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ああこいつも失恋したのかと。
「大丈夫じゃない……」
男は黙っている。
引かれたか。
「じゃあ、一緒に飲みましょう」
「失恋、したの……?」
口から洩れたのは間抜けな推測だった。
男は瞠目し、笑った。
「そんなところです」
「居酒屋……。でも、酒はもういい……。何か食べたい……」
言いながら、もう酔っぱらっていることに気づく。
「じゃあ、何かつまめるところに」
ゆっくり歩きだす男の後ろを息吹はふらふらとついていく。
くるりと男が振り返り、思わず足が止まった。
男が一歩、歩み寄る。
そのまままた歩き始めて、ああ、隣を誰かが歩くのなんて久しぶりだ。
息吹の押し殺した泣き声と足音がやけに響く。
「ここ、どうですか」
道中無言だった男が指さしたのは息吹もよく知る駅前の居酒屋で、頷くとまた歩き出す。
「適当に注文して……」
「わかりました」
ウーロン茶でなんとなく乾杯し、冷奴を突く。
「佐藤さんの結婚式、いたでしょう?」
誰だっけ。ああ、新婦の名字だ。
「ん……。そっちもいたんだ? 気づかなかった」
「僕も気づきませんでしたよ。でも、あの付近でその恰好っていったら、そうかなって」
「なるほど」
枝豆を剥いて口に放り込む。
ようやく気分が落ち着いてきた。
「あのさあ……俺、ゲイだよ。いいの?」
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