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次の日、従業員総出で見送りをされた
繭は無視をして玄関に向かった
「繭様、どうぞ」
「楓、乗って」
「うん」
流石としか言いようがない車が止まっていた
傷一つない綺麗な車
「電車がよかった?」
「ううん」
「僕、人混みは苦手」
「そう、俺も」
電車から見える景色とは違う風景を見つめ、高級車には不似合いな服装の繭を見つめた
髪はいつものストレートに戻っていた
高かった太陽が夕陽に変わる頃、見慣れた景色が見えて来た
「ありがとう」
「では失礼いたします」
車を降り、二人で中庭を歩いた
まるで昨日の事が夢のよう
鳩が飛び交う中庭、落ち葉の長い道
銀杏並木、時計塔
「おや、外出とは聞いていましたが・・・」
「消えろ」
「よくお似合いですよ、制服より」
「暇人な園長はウサギ遊びが好きなんだね」
「何が言いたいのでしょうか」
「ウサギ小屋にいたんでしょ?制服に草がついてる」
「ウサギを可愛がって何がいけないのですか?」
「可愛がる?和海が?笑わせる、飽きたら捨てるくせに」
「口の減らない子ですね」
「でも一番かわいがりたいウサギはなついてくれないみたいだね、お気の毒」
「黙りなさい」
「でも、勘違いしているんじゃない?翔はうさぎではなく狐だよ・・・賢い狐」
「くだらない」
翔は狐・・・
「楓、行こう」
「うん、ウサギ小屋って?」
「和海が飼育している下級生」
「生々しいね」
「悪趣味」
「だね」
漸く寮に戻り、ベッドに寝転がった
「こことここと・・・」
「本当に貼るんだ」
「うん」
翔がみたら泣くね
壁中、ステッカーだらけ
何だか疲れたな
少し眠りたい
「楓」
「ん?」
「夕食の時間」
「俺はいらない」
「夕食の時間」
「だから」
「行く」
「一人で行けばいい」
「・・・・・・・・・・」
言い過ぎたかな
「繭?」
「僕も食べない」
「えっ?」
そう来たわけね
行くしかなさそうだね
「わかった、行こう」
「うん」
繭は着ていた服を綺麗にたたみ、私服に着替えた
「可愛かったのにな・・・あの髪型」
つい髪に触れようとして手を叩き落された
「ごめんね」
「今日はハンバーグ」
「繭」
「パンもたくさん」
何事も無かったかのように俺を見つめる繭
「席に座ってて」
「うん」
まだ触られてはくれないらしい
言葉と心は別物って事かな
「お待たせ」
「パン」
「持って来たよ」
「いただきます」
「どうぞ」
繭がナイフを握りしめた
「知っていますか、どうして繭がパンしか食べないのか」
「消えろ」
「知らないな」
「昔、ライスの中にウジ虫が入っていましてね」
「食事中なんだけど」
「これはすみませんでした、あの時の繭は本当に・・・」
「黙れ」
やっぱりね
もうフォークとかナイフは置かない方がいいんじゃないのかな?
かわす和海もすごいけど、本気で刺そうとしている繭もすごい
「死ねば?」
「ではこれで」
「繭、そんなに強く握りしめたら怪我をするよ」
「・・・・・・・・」
握りしめていたナイフをそっと取り、パンを握らせた
「焼きたてみたい」
「うん」
和海の言った事は本当だろうか?
確かに繭がご飯を食べているのを見た事が無い
と言うか、和海もなかなかのゲス野郎だね
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