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目が覚めたのは夕方
夕陽が眩しくて目が覚めた
足の包帯を巻きなおしていたのは繭
「繭」
「これ作った」
「これは?」
「カップケーキ」
「甘いやつかな?」
「今日は確かめた」
「そう、じゃいただくよ」
「うん」
「美味しいよ」
「美味しい・・・ホント?」
「うん」
ドライフルーツの入ったカップケーキを食べながら隣を見た
「翔は?」
「氷龍といる」
「そう」
「何か作るって言ってた」
「へぇ」
何だろう
窓辺に光るものが置かれていた
「あれは?」
「翔へのおみやげ」
「誰から?」
「友達」
「友達・・・」
どうして窓辺に?
友達なら入って来ればいいのに
「部屋に戻ろう」
「うん、って・・・」
「歩けない」
「大丈夫」
「歩けない」
「繭」
繭は俺を抱き上げて部屋を出た
力も強いらしい
まさか俺より小さな子にお姫様抱っこをされるとは思わなかった
「食堂行けそう?」
「うん」
「今日は混ぜご飯と西京焼き」
「繭は食べられないね」
「パンがある」
「そう」
だけどそのメニューにパンはどうなのかな
「ここにいて」
「ありがとう」
椅子に腰かけ、和海を見つめた
相変わらずにぎやかな空間が出来ていた
高そうな首輪を自慢げにつけるウサギ達
本当にくだらない
翔と氷龍はいなかった
「お待たせ」
「ありがとう、繭はパンだけ?」
「うん」
「そう」
何だか食べにくいな
「食べて」
「うん・・・」
「食べて」
「わかった」
箸を持ち、山菜の味噌汁を飲んだ
繭はパンにジャムを塗って食べていた
「おっ、いたいた!」
「翔」
「繭、ほら」
「シチュー」
「氷龍が温室で作ってくれた」
「うん」
だからいなかったのか
「俺も和食は苦手だからさ」
「そうなの?」
「魚は苦手」
そう言って正面に座りシチューを食べだした
氷龍は和食が好きみたい
「傷は痛むか?」
「多少はね」
「痛み止めは繭にもらうといい、違法な薬も持っているぞ」
「怖いね」
「飲み物を持って来る」
「繭、俺のも頼む」
「うん」
繭が立ち上がったと同時に何かが飛んで来た
それを片手で掴み、和海に投げ返した
宙を舞うお椀とか有り得ない光景だけどね
「楓、大丈夫?」
「うん、繭は?」
「平気」」
翔は人参をよけながら言った
「うさぎがさ、和海に褒めてもらう為にいろいろとね・・・あとは俺がここにいるからかな」
「やりすぎじゃない?」
「いやいや、避けられるものを投げつけるなんて可愛いものだろ?」
「・・・・・・・・・」
熱い味噌汁を投げつける事が可愛い事?
繭は和海達に近付き椅子の上に立ち見下ろした
「熱い!」
「お返ししただけです、コントロールはまずまずでしたね」
驚いた
繭は誰かに味噌汁を頭からかけていた
和海は無視して食事を続けていた
椅子から飛び降りた繭は笑いながら和海に話しかけた
「似合うね、短い髪も」
「そうですか」
「願掛けをしていたのにまた振り出し」
「黙りなさい」
「その願いは永遠に叶わないのにバカなんだね」
「何か用でも?」
「こんなもの持っていたら呪われそうだからお返しする」
そう言って綺麗な彫刻が施されたナイフをテーブルに突き刺した
周りはざわついていた
でも一人だけ冷静に見つめる奴がいた
「楓と翔はお前に怪我をさせられた、お前のルールは守ってもらう」
「勝手に入り込んだのはあの二人です」
「いたのは学園の敷地内でお前の土地ではないはず」
「確かに」
「守ってもらう」
「そんな昔の事を覚えていたのですか」
「差し出せ、二人分の対価を」
「では私の髪の対価は?」
「怪我ではない、やはりバカだね」
「仕方ありませんね、お好きなうさぎをどうぞ」
「和海様!嫌です」
「助けて下さい、和海様」
「雑魚には興味は無い、その意味わかるよね?」
「そうですね、確かに繭にとってはなんのメリットもありませんしね」
「そう言う事」
「では誰でもどうぞ」
繭は見覚えのある奴を指さした
「成程、わかりました」
そう言ってナイフを抜き取り、燕羽の首輪を切り落とした
「もう自由ですよ、可愛げの無いウサギでしたが」
燕羽を捨てた?
