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「楓、今日は生徒会」
「そうだね」
「生徒会」
「うん、知ってる」
「生徒会」
「はぁ・・・」
今日は行くしかなさそうだ
さっきから同じ会話の繰り返し
ここにはオウムがいるらしい
「わかった」
「行く」
「行こう」
気が重いけど仕方が無い
繭にはバスケの借りもあるしね
手を繋ぎ生徒会室に向かう途中、中庭の鳩に目をやった
どうして白い鳩なんだろう
もしかして飼われているのかな?
「どうしたの?」
「鳩は普通の鳩がいいなって」
「普通の鳩」
「自然でしょ?」
「うん」
「何だか入り口から異次元みたいなんだけど」
「会長が異星人だから仕方が無い」
「確かに」
大きな扉を開けて中へ足を進めた
想像通りの豪華な造り
校舎とは全く別物かも知れないね
「待ってたよ、楓」
「繭がオウムになってたから」
「そっか、今日はお茶会だから適当に座ってて」
お茶会
確かに白いテーブルクロスのかかったテーブルには花とカップが置かれていた
「楓はここ」
「うん、でも」
「楓は上座でいい」
「和海との距離が嫌だけどね」
「下座はダメ、楓は上座・・・この席のカップだけ和海のお気に入り」
「わかった」
俺はそう言うのどうでもいいんだけど、仕方が無い
「楓、一応言っておくけどそのカップはすごーく高価な一点物だから」
「そんな感じだね」
「繭に気を付けろよ」
「わかった」
カップの値段とかわからないけど確かに高そうな感じ
椅子に腰かけて大きな窓を見つめた
みんな和海待ちなのかな?
「目立ちたい奴は遅れて来る」
「面倒臭い奴だね、合コンでもあるまいし」
「楓は合コンに行った事があるの?」
「俺は無いかな、打ち上げが多いし」
「打ち上げ」
「ライブの後にやるんだよ、そこに女の子達も来るから」
「面白いの?」
「他のバンドのメンバーと話すのは楽しいかな」
「女性との会話は?」
「好きじゃない、全面的に女をアピールされたら逆に引くしね」
「うん」
そして和海と冬矢がやって来た
「お待たせしました、今回は珍しい方もいらっしゃいますね」
いちいち勘に障る奴
「では今日はお茶をたしなみながら音楽会のバイオリニストを決定したいと思います」
まだ決まっていなかったんだ
どうせ最終的には和海の判断なのに
そして三人のバイオリニストがやって来た
わざわざ招待したのかな
静かにバイオリンの音色が流れる
時折聞こえるのはカップの音
「こんな山奥の学園にわざわざ来るんだね」
「学園の音楽祭に出ると言う事はこれからの音楽人生が成功すると言う事」
「へぇ」
「全面的に和海がバックアップをするから」
「嫌な成功だね」
「だからみんな必死」
「みたいだね」
高校生がお茶を優雅に飲んでいる前で演奏か
プライドよりも成功が欲しいわけね
「楓、これ食べて」
「何?」
「マロングラッセ」
「うん」
マロングラッセね
初めて食べるけど栗だね
甘い栗を煮たやつとしか思えない
「楓、ここいい?」
「どうぞ」
翔が隣に腰かけた
「この演奏どう思う?」
「いまいち」
「だよな、心が無い演奏だ」
「そうだね、上手に弾こうと言う気持ちが前に出過ぎかな」
「その通り」
翔はピンクの角砂糖を口に入れ紅茶を飲んだ
「紅茶の美味しさが俺にはわからないな」
「俺も」
最初の演奏が終わり、次の演奏が始まった
「楓、お茶のおかわりは?」
「うん」
「繭は?」
「僕がやる」
「わかった、じゃよろしく」
繭にお茶を注いでもらい、一口飲んだ
「今度の演奏はどう?」
「上手いけど心には響かないかな」
「同感」
翔は菫の砂糖菓子を指で摘んで口の中に入れた
綺麗なお菓子だけど花だよね
「繭は食べないの?」
「僕は好きじゃない」
「繭は小さなお菓子は嫌いなんだよ、それに食べ飽きてるしね」
「そう」
庶民のお菓子なら知ってるけど・・・
「最後だね」
「うん」
最後の人は衣装も何だか他の二人より安っぽく見えた
だからみんな会話をしだして聴こうともしない
こいつらはサルなの?
「楓、どう思う?」
「上手いね、あのバイオリンでここまで表現出来るのはすごいと思うしいい腕を持ってる」
「確かにあのバイオリンは音楽室に置いてあるような安物だけど音色が心地いい」
翔はタルトを食べながら紅茶の中に角砂糖を5個入れた
もしかして甘党?
