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シャワーの後、風に当たる為に窓を開けた
夜風が気持ちいい季節になって来た
煙草に火と付けようとしてポケットにしまい、中庭に出た
煙草を吸うと繭に怒られるしね
「ピアノ?こんな時間に・・・」
どこから聴こえるんだろう
音をたどり、音楽堂にやって来た
「ここ?」
この曲は・・・
合奏曲だ
そしてこのピアノは
「だよね」
窓の外から中を覗いてため息をついた
「何をしている」
「氷龍、驚かせないで」
「楓か?」
「そうだけど」
「翔に用事か?」
「用事と言うか、落ち込んだと言うか」
そんな会話をしていると窓が開いた
「何してんの?入って」
「うん」
断る理由も無いし、中に入って椅子に腰かけた
「散歩?」
「だね」
「楓がピアノ奏者なんだって?」
「居眠りしていたらそうなってた」
「そっか~」
「翔に勝てる気がしないし、そもそも競うと言うやり方が嫌」
「あのさ、俺だって天才じゃないんだけどな」
「ん?」
「こうやって練習を積み重ねているだけ」
「・・・・・・・・・・」
「楓だってそうでしょ?天才と言われても練習してるはず」
「そうだね」
「それと同じだと思うけどな」
「でもピアノのセンスは翔の方が上」
「実は俺も居眠りしててさ」
「えっ?」
「本当はリコーダーを狙ってたんだけど」
「地味だね」
「一番サボっていてもバレ無さそうだし」
「確かに」
「気付いたら俺の名前の横にピアノと書かれていた」
「お互い居眠りには気を付けないとね」
「だよね~」
そんな話をしながら笑い合った
「思い出した、翔」
「何?」
「燕羽って知ってる」
「ああ、俺のクラスだけど」
「そうなんだ」
「燕羽がどうしたの?」
「燕羽もウサギ?」
「ああ・・・だね」
「そう」
「何かあったの?」
「繭に怒られたかな」
「どうして?」
実はね・・・
・・・・・と今日の出来事を翔に話した
「はぁ、あの金魚高いのに」
「そっちの心配?」
「実は俺にもいまひとつ掴めないんだよね、燕羽って奴の正体がさ」
「どういう意味?」
「首輪はつけてるしウサギ小屋にも行っているみたいだけど、和海が好きとかでは無いようにも思えるし」
「快楽の為?」
「にも思えないんだよね」
「だけど和海の命令で俺を」
「そうなんだけどさ・・・うん、そうなんだけど」
「翔にしてはおかしいね」
「おかしいと言うか、本当にわからないんだよ・・・氷龍はどう思う?」
「燕羽が首輪を付けたのは最近だな」
「それが引っかかるんだよね、今はまだわからないけど」
「見に行けば早いだろ」
「まぁね・・・行ってみるか」
「?」
「ウサギ小屋」
「見たくも無いけどね」
「んじゃ、行くぞ」
翔はピアノをそっと閉めて歩き出した
何も話さないと言う事は気付かれないようにと言う事
そしてあの建物の近くまでやって来た
「えっと、確か裏から見えるところが・・・」
「窓からじゃないんだ」
「すぐばれる、監視カメラがあるだろ?まずはあれをクリアしないとね」
「どうやって?」
「飛ぶんだよ」
「飛ぶって・・・」
「氷龍、お願い」
「ああ」
嘘でしょ?