「意外なうさぎを欲しがる理由でもあるのでしょうか」
「次は殺す」
「楽しみにしています」
繭は燕羽を連れて戻って来た
どうして?
「貴方は自由ですよ、何故逃げないのですか?」
「別に逃げる理由も無いし、俺がどこにいようが自由って事じゃない?」
「それは何を聞かれても答えると言う事ですか?」
「気分次第かな、でも首輪を無くした事に対しては恨んでいるけどね」
「とりあえずさ、食べてからにしようよ」
「うん」
燕羽は繭の隣に座り、食事を続けた
彼は一体何者?
「そうそう、サンドイッチサンキューな、美味しかった」
「・・・・・・・・・・」
「紅茶はアッサムの方が好みだけど」
やはり燕羽が?
「燕羽、和海を怒らせて自らウサギになってまで探したいものはみつかった?」
「どうしてそれを?」
「生徒が行方不明になってるよね」
「・・・・・・・・」
「一応副会長だからさ、調べたんだけど・・・続きを聞きたい?」
「それを聞いた俺はどうなるのかな」
「ナイフを持って和海を襲うね」
「・・・・・・・・・・・」
「それでも聞きたい?」
「俺は真実が知りたいだけ」
翔はパンにシチューを絡めて口の中に入れた
「俺の友達がいるんだけどね」
「友達?」
「最初に言っておくけど、行方不明になった生徒は一人では無いんだ」
「どういう事?」
「じゃ、行こうか」
翔は氷龍に抱えられて部屋に向かった
「入って」
俺はベッドの上に降ろされて話を聞いていた
「氷龍、友達のプレゼントを燕羽に見せてあげて」
「ああ」
本棚に置かれた箱を取り、燕羽に渡した
「見覚えがあるものが無ければいいね」
「・・・・・・・・」
「開けて」
その箱を開けると中にはガラクタがたくさん入っていた
小さなものが多かったけど光る物ばかり
「・・・っ!」
「見覚えがあるものがあったんだね」
「これをどこで?」
「友達が持って来たんだ」
「だからその友達って誰?」
燕羽が握りしめていたものはバッジだった
どこにでも売っているような缶バッジだけどオリジナルみたいだね
翔はあのガラスのベルを持ち、窓を開けてベルを鳴らした
「ふざけるな!」
翔の肩には真っ黒なカラスがとまっていた
「こいつはね、前ガラスに当たって怪我をしたんだ・・・手当したら色々な物を毎日持ってきてくれるようになってさ」
カラスって意外と大きい
そのカラスの首元を撫でながら話を続けた
「このバッジは去年の学園祭の時のものだよね、俺のクラスがやっていたから」
「・・・・・・・・・・」
「思い出したんだよね、二人でお揃いのバッジを作りに来て嬉しそうにしていた人をさ」
「どこにいるの?」
「可愛い子だったよね、そう・・・和海が好きそうな」
「教えろよ!」
「和海は素直じゃないうさぎは簡単に殺しちゃうんだ、証拠も残らないやり方でね」
「まさか・・・」
「和海の誘いは絶対、でも一人だけ断った人がいたらしい」
「確かに言っていたんだ、あいつに誘われたけど断ったって、だけど次の日いなくなっていた・・・退学したと聞かされていたけど家には戻っていなかったし、あいつの親もどこかおかしくて・・・それから色々と探したんだ、でもわからなくて俺は自分からあいつに近付こうと決めた」
「証拠も無いのに体を売るんだ」
「証拠を掴む為に売ったんだ」
「まぁいいや・・・それで証拠は掴めたのかな?」
「・・・・・・・・・・」
「燕羽、彼はもう死んだよ」
「・・・・・・嘘だ」
「このバッジはね、生徒会専用の焼却炉からこいつが拾って来たもの」
「でも、死んだと言う確証は」
「氷龍、お願い」
翔は窓の外を見つめ、カラスを撫でていた
「俺が調べた時、5体相当の骨が出て来た」
