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結局眠れないまま夜を明かした
太陽を見て眠くなるとはね
これじゃ昔と同じだね
繭が起きた
いつもと同じ時間、正確な体内時計
「おはよう」
「おはようございます」
「繭?」
繭は見向きもせず、シャワーを浴びて制服に着替えた
そしてそのまま部屋を出て行ってしまった
こういう事なの?
冗談かと思っていたのに
わけのわからない感情に包まれた
千裕で傷付いて、今度は繭で傷付くなんて認めない
その日授業をさぼって部屋で過ごした
繭が帰って来たのは夕方の6時
俺がいるのに見向きもしないまま着替え、部屋を出て行った
「楓、居るか?」
「いるけど」
「お前達どうしたんだ?」
「何が?」
「繭だよ」
「さぁ」
「食堂で会っても挨拶程度、繭の周りには金持ちがまとわりついてるし」
「そう」
「翔とは話をしていたけど、翔も表情がなんかおかしいし」
「嫌われたみたいだね」
「お前が?」
「うん」
「謝れよ」
「そういう次元じゃ無さそう」
「どういう事・・・」
繭が部屋に戻って来た
「お邪魔してるぞ」
「どうぞ」
そのまま机に向かい教科書を開いていた
「繭、怒ってるのか?楓はこういう奴だからさ」
「怒る?何故僕が楓さんの事を気にする必要があるのですか?」
「えっ・・・」
そう言ったきり、何も話さず淡々とノートに文字を書いていた
楓さんね・・・
「楓、次のライブだけど」
「うん、明日スタジオに行くよ」
「わかった」
そうだった
繭とこうなった以上、このままでいいはずがない
でも・・・
「明日から練習だから」
「僕に報告は必要ありません」
「社長だしね」
「利益を生み出していただければそれで結構」
「・・・・・・・・・・」
繭は教科書を閉じ、部屋を出て行った
「楓、どうすんだよ」
「どうにもならないでしょ」
「だけどさ」
「今の俺はここから離れたい、それだけ」
「わかった・・・じゃ明日な」
「うん」
もうここには可愛い繭はどこにもいない
俺はその他大勢の一人
これが悲しいと言う感情なのかな
千裕を失った感情とは別の物
そして次の日、俺は都会へ舞い戻った
キラキラした太陽の場所にいたくなかった
「楓、ギターは?」
「新しいのを買おうかと」
「そっか」
さすがに使えない
だからギターは置いて来た
午前中はギターを探し、午後スタジオに戻った
夜は朝まで飲み明かし、眠る事など忘れていた
そうだよね、そんな生活が俺にはお似合いだ
高校生なんて似合わない
「楓、今夜は家に来い」
「どうして?」
「寝ていないだろ?」
「別にいいよ」
「ダメだ!いいから来い」
仕方なく葵の家に行く事にした
「お前さ・・・」
「何?」
「昔に戻るつもりか?」
「昔ね」
「毎晩飲み歩いて・・・」
「毎晩飲み歩いて毎晩違う男と寝て・・・」
「楓!」
「それだけの事じゃない」
「いい加減にしろよっ!そんなに男が欲しいなら俺が・・・」
「俺が?」
「・・・・・・・・・・」
「出来ないなら言わない方がいいね」
「もう寝ろ」
「そうだね」
バンドを俺の手で壊す事は出来ない
葵の気持ちもわかっている
だけど心とは裏腹な事しか言えなくなってしまったみたい
葵はもう何も言わなくなった
俺は親友まで失ったのかな
ぼんやり繭のイラストを見つめ、ため息をついた
「楓、それ鏡の近くに移動するぞ」
「うん」
何気なくイラストを鏡越しに見た
「えっ?」
適当な模様だと思っていたバットの線は鏡越しで一つの文字になっていた
「楓、どうしたんだ?」
「何でもない」
鏡に映された文字を見つめ、繭の事を思い出していた
鏡に映さなければ読めない言葉
ーだいすきー
今それを気付かせるなんてね
遅すぎでしょ
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