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待ち合わせ場所の前に、由正はいた。
まだ10時半だ。
やっぱり引き返そうとしたとき、視界の隅を過ぎったその腕を掴んでしまった。
「息吹?」
どうしよう、顔を見られない。
いつかまた仁史に会えたら、そのときは笑顔でいられると思っていた。
「あのさあ……俺でもよかったじゃん……。子どもを産めない人なんかと結婚してさあ……。そんなに結婚、したかった……?」
現実はこの様だ。
顔を上げるなり言葉が溢れた。
仁史の冷ややかな視線に気づいて、しまったと思ってももう遅い。
「お前がそんなんだから別れたんだよ。やっぱり別れて正解」
感情の籠らない言葉は息吹の喉を抉る。
「男とか女とかいう前に、お前、人間としてアウトなんだよ。あまりがっかりさせないで」
言い返すことも逃げ出すこともできずに、気づけば仁史は去っていた。惨めだ。
人込みの中で男が泣くのもどうかと思って、唇を噛み締めた。それでも込み上げてくる遣り切れなさは紛れない。
「息吹」
ああもう、最悪。
振り返れば由正が戸惑ったような表情をしていた。
「聞こえてたでしょ……。あの距離ならさ……。どうせ俺、あんたを責めることもできないくらい、ひどい奴だよ……」
「息吹」
「お金、返して。合コン代から焼肉代を引いたものでいいから」
「もしあなたの弱みにつけ込んでいいなら、この前の卑怯な僕を許してくれるなら、このまま食事をしてくれませんか」
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