人も言ってたけど、ガレキ牛とか全身組とか…あとそこの不審者みてぇな見た目の二人とは最終兵器俺達っつー名前でよく活動してる。ここに来る前はぁ、確か乃木坂のCD聴いてたな!んで人狼?は…俺も経験あるぜ?」
「「「キヨ(くん)は表情にすぐでるけどね(な)」」」
「ぅるっせ!」
グラサンマスクの青年と、先程までパニックを起こしていた緑の彼、そしてレトルトが揃って突っ込んだことで部屋は和やかな雰囲気になる。続くフジ、ヒラ、コジマ店員も紹介を終え、いよいよスナザメの隣まで順番が回ってきた。
「テラゾーといいます。ここに来る前は、Skype人狼のセッティングを行ってました。人狼はPLは勿論、GMもよくやらせて頂いてるので経験は皆さんより豊富だと思います。暇つぶし程度に楽しませて頂くので宜しくお願いします。」
被ったフードとペストマスクは見覚えがあって。会ったことこそ無かったものの、よくSkype人狼で共演する相手だということが分かった。テラゾーさんが居るなら楽しめそうかも。味方になったら良いんだけど、と目だけで「宜しく」と合図を送って、スナザメは自分の紹介に移った。
「えと、スナザメです。ここに来る前は、動画の編集をしていました。アナログゲームが好きでよくやるので、隣の彼と同じく経験は豊富だと。やるからにはきっちりやりたいので、皆さん本気でお願いします」
マスクの下でにやりと微笑んで、深く腰を折った。
『エー、皆サン紹介ヲ終エタ様デスネェ。デハ、早速《ゲーム》ノ方へ移リタイト思イマス。コノ扉ヲ抜ケタ先ニ皆サンノ名前ガ書カレタ部屋ガアルノデ、其処デ役職発表、《夜ノ準備》ヲ行ッテ下サイ。制限時間ハ三分デス。役職ノ分担ハ、人狼2、占イ1、霊媒師1、狩人1、村人ガ3デス。尚、占イ師ノ初日黒出シ、初日犠牲者、狼ノ身内噛ミ、村人ノ役騙リハ、ソレゾレ無シニサセテ頂キマス。』
「………まじか」
「どうする?お前」
「やるしかないのかー…」
またもや勝手に話を進めるアナウンスに各々の反応を見せる中、一番初めに動いたのはテラゾーとスナザメだった。初日犠牲者、黒出し、村騙りなし、役職は全部で5つねと持っていた小さなノートにメモをして、スナザメはテラゾーに声をかける。
「テラゾーさん、同じサイドだったら宜しくね」
「スナさんが敵だろうと容赦はしないけど。まあ、お互い本気でやろうよ」
子供のように輝かせた視線をお互いに交わし、部屋の前で別れた。楽しくなってきたなと、役職発表を前にスナザメは心を踊らせる。
「スナザメ」と書かれたプレートのつく部屋を開けると、そこにあったのは一つの机。目の前には広場にあるものと同じ、ピエロの人形が座っていた。
『スナザメサンノ役職ハ、《狩人》デス。一晩ニ一人ダケ、狼ノ襲撃カラ誰カヲ護ルコトガ出来マス。今晩ハ誰ヲ護リマスカ?』
机の上に並べられていたのは狩人を思わせる鉄砲と、各々の名前が書かれたカードで。鉄砲本物じゃないよなぁと思いつつも、スナザメはしばし考えた挙句テラゾーのカードを手に取った。これで狼だったら笑うけど、何のヒントもないなら自分の好きな風にやるしかない。
「テラゾーさん、で」
『ワカリマシタ。デハ、広場ヘト戻ッテ下サイ。』
随分とスムーズに受付が終わり、一分も経たぬうちにスナザメは部屋から出される。同じタイミングで入ったテラゾーもそれは同じだったようで、二人顔を合わせてくすりと笑いあった。
「なんかすっごくわくわくするんだけど」
スナザメが言えば、テラゾーもこくりと頷いて肯定する。
「最近中々やれてなかったからな、いい機会だよ。俺はあのピエロに感謝してるかも」
「わかる」
「狐とかいる方が個人的には好きだけどね」
「あー!背徳者とか?でも犠牲が多くなりそう」