「焼かれたの?どうして・・・そんな酷い事が出来るの?警察は?殺人でしょ?」
「そう言う奴だからだ、自分の思い通りにならない奴は排除する、否定された事をうち消す為にね・・・警察は所詮犬、飼いならされた犬は獲物を追わない」
「それだけの為に・・・嘘だ」
「燃えカスの中に焼け残った制服があった、かろうじて名前が」
そして翔が静かに言った
「イニシャルはK,M・・・確か燕羽のクラスにもそのイニシャルの人がいたよね」
「御門・・・和樹」
「そう、そのイニシャルの生徒は一人だけ・・・去年の学際の写真を調べたら燕羽とその和樹君がいた、バッジを作ってくれた人にサービスで写真を撮ってたのを覚えてる?」
「覚えている・・・でも今はそんな事はどうでもいい、和樹を捜さないと」
「和樹君は死んだんだ、和海に殺された・・・現実を見て」
「いやだ・・・そんな事・・・信じない」
「じゃ、もう一つ質問」
「・・・・・・・」
「和海に頼まれて楓にジュースを持って行く前に繭に居場所を教えたよね?わざと首輪が目立つようにしていた」
「・・・・・・・・・・・」
「命令は絶対、でもお前には楓に飲ませる事は出来ないと思い考えた末繭に助けを求めた」
「それは」
「だよな、繭」
「うん、うさぎが楓といると書かれたメモが飛んで来た」
「繭が来るまでの時間を見計らい、楓に声をかけた」
「俺はペットじゃない・・・だけど命令を聞かないと和樹を捜せない」
「やって来た繭を確認した後お前は楓にジュースを渡した・・・当然繭に邪魔をされた」
「まさかボールが飛んで来るとは思わなかったけどね」
「ついでに言わせてもらうとお前が中身を薄めたんだよね?和海は本気で楓を殺そうとしたんだ、お前の手でね」
「渡された薬品はすぐにわかった、だけど俺には楓を殺す理由は無い・・・」
「だからその良心の為に本当の事を教えてあげたんだけどね・・・これ以上無駄な時間を過ごすだけ時間の無駄でしょ?」
「・・・・・和樹はどこに?」
「氷龍がちゃんとお墓を作ったよ、見晴らしのいい丘にね」
「和樹・・・和樹・・・俺はっ!」
「ようこそ、復讐クラブへ」
「ああっーーーー!和樹ーーっ!」
泣き崩れる燕羽を見つめ、かける言葉を失った
それほど燕羽は悲しみの中でもがき苦しんでいたから
「お前一人では和海は殺せない、無駄死にしたいのなら止めないけどそれで後悔しない?」
「お前達は和海を殺せるの?」
「もちろんそのつもりだけど」
「いつ?」
「それは内緒」
「どうして?」
「大丈夫、必ず殺すから・・・俺達は同じ悲しみと苦しみを背負っている」
「えっ?」
確かにそう
みんな傷付いている人間
「クラブを抜けたお前は狙われる、だから呼んだんだ」
「・・・・・・・・・・・」
「見たいだろ?和海が死ぬのを」
「見たいよ、当たり前だろ!」
「じゃ、答えは一つ」
「わかった」
こうして燕羽が仲間になった
まさかそんな理由があったなんて驚いた
でも、もっと驚いたのは翔の観察力
たった一個のバッジからここまで辿り着けるなんてね
「次の日曜、会いに行けばいい・・・和樹君に」
「・・・・・・・・」
「氷龍と行けば安全だよ」
「いいの?」
「もちろん」
「和樹はガーベラが好きだったんだ・・・でも今の時期は咲いていないかな」
「ガーベラね、好きなだけどうぞ」
「えっ?」
「温室で咲いているよ」
「ありがとう」
こうして次の休みに燕羽と氷龍はお墓参りをする為に朝早く学園を出た
俺と翔の番犬は繭
心強いけどそろそろ抱っこはやめて欲しいかな
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