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桜の季節が終わりかけた5月の終わり
俺は緑の中を一人で歩いていた
「楓、待っていたぞ」
「毎日電話をかけるとかストーカー?」
「生存確認だ」
「おかげで寝不足」
「ごめんな、じゃ寮に案内するよ」
「うん」
「ちなみに、お前の成績はほぼ満点」
「時間があったから名前を書くだけじゃ退屈だった」
「わかっていたけど、さすがだな」
結局俺は、葵の熱意に負けてこの学園に来た
一人でいるよりはマシだと思ったから
寮は気品のある建物でホテルのようだった
「部屋は2階なんだけど一人で大丈夫か?」
「どういう事?」
「本当は二人部屋なんだけどそこにいた生徒が退学してさ」
「むしろ一人の方がいい」
「そうか」
部屋に案内されてネイビーブルーの絨毯の上に荷物を置いた
二人でも広すぎる部屋
俺は窓側のベッドを選びカーテンと窓を開けた
ほのかに漂う花の香り
何の花だろう
「じゃ、次は食堂な」
「うん」
食堂と言う割には豪華な造り
まるでレストラン
「好きな物を食べる事が出来るし、俺と居るから分からない事はその都度聞いてくれ」
「うん」
「部屋にもシャワーがついてるけど一応大浴場もある」
「へぇ」
「まぁ、寮の中はすぐに覚えられるさ」
「うん」
「葵・・・あのさ」
「大丈夫、ここの優劣は金で決まる、嫌な言い方だけどね」
「そう」
「庭の奥に池もあるしボートもある」
「公園みたい」
「それと・・・俺の部屋へ」
「うん」
葵の部屋は1階の角部屋
ルームメイトはいない
「これを楓に」
「ギター・・・」
「欲しがってただろ?俺からの入学祝だ」
「でも」
「いいから受け取れ!寮にも音楽室があって防音だしいつでも練習出来る」
「どうしても俺を巻き込みたいみたいだね」
「俺も巻き込まれたしな」
「クスッ」
ギターを受け取り、久しぶりに弾いてみた
やはり最高
今だけは全てを忘れられる
「腕は落ちてないな」
「みたいだね」
そして俺の学園生活が始まった
バンドのメンバーも見つかり、俺達はデビューした
人気は急上昇し続け、押しも押されぬ人気バンドに上り詰めた
でもね・・・
忘れた日など無い
あの日の出来事だけは覚えている
忘れさせてはくれない
この傷がある限り、俺の心は空っぽのままなんだ
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