俺はそんなに身軽じゃない
と言うかスパイの経験も無い
氷龍の手に足をのせてカメラを飛び越えた翔
身軽すぎでしょ
「楓」
「無理かも」
「いいから足を乗せろ」
「・・・・・うん」
「着地に気を付けろ」
「わかっ・・・嘘!」
軽々と飛ばされた
幸い落ち葉がクッションになって怪我はせずに済んだ
「大丈夫?」
「聞いてないんだけど」
「簡単には無理だろ?和海の秘密の部屋なんだしさ」
「確かに」
「こっち、足元に気を付けて」
「うん」
薄暗い闇に中を壁伝いに歩いた
「確か・・・この辺だったような、あっここだ」
翔は壁の隙間を指さした
微かに明かりが漏れている
「覗いてみたら?」
「うん」
そっと隙間から部屋の中を覗いた
悪趣味すぎる
裸の生徒が和海を取り囲んでいる
身に着けているのは首輪だけ
燕羽はどこにいるんだろう
いた
でも床に座ったままぼんやりしてる
ーパキッー
しまった
落ちていた小枝を踏んでしまった
「逃げるか」
「ごめん」
「走るぞ」
「うん」
何こいつら・・・
裸のまま出て来たんだけど
そいつらをかわしながら走ったその先に誰かが立っていた
「何をしているの?」
「燕羽」
「悪趣味だと思わない?覗きなんて」
「飼い主に報告するわけね、早くしたら?」
「・・・・・・・・・・」
「燕羽、そっちにいたか?」
「いないね」
「どこへ隠れたんだ、向こうを捜せ」
「助けてくれたの?」
「今日のお詫び」
「一応ありがとうと言っておくべき?」
「早くしたら?罠に気を付けた方がいいよ」
「罠?」
こんな暗闇で罠なんか見えるわけない
「いっ!」
「翔!」
「あの野郎・・・ぶち殺す!」
翔がキレた
すごく血が出ているのがわかる
だって手がヌルついたから
「今外すから」
「素手では無理だよ」
「・・・・・・・・・・」
「まさかこんなに最高の獲物がかかるとは」
和海がゆっくり近づいて来た
でもこの罠は外れない
無理に動かすと翔の足を更に傷付けてしまう
こういうのを絶体絶命と言うのかもね
「これは面白い、楓は逃げないのですか?」
「逃げないけど」
「成程、面白いですね」
「楓、俺は大丈夫だから逃げろ」
「バカ言わないで、置いて行けるわけないでしょ」
「楓!」
「翔様の傍にいるのは私だけ、薄汚い野良ウサギは必要ありません」
「俺はウサギ程弱くはないつもりだけど」
「おや」
翔を庇いつつ、攻撃を仕掛けた
確かに強いし動きも早い
でもね、きっと俺の方が強い
隙をついて蹴り上げた足が激痛に襲われた
「あのさ、俺は素手なのにずるいよね」
「誰が決めたのですか?」
「くっ!」
刺さったナイフを足で踏みつける和海
こいつはやはり狂ってる
「和海、やめろ!」
「翔様のお願いですか?」
「そうだ」
「ではこの首輪を」
「・・・・・・・・」
「翔、ダメ!」
「いいんだよ、楓はもう傷付かないで」
「それでもダメ!絶対に」
「友情ごっこはおしまい、さぁ・・・」
ダメ
翔にとっては一番の屈辱
俺のせい
俺の・・・・・
「いい加減死ねばいい」
「繭」
「楓を・・・」
「怒っていますね」
「楓を傷付けた・・・お前が傷付けた」
「ふん」
「許さない」
「いいでしょう、相手になりますよ」
「繭」
どちらも譲らない戦い
でも和海はずるい
ナイフを抜かず、翔に寄り添った
「翔」
「氷龍」
「罠を壊していたら遅くなった、行くぞ」
「うん」
「楓もだ」
「でも繭が」
「あいつは大丈夫だ」
「でも」
「いいから行くぞ」
氷龍に担がれて温室にやって来た
「楓を先に」
「わかった」
刺さっていたナイフを抜き、麻酔無しで縫われた
最強に痛かった
「これでいい、さて」
「奥にあるよ」
「ああ」
氷龍は奥に向かい、何かを持って来た
「それは?」
「この罠は下手に外すと危険だからな」
「我慢しろよ」
「うん」
嘘でしょ?
拳銃とか初めて見たんだけど
罠のカギを撃ち、翔の足を外した
「前は無かったのに」
「用心深くなったわけか」
「和海らしいけどね」
翔の手当てが終わり、繭が戻って来た
「繭」
「楓、翔、大丈夫?」
「うん、でもどうして?」
「部屋に誰かがメモを」
「そう」
誰がメモを?
「繭、怪我はしていない?」
「和海の自慢の髪を切って来た」
「えっ・・・」
そう言って銀色の髪を床に落とした
さすが・・・だね
そして次の日、和海の髪は短くなっていた
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