「それもそうか、」
なんて経験者ならではの世界を広げているうちに、入室を渋っていたメンバーもそれぞれ役職発表を聞いたようで。流石は実況者、表情に出ている者は一人も居なかった。
『ハイ、役職ハワカリマシタカ?コレヨリ、《夜ノ“アクション”》ニ移リマス。準備ハ宜シイデスカ?』
………いや、待て。何かがおかしい。
夜のアクションは先程終わったはずだ。役職発表がされて、現に今自分は護る相手___テラゾーを選択したではないか。
妙な胸騒ぎがして、スナザメは横にいるテラゾーを見やる。彼も考えていることは同じなようで、発言をするべくピエロに向かって手を挙げた。
「あの、夜のアクションってさっき終わりませんでした?これからやることって…」
『アア、アレデスカ。アンナモノ、タダノ飾リ…言ワバ“チュートリアル”ミタイナモノデスヨ。其レニ、私《夜ノアクション》ナンテ一言モ言ッテマセンヨ?夜ノ“準備”ト言ッタンデス。オ間違えナク。コレカラ始メルノガ____本当ノ、夜ノアクションデス』
瞬間、視界が暗転して。次に目を開けた時には、部屋にある唯一の窓から先程まで無かった筈の大きな満月が顔を覗かせていた。
「嘘…….本当に、夜になったの……?」
話していたテラゾーも居なくなっており、代わりにとでも言うのか背中に重みがあるのが分かった。初めて触る筒状のそれは、ついさっき自分が「本物じゃない」ことを願った凶器で。
「……てことは、それぞれが役職に沿った行動を実際に起こせってこと…?」
移動した覚えもないのに、スナザメはテラゾーの部屋の前で座っていた。つまり、狩人である自分に求められるのはひとつ。
「自分が選択した人間を、人狼から護ること……」
背中に冷や汗が垂れる。万が一自分の守護が失敗すれば、自分諸共狼に殺られてしまうだろう。加えて狩人である自分の生存は、村人陣営にとって大きなものとなる。
「随分……責任の重い役職になっちゃったなぁ…」
初日犠牲者無しということも忘れ、スナザメは大きく息を吸って呼吸を安定させる。背中の鉄砲を取り出し、なれない手つきで構え、周りの状況を見回して、テラゾーの安全を確認した。
「…良かった…ここには来ない、のか。………って、初日犠牲者無しじゃん…っ」
思い出して、へなへなと腰が抜ける。思った以上に緊張が募って、普段の冷静さを欠かれてしまったみたいだ。
「これが…ゲームが終わるまで、続くのか…」
そう思うと少しばかり気が重い。ただの遊びだと思ってわくわくしていたものが、一瞬にして消え去ってしまった気さえした。
(兎にも角にも…狼じゃなかったことが不幸中の幸いだよ)
それだけは良かったと思う、本当に。
人狼に役職通りの行動が許されるのならば、それはつまり本当に人を襲うということで。
絶対無理だった、と内心安堵して、スナザメは静かに夜が開けるのを待った。
*************
なっが!!( ˘ω˘ ) スヤァ…
どうも、リョクです。初投稿から物凄いシリアス。シリアスしか書けない人間なんですすみません( '-' )
trsn(逆でも可)のあまりの少なさに自給自足してしまいました…これ書き終わったら甘々書くよ…うん…
あっ、言い忘れてましたがこの作品はバリバリの死ネタとなっております!!推しが死ぬのは嫌だ、グロいのは無理、という方は続きを読むことをお勧めしませんよ!!
それでもΣd(゜∀゜d)という方は、もう暫くお待ちください……
…………ちなみにこの話、考えてからここまで出来るのに1日しかかかってないんです☆
((勉強しろ))
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