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合コンで立て替えたお金を返したいと由正から毎日連絡が来たけれど、一週間が過ぎても返事をする気にはなれなかった。
ぼーっとしていると、ふと思い出す。
仁史との、水族館デート。
最後の、まともなデート。
――水族館デートの最中に迷子を保護した。
インフォメーションに連れていく道すがら、仁史があまりにも優しく子どもに接するものだから、いつもの惨めさが首を擡げた。
「よかったな、見つかって」
結局、保護者が来るまでふたりで付き添った。
屈託のない笑顔で言う仁史に対して、何も言えなかった。
「どうした? 気分悪い? あ、さては、俺があの子に構ったから嫉妬してるなぁー?」
冗談めかして髪が掻き混ぜられる。
それに鬱陶しそうに俯いてみせれば、こちらを覗き込む柔らかい視線と目が合う。
ああ、好きだ。
「お前、子どもの扱いうまいよな」
「ああ。だから息吹の扱いもうまいぜ!」
「どういう意味」
「俺には甘えていいんだよ!」
両腕を広げる仁史が好き。
どうしようもなく。
「別れよう」
ぽろりと零れた言葉は、いつも息吹の胸を苛んでいたもので、閊えが取れたようにもう止まらない。
「俺、女じゃないから子どもが産めない。俺はお前が子どもと手を繋いで歩いているところ、見たい……。別れて……」
返事がない。
怖い。
恐る恐る顔を上げると、案の定冷たい目をした仁史がいた。
ああ、怒らせた。
こういうときどうすればいいんだっけ。
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