アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-
明日からまた学園生活がはじまる
別にどうって事はないけどね
繭は疲れていたのか夕食の後、すぐに眠ってしまった
頭脳は大人だけどやはり体は子供なのでは?
俺は眠れなくて噴水まで散歩をした
落ち葉を踏むたびに乾いた音が響く
夜の噴水は静か
水面に月が揺れていた
「眠れないの?」
「驚いた、こんな所で何を?」
「それはお互い様でしょ?」
翔が隣に腰かけ、揺れている水面に落ち葉をそっと落とした
「翔も眠れないの?」
「俺は今戻って来たから」
「そうなんだ」
「噴水に人影が見えて幽霊かと思った」
「幽霊かも知れないのに近付いたの?」
「怖いもの見たさってやつ」
「そう」
「繭は寝てるの?」
「うん、疲れたみたい」
「あいつ昔から寝つきだけはよかったんだよね、人によるけど」
「人による?」
「夏休みに遊びに行くと、繭の部屋で一緒に寝ていたんだけど・・・」
「うん」
「俺が隣にいる時はすぐに眠ってたかな」
「仲が良かったんだね」
「そうだね、でも・・・一人の時は野生動物みたいにわずかな物音でも目を覚ましてた」
「夏休みでも一人で寝る時が?」
「あれだよ!貴族様ってのはお昼寝と言うものがあってさ」
「お昼寝」
「俺が熱を出した時、別々の部屋で過ごしていたんだけど繭が心配になって、部屋に行ってちゃんと眠っているか確認をしに行った時の話」
「うん」
「ドアを握りしめただけで気付かれて、声をかけてドアを開けると目の前に立っていて驚いた事があった」
「眠っていなかったんじゃない?」
「繭は目を閉じていても起きている時があるんだ」
「そう」
「そういう時は要注意」
「どういう意味?」
「そのうちわかるさ」
「幽霊より怖いんだけど」
「楓は大丈夫、繭のお気に入りだから」
「お気に入りね」
「ごめん、言い方が気に障ったのなら謝る」
「いいよ」
「繭ってさ、言葉を繰り返すでしょ?」
「確かに」
「一度目は尋ねる時で、二度目は確認の為なんだよ」
「そうだったの」
「その確認の返事で繭の言葉も変わるんだ」
「そう言えばそうかも」
少し冷たい風に吹かれ、季節の移り変わりを知った
「楓はさ」
「うん」
「繭の事どう思っているのかな」
「どうって?」
「友達とか、弟とか・・・恋人とか」
「可愛いとは思うよ、でも今はまだ何も考えられないかな」
「そっか」
羽織っていた上着を翔の肩にかけて月を見つめた
「ありがとう」
「俺は、もう恋愛とか出来ないと思う」
「理由はあるの?」
「・・・・・・・・・・」
「わかった、聞かない」
「ごめんね」
「誰にでも心の奥にしまっておきたい事はあるからさ」
翔にもあるのだろうか
心の奥にしまい込んでしまいたい事が
「そう言えば、繭が言ってたんだけど」
「うん」
「この学園にウサギ小屋なんてあったかな?」
「ああ・・・たぶんあれの事かな、見える?右の奥に建物があるでしょ?」
「うん」
「あれは会長専用の建物で、夜な夜な可愛くて従順なうさぎを可愛がっているとか」
「確かに悪趣味」
「まぁ、あそこへ行ける生徒は限らているし行きたい生徒の方が多いから」
「想像もしたくないね」
「そして飽きると追い出し新しいウサギを飼いならす」
「ちなみに翔は狐だって」
「俺?俺は可愛い小鳥でしょ?・・・・・・なーんてね」
少しおどけて見せた後、少し冷たい表情で微笑んだ
「狐のイメージってよくわからないけど、ずる賢いイメージしか浮かばない」
「そっちの狐かぁ~」
「そっちじゃない方の狐は?」
「ごんぎつね」
「ごんぎつね・・・」
「ホント、ここは動物園だね」
「そうだね、自然豊かで管理もされている」
「餌も豊富だしね」
「もう一つ聞いてもいい?」
「どうぞ、俺が答えられる事なら」
「今日夕食の時、和海が言っていたんだけど」
「またテーブルクロスが無駄になったの?」
「今日は大丈夫、でね・・・どうして繭はご飯を食べないのかなって」
「和海は何て?」
「ウジ虫が何とかって」
翔は空を見上げ、少し考えた後話をしだした
「夏休みのある日の事でした、小さな少年は誰も行かない屋根裏部屋へ迷い込み何度も助けを呼びました・・・叫んでも誰も来ません、お腹も空いて不安で仕方がありません、屋根裏部屋へ迷い込ませたのはうさぎが大好きな少年でした」
「・・・・・・・・・・」
「屋根裏部屋のドアが開かれたのは2日後、でも少年は出してはもらえずそこに水とご飯が置かれていました・・・空腹だった少年はそのご飯を口の中に入れ異変に気付きました」
「うん」
「その日は満月で綺麗な月明りでした、その月明りに照らされたのはウジ虫だらけのご飯、少年はその場で何度も吐き、それ以来ご飯が食べられなくなりましたとさ」
「繭はいつ見つかったの?」
「俺は屋敷を離れていると聞かされていたんだけど、和海が夜中に嬉しそうにお皿を持って廊下を歩いていてさ」
「うん」
「明らかに和海はそんな食べ方をしないし、犬もいない、そっと後をつけたら屋根裏部屋だった」
「翔が繭を?」
「和海が部屋に戻ったのを確認した後、執事に屋根裏を見たいと言って開けてもらった、そこには吐きながら泣いている繭がいた」
「ひどいね」
「繭は執事に気付くと、涙を拭い戻れと言った・・・泣き顔を見せたくなかったんだと思う」
「うん」
「でもね、その後俺の前で泣いたんだ・・・悔しくてね」
「そうだったんだ」
「それから繭はパンしか食べなくなったし和海の誘いには決して乗らなくなった」
「もし翔が見つけなかったら?」
「和海の事だから、そのまま放置して死ぬのを待つんじゃない?」
「・・・・・・・・・・・」
「だから繭は和海に対して異常な程攻撃性を見せるようになったんだよ」
「そうだったんだ」
そして強い風が翔の髪を揺らした
きっとその話は本当なんだと思った
「さて、そろそろ戻ろうよ」
「うん」
「繭には言わない方がいいよ、今聞いた話は」
「わかった」
俺はごんぎつねの話は知らない
風に乗って香るあの柔らかな匂い
翔もいろいろと隠し事がありそう
でもそれを知ったところでって感じだね
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
31 / 169