「終わったな、選ばれるのは最初の奴だ」
「どうして?」
「和海のお気に入りだから」
「時間を返して欲しいね」
「じゃ、遊んでみる?」
「面白そう」
「俺は最後の切り札に使えばいい」
「そうする」
繭は黙ってクランベリーのケーキを食べていた
赤いジャムが何となく毒々しい
「では投票で決めたいと思います」
投票ね
一番確実に和海の思い通りに出来るわけね
俺は白紙で出して和海を見た
「貴方が参加してくれたおかげでみなさん嬉しそうですね」
「それはよかった」
そして開票が終わり、翔の言った通りの奴が選ばれた
「では、今年のバイオリニストは・・・」
「聞きたい事があるんだけど」
「何でしょう」
「その投票用紙は本当にみんなが今書いたものなのかな?」
「何を突然、当たり前です」
「じゃ、投票用紙を見せてよ」
「わかりました」
テーブルの上に置かれた投票用紙を確認して笑った
「何が可笑しいのですか?」
「おかしいでしょ?だって俺は白紙で出したのにその用紙が無いしね」
「白紙の用紙は省きました」
「和海」
「今度は繭ですか」
「僕は名前を記入しました」
「それが何か?」
「僕の投票用紙はジャムを落としたから汚れているはず」
「・・・・・・・・・」
「説明して欲しいですね、それとも僕の投票用紙も省いたのですか?」
「俺の意見を言わせてもらうと、三番の彼の演奏が一番良かったと思う」
「三番?安物のバイオリンでですか?」
「演奏は楽器で決まるものではない、大切なのは心」
「投票ではなく挙手で決めて欲しいですね」
「・・・・わかりました、では」
そして挙手に全てがゆだねられた
「人気者は卑怯ですね」
「俺は感じた事を言ったまで」
和海が選んだ一番と俺が選んだ三番が同じ数
「へぇ、同じなんだ・・・面白いね」
「翔様」
「じゃ、俺が選んだ方が決まりと言う事だね」
「はい」
「俺は和海とは従弟同士だし昔から知っている」
「では翔様は」
「うん、昔から知っているから絶対和海には入れない・・・と言うのもあるけど俺も三番の演奏が気に入ったから」
「・・・・・・・・・・」
「わかりました、では今年のゲストは彼にお願いします」
「これが平等と言う事だね」
「衣装やバイオリンの値段で才能を決めるのはおかしいでしょ?」
「翔様」
「和海が一番の彼にいくら賄賂をもらったかは聞かないでおくよ」
「・・・・・・・・・」
冷静に俺達を見つめる和海
それをあざ笑うかのような翔と繭
「新しいお茶をもらおう」
「うん、僕が」
「サンキュー」
「熱いから気を付けて」
「わかった」
淹れたてのお茶の入ったカップを持った手が滑り、熱い紅茶が翔の腕にかかった
「翔、大丈夫?」
「あつっ・・・」
「冷やさないと」
翔の腕を持ち、シャツをめくり上げようとした時、和海に肩を掴まれた
明らかに俺に敵意を向けた力は体をよろけさした
その体を繭が片手で支え、和海にカップを投げつけた
「相変わらずの性格ですね、そんなに大切ならば鎖でもつければいい・・・無理だと思いますけど」」
「貴方も相変わらず高価なものを壊す癖は直らないようですね」
「そうですね、癖は直りそうにありません」
繭・・・
カップを全て割るつもり?
テーブルクロスごと引っ張るなんて、わざとにしか思えない
「だからそのカップは高価だと言ったのに・・・」
「翔様、保健室へ」
「俺、楓と行くから」
「いけません」
「うるさいよ?命令しないでくれるかな」
「・・・・・・・・・・」
和海の手を振り払い、保健室に向かった
「翔、大丈夫?」
「笑いをこらえるのが・・・あははっ」
「クスッ」
「えっ?」
「繭がさ、カップを割りたいって言うから芝居をね」
「芝居?」
「あのお茶は熱くないし、火傷もしてないよ」
「一つ言ってもいい?」
「何?」
俺は心配したのに騙された
「お前達、クソ面倒臭い!!」
「あははっ、ごめんね」
「和海が集めたカップなんていらない」
「今回のクラッシャー繭の合計金額はおいくら?」
「500万ぐらいじゃないかな、花瓶が100万だから」
「だな!」
この二人は・・・
それだけの為にあんな騒ぎを起こしたと言うの?
もう、ついていけないかも
そして、次の日中庭の白い鳩は普通の鳩になっていた
やる事が本当に・・・繭らしい、それだけだった
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