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噴水に腰かけ、必死に耐えていた
千裕を殺した奴はすぐ傍にいるのに
自殺なんかじゃなかった
死ぬつもりなんか無かったんだ
「知ってしまったんだね」
「翔」
「まぁ、いずれ繭が教えるとは思っていたけどね」
「和海を殺してもいいよね?」
「ダメ、楓には殺せない」
「どうして!」
「楓がどんなに強くても今はまだダメ、簡単に殺すのはつまらない」
「翔!」
「今は別の事を考えた方がいい・・・例えば、そのチョーカーはいつ外すのかとかね」
「・・・・・・・・・」
「真実を知った今、それは思い出の品でしょ?楓は罪を償う必要も無いんだよ」
「だけどっ!」
「俺達が抱えている問題はとても根深い、でも楓も同じ痛みを知った」
「絶対に許さない」
「その感情は絶対出してはダメ、気付けれてはいけない・・・わかるよね?」
「無理だよ」
「無理でもやらなければいけない、和海を確実に殺したいのなら」
「・・・・・・・・・」
和海を確実に殺したいのなら・・・
「俺達の出会いは偶然なんかじゃない・・・しいて言うのなら必然」
「必然」
「カッコウは巣に一番大きな敵を落とし損ねた」
「繭の事?」
「モズのはやにえって知ってる?」
「虫とかを枝に刺すってやつ?」
「そう、どうしてそれをするのかは謎らしいけど、ここにいるモズの理由はわかっている」
「和海?」
「そう、モズは食べるわけでもなく獲物を小枝に突き刺す、残酷だと思わない?餌にもなれず殺される」
「・・・・・・・・・」
「繭は弟を失った、楓は恋人を失った、悲しみは同じ重さのはず」
「それは・・・」
それは翔も同じはず、と言いそうになった言葉を飲み込んだ
「最高の舞台を用意するよ、必ずね」
「翔」
「それまでは高校生活を楽しんで、和海は俺がいる限り逃げたりしない」
「・・・・・・・・・」
「ねっ?」
「翔の仕業?」
「何の話?」
「ライブの時、繭を千裕に似せた事」
「かもね」
「氷龍が警察にいたと言うのは何故?」
「あ~、彼は未解決事件が得意でさ、刑事でもないのに呼ばれる事があるんだ」
「そう」
「千裕のビデオは偶然だった、それは本当」
「千裕が呼んだのかな・・・本当の事を知ってもらう為に」
「そうかもね」
「うん」
「大丈夫かな?」
「なんとかね」
「そうだ!どうでもいい事だけど、和海のうさぎは首輪を付けているから要注意ね」
「首輪?」
「高価な首輪だからすぐにわかるよ」
「うん」
「あいつらは和海の命令には従順だから気を付けてね」
「翔にボールをぶつけた奴もうさぎだと繭が言っていた」
「全国レベルのプレーヤー、ホント参るよね」
「でもどうして翔を傷付けるの?」
「和海が見つけて手当をしたかったんじゃない?」
「それだけの為に?」
「そういう奴だから」
「気を付けるよ」
「うん、じゃね」
「また」
ここに来たのも必然だったの?
葵は知っているの?
もうわからない・・・考えたくも無い
「おいおい、またサボりか?」
「葵」
「お前、顔色が悪いぞ」
「葵は知ってる?」
「何を?」
「千裕の過去」
「いや、知らないけど・・・」
「嘘はいい」
「いや、だから・・・」
「何を知っているの?」
「お前も知っている事だよ、俺の知り合いが偶然街で千裕を見かけた時に教えてくれたんだよ、そいつには誰にも言うなと口止めをしたから大丈夫だ」
「千裕は誰かと話を?」
「楓じゃないか?俺の知り合いは千裕と同じ施設で生活をしていたらしい」
「そう」
「俺が知っているのはそれだけだ」
「ごめんね、ありがとう」
「いいけど・・・お前本当に大丈夫か?」
「気候のせいかな・・・温度差がね」
「確かにな、無理するなよ」
「うん」
葵は知らない
でも俺は千裕の過去も知らない
過去を知ったからと言って嫌いになんかならないのに
俺は千裕とどんな会話をしていたのかな
それすら思い出せない
「楓さん?」
「誰?」
「あっ、俺ファンなんです・・・ごめんなさい声なんかかけて」
素直そうな子
大きな瞳が輝いていた
「別にいいけど」
「あっ、これどうぞ!売店で売っていた新しいジュースです」
手に持っていたのはお洒落なカップに入った綺麗な色のドリンクだった
「結構美味しいですよ」
そう言いながら同じ色のドリンクを飲んだ
「誰かの為に買ったんでしょ?」
「いいんです、楓さんとこうして話が出来たんだしどうぞ」
「ありがとう」
「あっ、俺2年の燕羽です」
「そう」
差し出されたカップを受け取りストローに口を付けた瞬間、ボールが飛んで来た
カップが地面に落ちて綺麗な液体が広がった
「ごめんね、せっかくもらったのに」
「いいんです、じゃ俺は行きますね」
悪い事をしたな
でも、どこからボールが飛んで来たんだろう
「片付けてから帰って下さい」
「・・・・・・・・・」
「和海に頼まれましたね?」
「繭?」
燕羽と名乗った生徒は地面に落ちていたカップを拾い上げ、走るように逃げて行った
「繭がボールを?」
「楓」
「うん」
「知らない人からもらってはダメ」
「でも」
「あのドリンクには何かが入っていた」
「どうして?」
「首輪」
「首輪・・・」
そう言えばお洒落なチョーカーだと思っていたけどあれが首輪だったんだ
「どうして飲もうとしたの?」
「えっ」
「どうして飲もうとしたの?」
「ファンだと言われてつい、喉も渇いていたし」
「バカなの?」
「ごめんね」
繭は地面に落ちた液体が残ったフタを拾い、歩き出した
「どこへ?」
無言で噴水の前に立ち、僅かに残っていた液体を落とした
「これが和海の正体」
優雅に泳いでいた金魚が浮かび上がった
「金魚が・・・飲んでいたら俺死んでた?」
「致死量では無いにしても確実に病院送り」
「・・・・・・・・・・・」
「バカ」
「うん、バカだね」
「これから人を判断する時は首輪を見て、絶対信用してはダメ」
「わかった」
「部活の時間」
「あっ・・・」
「行く、今日はマドレーヌとマカロン」
「わかった」
部活に出て作りたてのお菓子を後輩が持って来たけど繭の目が光っていたしもらう事は出来なかった
この部活には首輪の生徒はいなかった
それを知っていてここに決めたのかな
「楓、食べて」
「うん」
繭の手作りはオッケーだね
でも一口食べて固まった
「美味しく出来た?」
「繭、砂糖と塩の違いわかってる?」
「白いのが砂糖」
「塩も白いんだけど」
「・・・・・・・」
繭がマカロンを一口食べて何とも言えない顔をしていた
「塩辛いマカロンは美味しくない」
「だろうね」
当然、マドレーヌも思い切り塩辛かった
「翔にあげる」
「嫌がらせ?」
「翔は和海にあげる、翔が食べてと言えば和海は食べる」
「成程、いい考え」
「うん」
そしてその日の夕食の時間
和海はやたらと水を飲んでいた
食べたんだ・・・あの塩マカロンとマドレーヌを
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