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tears【涙】
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「戻りましたー」
ガヤガヤと騒がしい声が中から沢山聞こえてくるのを感じ取りながら、俺達は教室の中へ足を踏み入れる。
扉を開くと、部屋中を埋め尽くしているのは人、人、人。昨年の人出とは比較しようがない程の状況に、俺は驚くことしかできない。
……すげえ、超いっぱい人いるじゃん…
予想以上に多くのお客さんを獲得することに成功した俺達は、次から次へとお客さんを文芸部のカフェへと案内した。
そのお客さん全員が多田のことを見つめては、はっとした表情を浮かべたり顔を一瞬にして赤らめたりするものだから「やっぱり多田は人目を引くんだよなあ」なんて改めて考えてしまったりして。
元が良いのにプラスしてギャルソンの格好なんてしていたら、人目を引かない訳がないのだ。
「…はあ、疲れた……」
全身に蔓延した疲労が言葉となって口から零れだした時、教室の奥の方に座る人に目が釘付けになった。
………あ。
あの人はいつぞや見た多田と一緒に歩いてた……よな。
綺麗なものだけ掻き集めて擬人化したかのような、到底この世に存在する人間だとは思えない、桜の花びらのような人間。
「……あ、会長!」
俺がそのあまりの綺麗さに目を奪われていると、その人の隣に座っていた短髪で切れ長の瞳の男性が声を発した。
「探しましたよ…会長。ずっと探してたんですから」
男性はそう言葉を続けると、多田のいる方向へとスタスタ歩みを進める。それに続いて隣に座っていた綺麗な人も立ち上がり、後に続く。
ふわり、と桜が舞うかのようだった。
この二人の周りだけピンク色の桜の花びらがふわりふわりと舞って、甘酸っぱい雰囲気が取り囲んでいた。実際には桜の花びらなんて舞っている訳がないんだけど、見えないエフェクトがキラキラと二人を飾っているような気がしたんだ。
「……はる、の、…と……いちる……」
少しの沈黙の後多田が驚いた表情を浮かべ、口元だけ微かに微笑みながら小さく呟いた。
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