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君は何を思う?
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誰もいない図書館
キャンドルの炎が揺れる
「翔様、何故繭を生徒会に?」
「いいだろ?楽しそうだし」
「しかし」
「何か不都合な事でもあるの?」
「知っているでしょ?」
「ここは学園だよ?健全なね」
和海の手をかわし、キャンドルを見つめた
「まだ昔の事を怒っているのですか?」
「そんな子供の頃の思い出なんて忘れたよ」
「ではどうして?」
「気紛れかな・・・」
「翔様、貴方はいつもそうやって誤魔化す、私の気持ちを知りながら」
「和海の気持ちは知っているつもりだけど」
「嘘です」
「和海はさ、俺の何が好きなの?顔?」
「違います」
「じゃ、あれだ!今度は和海で溺れさせたいのかな?」
「やはりまだ根に持っているのですね」
「冗談だよ」
「だったら・・・」
「だったら和海を受け入れろって言いたいの?」
「ええ」
「受け入れてるじゃない、いつも、ここで、こうやって」
「翔様」
和海を抱きしめ、キスをした
舌を絡め、和海の髪をかきあげる
じっくり、時間をかけて理性を失うように
「翔様」
キャンドルの炎を吹き消し、耳元で囁いた
「明日の宿題忘れてた」
「そんなもの」
「フランス語」
「それは私が」
「戻るね、宿題は自分でやらないとね」
「貴方はいつもそう」
「仕方ないだろ?文句があるならフランス語の教師に言えば?」
「・・・・・・・・・・」
「おやすみ」
その気にさせておいて逃げる
いつもの事
忘れないよ、すごく苦しかった事
和海の本を少し濡らしただけで殺されかけた事
俺が好きになる人を次々に奪い取られた気持ち
だから今度は俺が和海をいじめてあげる
部屋に戻り、そのままベッドに潜り込んだ
「雨が降るのかな」
雨が降る前は昔の傷が痛む
和海は忘れているだろうね
俺をプールに突き落としただけじゃない
事故を装って二階から突き落とした
その時の傷がまだ痛むんだよ
繭のビー玉を転がしたのは和海
階段から落ちながら確かに和海を見た
和海は繭を犯人に仕立て上げようとしたんだ
それを知った繭は同じように和海を階段から突き落とした
繭が突然高価な花瓶を和海に投げつけた
その花瓶を受け止めた和海を迷いも無く突き落とした
両手が塞がったまま落ちた和海
それを俺達は黙って見つめていた
でも、退院した和海は飼っていた狂犬に繭を襲わせた
噛みつかれた繭は頭を10針も縫った
それを黙って見ていたのは冬矢
止める事も出来なかった
ただ見ていただけ
止めなければ同罪だって知らないの?
それから繭は頭に触れさせる事を拒んだ
きっとあの時の恐怖が甦るんだろう
「翔」
「繭?」
「うん、辞書を貸して欲しい」
「いいよ、入って」
「うん」
「何の辞書?」
「ラテン語」
「それならその棚にあるから」
「わかった」
辞書を探す繭の頭にそっと手を近付けた
「触るな!」
「ごめんね、まだ怖い?」
「うん」
「そっか、ごめん」
繭を襲った犬は次の日死んでいた
毒を食べさせられたと言っていた
でも俺達は知っている
だって俺が殺したのだから
「繭、遺言書はどうなった?」
「僕が18になるまで隠してある」
「その方がいいね」
和海は大きな間違いに気付いていない
和海と冬矢と繭は本宅で生活していた
最初に聞かされた話では繭は愛人の子供だと言う事だった
それが気に入らない和海は繭に辛くあたった
だけどそれがまず間違いだった
本宅の本当の息子は繭だと言う事
和海達が愛人の子供だと言う事
その話は父親と繭と俺しか知らない話
そして財産は全て繭にと書かれた遺言書もある事
スタートは同じラインから始まった
でも、和海はあまりにもずる賢く、冬矢は優しいだけで何も出来ない
黙って耐えていた繭を父親は跡継ぎに決めたんだと思う
それに本妻の子供だしね
和海が遺言書の事実を知ったら必死に探して破棄してしまうに違いない
だから繭は18になるまでこの学園に来て和海を見張る事にしたんだ
傍にいれば行動も読める
和海は全て相続出来ると思っているけどそうじゃない
哀れな和海
本当に滑稽だ
繭が別宅へ移ったのも和海に殺されると思っていたから
和海はそう言う奴だ
財産を全て自分のものにしたいが為に殺そうとするんだからね
もっと滑稽な事があったっけ
和海は別宅で生活していた繭の母親を殺した
でもそれは自分の母親を殺したと言う事
繭の母親は既にこの世にはいなかった
病気がちだったしほとんど入院生活だった
従弟の俺には関係ないけど、繭にはいろいろと助けてもらった恩がある
16歳の時、久しぶりに本宅へ遊びに行った時、和海に薬を盛られて犯されそうになった
でも繭はそれを知っていた、すごく怯えていた俺を見つめキャンドルに炎を灯した
そしてキャンドルを床に落とし屋敷に火をつけた
朦朧とする俺を抱えて助けてくれたのは和海ではない
繭だった
火事は大したことは無かったけど炎の中で見た和海は悪魔のようだった
繭は本宅を出て身を護る術を身につけていた
頭脳と体力を持ち合わせた繭
あの時の火事で俺達は背中に同じような火傷を負った
それはまるで羽のようで二人じゃなければ飛べないような羽だったんだ
「あった」
「うん」
「借りてもいい?」
「いいよ、ところでさ」
「楓の事?」
「うん、仲良くやれそうか?」
「うん」
「ならいいんだ」
「僕達と楓は似ている」
「似ている?」
「心に傷を持っている」
「そっか」
「翔」
「ん?」
「和海の匂いがする」
「ああ、少し遊んだだけ」
「和海の匂いは吐き気がする」
「ごめん」
「でも翔の匂いは好き」
「お前も同じ香りだろ?」
「いつからだろうね」
「火事の時からかな」
「うん、そうかもね」
火事の時、俺と繭は火傷を負いながら木蓮の木の下で燃え盛る屋敷を見つめていた
その後からだったな
俺達から木蓮の香りがするようになったのは
「あのさ、繭」
「何?」
「和海が別宅へ行く事を知っていたのか?」
「母親が嬉しそうに花を活けていた、和海が初めて遊びに来ると言って」
「そっか」
和海が本当の母親に会いに行ったのはその時が最初で最後だった
「和海が持って来たケーキを和海が取り分けてテーブルの上に置いた、僕はわざとフォークを和海の足元に落とした」
「その隙に母親のケーキと取り換えたわけね」
「あの時の和海は笑顔で優しかったからすぐに気付いた」
「だろうね」
「ケーキを食べた母親はすぐに泡を吹いて倒れた、和海は僕を見て笑っていた」
「だから和海に言ったんだ、どうせなら二人分の毒を盛ればしくじらなかったのにねって」
「今でも覚えている、和海が言った言葉・・・自分の母親が死んでも悲しまない獣だって」
「まぁ、実際は和海の母親だしな・・・殺す方が獣だろ」
「僕は心底嬉しかった、何も知らない和海が哀れで」
「死因も調べられず、何故か自殺で片付けられたってのが和海らしいけどね」
「あの人には愛情は無い、所詮悪魔の母親」
「だな」
「じゃ、戻るね」
「ああ、おやすみ」
「おやすみ」
金がそんなに大切?
命よりも?
あり得ないね
俺には理解できない
和海のどこまでも欲深い心は理解出来そうに無い
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