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男は不思議そうに首を傾げた。
「それは、ゴールですか?」
「……どういうこと」
「結婚も子どももゴールじゃないと僕は思います」
ベーコンのチーズ巻きを飲み込むと、男はきっぱりと言う。
「あくまでも選択肢のひとつです」
「……正論だね」
だけど、俺の聞きたいことじゃない。
仁史なら、黙ってどうしたのって聞いてくれる。
俺じゃだめ? って、息吹を覗き込んでくれる。
俺がいいって、言ったじゃん。
俺の、恋人でいたいって、言ってたじゃん……。
「僕は独り身で生きていくこともできます。それも選択肢のひとつ」
自嘲めいた響きに息吹は身構えた。
「なんで」
「なんでというのは」
「別に、女ならいくらでもいるんだからさ、別に、今日の新婦さんに失恋したからってそこまで悲観しなくても」
男は思わずといったように笑った。
「別に、彼女が駄目だったからというわけではありません。ただ、そう……。今はそんな感じがするだけですよ」
「ふうん」
結婚式というのは、出席する側にも今後の人生を考えさせるらしい。
冷えたトマトが弾けた。おいしい。
「あんたさ、訊かれたら何でも話すね」
「すべてが事実とは限りませんよ」
「確かに。でもさ、俺、あんたの言うこと、信じてもいいよ」
「それはあなたの自由です」
「信じるのも信じないのも選択肢のひとつって感じ?」
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