アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3
-
「俺も、息吹の恋人でいい?」
続けられた少し震えたその声にしがみつくと、あいつは嬉しいと言って、泣いた。
その日のデートはなんだか気恥ずかしくて、別れるまでずっと手を繋いだまま無言だった。
それからも仁史は息吹を大切にしてくれたけど、耐えられなくて手を離したのは息吹だ。
別れを告げて一年も経たないうちに結婚式の招待状が届いたときは、本当に嬉しかったのに。
ゲイであることを気にしなかったあの男に会えたことも嬉しかったのに。
着信音が記憶を掻き消した。
由正だ。
通話にすると、向こうで相手が息を呑んだ。
「息吹」
返事なんかしない。
「息吹。急にすみません」
相槌も打たない。
「お金のこともですけど。不快にさせて」
勝手に話せばいい。
「僕、会いたいです。息吹に」
信じられるか。
陰であんなことする奴なんて。
「信じてもらえないかもしれないけど。息吹との縁を大事にしたいです」
泣きそうな声に、息吹も胸が痛んだ。
「お願いです、息吹。もし聞こえているなら明日、会ってください。お願いします。13時に、この前の焼肉屋で」
「バーカ。誰があんたの予定に合わせなきゃいけないの」
「息吹」
こんなゲイなんかが返事しただけで、なんでそんな嬉しそうなの。
息が詰まりそうだ。
「11時ね」
一方的に通話を切る。
息吹だって由正を篩にかけてもいいはずだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
24 / 40