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tears【涙】
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「雨谷君、蓮華先輩のあの異常なやる気は何なんでしょうか…」
文芸誌の見本とカフェのメニュー看板を渡され、部屋から放り出された俺達は困り果てながらトボトボと歩みを進める。文芸誌を両手に抱えるようにしてもつ多田は、少し困ったような表情を浮かべながらそう言った。
「今年は多田が入部したからってのが一番だと思うけど、それにしてもおかしいよな…ヒートアップし過ぎっていうかさ」
学祭への訪問者、そして大学の学生達。
ひっきりなしに前からやってくる人の波に呑まれながらも、俺達は人が一番集まりそうな大広間を目指して歩みを進める。
ちらちらと俺達に向けられる好奇の視線を感じながら「確かに今年は文芸部に沢山の人を呼ぶチャンスかもな」なんてことを思ったりする。
―花宮のこと、どうなった?
喉の辺りで停滞している言葉を出さないようにするのが精一杯な俺は、正直な話、事実を知りたくてしょうがない。
知らない方が幸せだと思いながらも、真実を知ってしまいたくてもどかしい自分がいる。二律背反した感情が心の中で混ざり合って、白なのか黒なのを決めかねている。そんな感じ。
多田と花宮が邂逅してしまったことは、俺が蒔いた種だと言えるだろう。俺があの日酔っ払って酩酊することがなければ、花宮と出会うこともなかっただろうし。
…運命の因果みてえだな。
頭の中に浮かんだ言葉は、あの二人の存在が必然によって結ばれたものなのでは?という勝手な確証だった。他人である俺がぐいぐい首を突っ込んでいい案件でもないだろうけど、興味を消そうとすればする程気持ちは昂る。
大体、双子だって決まった訳でもないのにな……ああ、むしゃくしゃする。
「高校の時も、学祭の時に同じような格好をしたんです」
雑踏に呑まれているせいで聞こえ辛い多田の声は、神経を傾けてやっと聞こえるレベルだった。
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