アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-
カラスの鳴き声で目が覚めた
カラスって都会で生活しているわけじゃないんだね
昨夜の話は覚えている
でも、忘れてる約束をした
「楓」
「おはよう」
「おはよう」
「髪が」
「シャワー」
「うん」
繭はベッドから抜け出しシャワーを浴びた
寝ぐせが気になっていたのかも知れない
「早かったね・・・って体が冷たいし唇が紫色」
「水しか出なかった」
「えっ?」
「多分和海の嫌がらせ、何度もやられているから」
「寒かったでしょ、早く髪を拭いて」
「平気」
そう言いながら濡れた髪のまま、部屋を出て行った
気になって後を着いて行くとボイラー室に向かった
「何をしているの?」
「3階のお湯を止めた」
「えっ」
「和海がシャワーを浴びるのは7時、でもこれはほんの気休め程度の仕返し」
「そう」
俺は繭を止めたりはしなかった
三年なんて知り合いはいないし、どうでもいいと思ったから
「もうお湯が出る」
「繭、もう一度入って体を温めて」
「僕はもういい」
「でも」
「戻ろう」
「うん」
ご丁寧にボイラー室のドアを壊して歩き出した
「繭、こんなに朝早く何をしているんだ?」
「翔、おはよう」
「おはよう」
「翔は2階だから大丈夫」
「ん?」
「覚えてる?真冬のお風呂」
「うん、水風呂だった話・・・ああ、そう言う事ね」
どうやら翔も昔経験済みだったらしい
「多分俺のせいかも、ごめんね」
「翔は昨夜、楓と一緒にいたから」
「だな、部屋の前で待たれていてムカついた」
「うん」
それだけでこんな事を?
もう狂気に近いね
「楓、朝食」
「早くない?」
「朝食」
「わかった、行こう」
「うん」
「じゃ、俺は後から行くよ」
「わかった」
翔と別れ、食堂に向かった
まだ誰も生徒は来ていなかった
「誰もいないね」
「今日はベーコンエッグとハーブサラダ、野菜スープとパン」
「席に座ってて」
「うん」
こんなに早朝でも食事は出来ていた
プレートの上にはパンをたくさん乗せて繭の前に置いた
「楓も食べて」
「俺は食欲がないから」
「楓も食べて」
「朝はいらないんだ」
「じゃ、僕も食べない」
「えっ・・・」
ようするに俺が食べなければ繭も食べない法則が出来上がったらしい
「わかった、じゃスープだけね」
「サラダも」
「うん」
全部野菜・・・
でも朝からベーコンは重すぎる
仕方なくスープを飲み、サラダを食べた
これじゃ、何だかうさぎみたいだね
「おっ!いたいた、楓」
「葵、華おはよう」
「おはよう、俺昨日眠れなくて」
「制服、とてもよく似合うよ」
「何だか嬉しくて、朝早く葵にいろいろ案内をね」
「そう」
「繭君、おはよう」
「・・・・・・・・・・」
「繭、華は知ってるよね?」
「うん」
「仲良くして欲しいな」
「おはようございます」
「えっと・・・敬語?」
「嫌われているわけじゃないよ、気にしないで」
「わかった」
「俺達もここいいか?」
「どうぞ」
華はとても嬉しそうに食堂を見渡していた
「イオ、俺が持って来るから」
「俺も行くよ」
「いいから座っていろ」
「わかった」
そんな二人を静かに見ていた繭が華に言った
「愛されているんですね」
「えっ?」
「ここのパンは美味しいですよ」
「うん、楽しみ」
「ギター、お上手でした・・・楓の次に」
「あはは・・・楓には追い付けないから」
「お上手でした」
「ありがとう、ちなみに俺達の事は?」
「5曲目が好きです、黒い雨がふりしきる街で光を探し歩き続ける」
「えっ・・・CD持ってるの?」
「いえ、初めて聴きました」
「もしかして覚えてるの?」
「はい、全て」
「驚いた・・・じゃ、楓の・・・」
「7曲目のギターソロが好きです」
「タイトルは?」
「黒いピエロ」
「ホントにすごいね・・・」
俺も驚いた
たった一度のライブを観ただけで全て覚えているなんてね
「お待たせ!何の話?」
「繭君すごいんだよ、ライブの曲を全て覚えてる」
「マジでか!」
「葵さん」
「俺?」
「3曲目の前奏でミスが」
「うっ・・・バレてるのは楓だけかと思ってた」
「でも、お上手でした」
「そうか?」
「誤魔化し方が」
「おいおい・・・褒めてないよな?」
あっ、和海だ
「葵、華、そのまま動かないでね」
「なんでだ?」
「怪我をするから」
「物騒だな」
そして
「楓さん、おはようございます」
「和海は夜中までうさぎの世話をしていたみたいだね」
繭がナイフを握りしめた
「繭、髪が濡れていますよ」
「和海は臭い、シャワーでも浴びたら?」
「浴びましたよ、2年の部屋で」
「邪魔」
「相変わらず水風呂がお好きなんですね・・・」
どうして和海は毎回繭を怒らせるような事を言うんだろう
「楓さん」
「何ですか、和海さん」
「翔様とのお話は楽しかったですか?」
「ストーカーなんだね」
「翔様を引き止めたのですか?」
「意味が分からない」
「知っていますか?」
「・・・・・・・・・・」
「翔様の腕にはそれはそれは綺麗な傷が・・・」
繭がナイフを突き刺した
「相変わらず凶暴ですね、繭にもあるでしょ?大きな傷が」
「死ねばいい」
「では、これで・・・華さん、入学を歓迎します」
繭が投げつけたフォークをかわし、いつもの席に戻った
「おいおい、今のは何だ?」
「びっくりした」
「いつもの事です」
「だね、いつもの事」
「それにしては物騒すぎだろ?」
「出来れば確実に仕留めらてるマグナムでもあればいいのですが」
「えっと・・・」
「あ、あのさ・・・話は変わるんだけどどうして俺は試験を受けずに入学出来たのかな?」
「だよな、俺は翔に偏差値の話をしただけなんだけど」
「葵さん、その話を誰かにしましたか?」
「楓に・・・えっ?」
「俺は何もしていないけど」
「じゃ、どうしてだろう」
「いいではないですか、華さんにはそれだけの実力が認められたと言う事では?」
「そうなのかな」
「それでいいと思うよ、もう入学したんだし考えるのはやめたら?」
「わかった、そうする」
「じゃ、俺達は先に行くよ、学園を案内したいし」
「うん」
「ではまた」
葵達の後ろ姿を見つめ、翔を目で追った
「ありがとう、繭」
「楓のお願いは僕のお願い」
「翔も同じ事を言ってたけど・・・そんな事が出来たの?」
「和海の父親は翔のお願いは必ず受け入れる、入学の許可をもらう事は容易い事」
「そう言う事ね、でも」
「翔はピエロ、操り人形を上手に操る」
「そう、安心した」
「楓」
「うん」
「心配してくれたの?」
「ん?」
「心配してくれたの?」
「そうかもね、翔は友達だから・・・繭の大切な人は俺にも大切だから傷付いて欲しくは無い」
「うん」
繭は俯いて笑った
とても嬉しそうに笑っていたんだ
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
33 / 169