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退屈・・・
見事に何もない山の中だし仕方ないけど健康的過ぎて逆に疲れる
仕事は当分オフだしやる事も無い
毎日の礼拝とか性に合わないし懺悔する事が多すぎてきっと神様が怒ってしまうはず
欅の木の下に寝転がり木々の隙間から見える太陽を見つめていた
「楓」
「何?」
誰だっけ
この人は確か・・・
「今日はクラブのお茶会がありますので」
「お茶会?」
「はい」
「面倒臭い」
「君ね、和海様がこうしてお誘いしているのにその態度は何ですか?」
「君ね、俺はそのなんたらクラブに参加した覚えはないんだけどあしからず」
思い出した
生徒会長だこの人
優しそうな瞳の奥に潜んだ暗い闇
なかなか面白い
「ボールをぶつけて怪我をしたそうですね」
「球技は苦手だから」
「そうですか」
首の十字架を撫でながら空を見つめた
「君!会長様が話をされているのに」
こいつ何?
首に手をかけようとした腕を掴み押し倒した
「勝手に触らないで欲しいな」
「お前・・・アクセ類は禁止だ!」
「アクセ?これは俺の肉」
「ふざけるな!」
「おやめなさい、楓申し訳ありませんでした」
「今頃止めるとはなかなかのサドだね」
「ではお待ちしています」
こいつは楽しんでいる
明らかに何かを
「和海」
「貴様、会長様を呼び捨てに・・・」
「いいのです、何ですか?」
「俺はマスコットなのかな?そのクラブの」
「その様な事は決して」
「別にいいけどね・・・和海が可愛がってくれるならそれでも」
「いい加減にしないか!」
「クスッ」
「球技は苦手だと言われましたね」
「だから?」
「テニスでもプレイしませんか?」
「バカなの?」
「教えて差し上げますよ」
「結構」
「たまには運動もいいものですよ・・・そうですね、貴方がワンポイント取ったら何でも望みを叶えましょう、悪くないでしょ?」
「望みなんか無いから」
和海は腰を屈めて俺の耳元で言った
長い髪が頬を撫でる
「口封じと言う望みは?」
「・・・・・・・・・」
こいつは知っている
あの日の事を知っている
「わかった」
「では行きましょう」
別にばらされてもいい
でも、俺にもプライドがある
ほんの少しだけのプライドがね
「用意出来ましたか?」
「多分ね」
制服のままでやるわけね
余裕があると言う事か
あっという間にギャラリーも増えた
やりにくさMAXなんだけど
「ではサーブを」
テニスなんかやった事無い
ラケットを握るのも初めて
サーブ?打てばいいの?
黄色いボールを握りしめ、青い空に投げた
ようは当てればいいんでしょ?
「えっ?」
俺のサーブは打ち返され頬をかすめ、地面に落ちた
血?
腕で頬の血を拭い、微笑んだ
こいつやはり相当なサド
俺を弄ぶつもりだね、テニスと言う健全なスポーツで
「どうぞ」
俺のサーブはことごとく打ち返された
俺の体にね
「どうしました?」
体にボールを受けながら和海の動きを見ていた
大体の動きはわかって来た
「どうぞ」
サーブを打ち、和海が俺の体を狙って打ち返す
でも今度は当たらない
「和海様のボールを打ち返した・・・」
「さすがですね」
ボールを追い、打ち返す
ただそれだけの事なのに点が取れない
「ハァハァ・・・」
「運動不足ですね」
体に当たったボールの痛みが今頃押し寄せる
悔しいけど負けを認めるしかない
テニスコートに流れ落ちる血を見つめ、ラケットを握りしめた
「次はその大切な腕を狙いましょうか」
「えっ?」
思わず目を閉じ腕を庇った瞬間、誰かがサーブを打ち返した
「選手交代です」
「えっ?」
「ワンポイント取ればいいのですね」
「誰?」
「貴方は止血を」
この声どこかで
「驚きましたね、貴方が誰かを助けるとは」
「やり方が気に入らないだけです、貴方は昔からそうだった」
「行きますよ」
嘘でしょ
あんなに小さな子が打ち返せるはずがない
「嘘だろ・・・会長様のボールを打ち返しているぞ」
「信じられない、全国トップの腕なのに」
俺も驚いた
あんな小さな体のどこに打ち返す力があるのだろう
「和海様が汗を」
「あの子は何者?」
そして
黄色いボールは和海の頬をかすめて白線上に落ちた
「ふふっ・・・」
「くだらない事はもうしない方がいいね、和海の癖は知り尽くしている」
「参りましたね、本当に可愛げのない弟です」
弟?
全く似ていないのに弟
「大丈夫ですか?」
「うん」
「今日は鼻血は出ていないようですね」
「あっ、あの時の」
「初めまして、彩流寺 繭と言います・・・貴方は確か」
「楓」
「そう、楓さんでしたね、今日からこの学園に編入しました」
「もしかして保健室の試験って」
「ええ、編入試験でした」
「そうなんだ」
太陽と重なり合って顔が見えない
「でもすごいですね、テニスの経験がないのに打ち返すなんて」
「意地かもね」
「そうですか」
「楓!大丈夫か?」
葵だ
来るのが遅すぎなんだけど
「では僕はこれで」
「ありがとう」
「いえ」
また顔が見えなかった
「楓、お前口から血が」
「テニスボールって意外と痛い」
「部屋まで送るから」
「うん」
部屋に戻り制服を脱ぎ捨てた
「まじかよ、ボールの跡がすごいな」
「だろうね、体で受けてたし」
「球技が苦手なお前がどうしてこんな事をしたんだ」
「俺はばらされてもいいと思ったんだけどね、プライドが邪魔をしただけ」
「えっ?まさか」
「知ってるね、でも言うつもりは無いと思う、なんのメリットもないし」
「確かに」
「お茶会を断ったのが気に入らなかったんだと思う」
「気位が高いからな」
「少し寝る」
「わかった、後でまた」
「うん」
気位が高いね・・・
確かにそんな感じ
俺を傷付けても顔色一つ変えなかった
むしろ楽しんでいるようにも見えた
「ん?」
誰の荷物?
朝はなかったはず
もしかしてルームメイトが?
別にいいや
誰でも同じ
気にする必要も無いし気にもならない
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