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目覚めたのはお昼過ぎ
慌てて隣を見ると、ちゃんとイオはいた
「んっ・・・おはよ」
「まだ寝ててもいいぞ」
「うん・・・」
イオの左手首には銀色のブレスが光っていた
「俺さ」
「ん?」
「男同士のセックスは苦痛しかないと思ってた」
「苦痛か・・・」
「いつもそうだった、すごく痛くて気持ち悪くて内臓をえぐられてるみたいで」
「うん」
「金を払った奴らは自分だけ楽しめればそれでいい、だから無理矢理」
「あのさ、イオ」
「うん」
「もうやめよう、その話」
「ごめん」
「辛い事を思い出す必要は無いだろ?」
「うん、でもね・・・葵はすごく優しかったから、俺初めて感じたし」
「それはそれで恥ずかしいな」
「ずっと傍にいてもいいんだよね?」
「もちろん、そうだ!今日はイオの物を買いに行こう」
「嬉しい」
「じゃ、シャワーを浴びて・・・食事は街でしよう」
「うん」
「ん?」
「あはっ、激しすぎて腰が」
「ごめん」
「大丈夫、一緒にお風呂に入ろう」
「うん」
イオを抱きしめたまま入るお風呂
「これ入れてもいい?」
「いいよ」
ピンクの粉を浴槽に入れて水しぶきを立てた
あっという間に泡だらけ
「初めて入ったけど泡が邪魔だね」
「今更かよ」
そのまま泡で遊んで楽しい時間を過ごした
思えばそれが一番楽しい時間だったような気がする
街へ戻り、いろいろな雑貨を買った
「ねね、これ可愛い」
「パジャマか、それも買おう」
「お揃いで」
「えっ」
「可愛いし」
「だな」
熊のパジャマか・・・
可愛いけど恥ずかしい
そして何もなかった部屋が明るくなった
二人で座るソファーも買った
テーブルも明るい色にした
キッチンにはいろいろな道具が置かれた
これが家と言う物なのかなと思えた
俺とイオは毎晩同じベッドで眠り、いつも隣にイオがいた
それが当たり前だと思えるようになっていた
「葵、報告!」
「どした?」
「バイトが見つかったよ」
「バイト?」
「書店のバイト」
「お前が?」
「うん、いいよね?」
「やりたいなら好きにすればいい・・・でも帰りは?」
「シフトによるけど10時には帰れるし俺は昼のシフトにしてもらうつもり」
「そうか」
「葵のご飯を作らないとね」
「俺はいいよ」
「ダメ!」
イオは意外と料理上手だった
おかげで毎日栄養のあるものを食べさせられて体調もいい
「楓はどうだった?」
「まだ目覚めない」
「そう、千裕の葬儀は?」
「誰も行かなかったよ、行ったところでな」
「うん」
幸せな生活だけど楓の事が心のどこかで引っかかっていた
「今夜は湯豆腐だから」
「楽しみ」
暖かい湯気の向こうに見えるのは冷たい病室
楓が目覚めたらそのまま死んでしまわないかだけが不安だった
イオのバイトは順調だった
もうあの薄暗い空間には行かなくなった
毎日イオの話を聞いて食事をする
休みの日は遊びに行く
そんな日々を送っていた
だけど心から楽しめなかった
理由はひとつ
楓の事が心配だったから
イオがバイトの日は病院へ行った
楓は首に包帯を巻かれたまま呼吸だけしていた
どうしてこんな事になったのか、楓の携帯を見て知った
そして警察から預かった遺書
悪いと思いながら読んだ
「楓・・・」
俺を親友だと言ってくれた楓
恋人とは違う絆があった
多分、俺達しか理解出来ないだろう
「・・・・・・・・・」
「楓!」
楓が意識を取り戻したのはあの事件から一週間後だった
声は出るのか?
俺の事がわかるのか?
心配だらけで何とも言えない表情で楓を見つめた
楓はどうして自分だけが生き残ったのかすらわからない状態だった
最初に聞かれた事は千裕の事
隠しようがない
だから俺は楓の質問に答えた
楓は悲しみの中で苦しんでいた
自分だけが生きている事が許せなかったんだろう
でも、俺の知っている楓は強いと信じていた
だから全てを楓に打ち明けたんだ
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