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「やるね~」
「話を聞いたから」
「だからわざと壊したのか?あの日の夜」
「思い出に縛られているギターなんかいらない」
「そうだけどさ、思い出って大切だと思うぞ?どんな思い出かは知らないけど」
「楓の恋人からプレゼントされたギター」
「知ってたのか?」
「葵と話していたから」
「それなのに壊したのか?」
「どうして楓は恋人の話をしないの?どうして楓はいつも辛そうな顔で僕を見るの?」
「繭」
「ギターを弾いている時もそう、空っぽの瞳をしている」
「あのさ、どうしてって言うけどもう調べたんだろ?」
「うん」
「それで壊したんだな」
「葵からもらったギターは壊してない、これを見て」
一枚の写真を翔の目の前に差し出した
「繭・・・じゃないな」
「僕にそっくりでしょ」
「似てるね」
「彼が楓の恋人」
「マジか」
「もういない」
「えっ?」
「ある事件があって二人は自殺を図った、楓は死ななかったけど彼は死んだ」
「それって俺が聞いてもいい事なのか?」
「ダメ、本当はダメ」
「だよな」
「だから楓は見えない距離を置いている、僕に優しくするのは自分を責めているから」
「うん」
「ギターを壊した時もそうだった、あの時の楓の顔は忘れない」
「お前はさ、楓をどうしたいんだ?」
「わからないけど腹が立つ」
「それって助けたいって事だろ?」
「・・・・・・・・」
「じゃ、どうして助けたいんだ?理由ぐらいあるだろ?」
「心がもやもやするから」
「成程ね、ようするに好きなんだな」
「好き・・・」
「そう、楓が好きなんだよ・・・だってそうだろ?お前が手を握る相手は今まで俺だけだった」
「うん」
「でもさ、楓の気持ちはまだこの写真の彼のものだ」
「わかってる」
「死んだ人間は強敵だぞ?心を掴んでいるからな」
「わかってる」
「ならいいよ、俺は応援する」
「翔も好き」
「その好きは恋愛の好きじゃないだろ?」
「わからない」
「お前は賢いから大丈夫だと思うけど、これ以上楓の事を調べるのはやめた方がいい」
「もうしない」
「うん」
翔は頭を撫でようとした手を肩に置いて微笑んだ
僕だって好きで調べたわけじゃない
あの時の楓の表情が余りにも悲しそうで気になったから
どんな恋人なのかは知らないけど、どうして悲しそうな目をしていたのかが知りたかった
調べるのは簡単だった
葵も共犯者だった
楓は5人殺しているのも知った
それを知った時、僕は何を思ったんだろう
怖くは無い
ただ、とても深い悲しみの底で泣いている楓の姿が頭をよぎった
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