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生徒会の引継ぎで繭は忙しそうだ
和海と会話をしているけどそれは仕方が無いって事か
「翔、お待たせ」
「うん、忙しそうだな」
「そうだね、和海は鬱陶しいけど」
「備品でやり合うのはやめてくれよな」
「和海がいるだけでムカつく」
「はいはい」
繭はもう笑わない
だから俺も笑えない
「寂しいなら俺の部屋に・・・」
「寂しいって何?僕は昔から寂しいなんて考えた事も無いけど」
「だな」
「これ、来月の学園祭の書類だから」
「目を通しておくよ」
「うん」
「あのさ・・・」
「何?」
「まだ先の話だけど、お前卒業したら」
「ハーバード大への推薦が決まっているしそこで勉強して会社を動かす」
「海外に?」
「別に日本にいなくても仕事なら出来る」
「そうだけどさ」
「翔も行く?」
「う~ん・・・」
すぐに返事が出来なかった
繭も返事を期待している様子はなかった
「あのさ・・・」
「うん」
「このままでいいの?」
「何の話?」
「いや・・・もういいや」
「うん」
楓はずっと見ていない
葵と華も戻っていない
「僕は寮長と話があるから」
「わかった」
これが本来の繭なんだよな
そう思っていたのに何となく寂しい
そのまま温室に向かい、ソファーに腰かけた
「夜は冷えるぞ」
「あのさ」
「どうした」
「楓達の姿を見た?」
「あいつらはライブが近いからいないんだろ?」
「ああ、成程ね」
そう言う事か
結構楽しかったのにな、ライブ
でも、もう行く事もないんだろうな
部屋に戻り、宿題を終わらせシャワーを浴びた
毎日の予定は時間通りに進む、それがいつもの生活だった
壁紙は新しい壁紙に張り替えた
食事を済ませレターボックスを開けると白い封筒が入っていた
差出人は書かれていない
封筒を持ち、部屋に戻りペーパーナイフで封を開けた
「・・・・・・・・」
中身を確認してゴミ箱に捨てた
「繭、ドイツ語の宿題教えて」
「翔なのに?」
「俺だってわからない時もある」
「どこ?」
「ここなんだけど」
「待ってて」
辞書を探し、翔に渡した
「おいおい・・・」
「僕は生徒会の書類を作らなければいけない」
「はいはい、机借りるぞ」
「・・・・・・・・・」
壁紙も張り替え、部屋は僕が来た時と同じ空間になっていた
「んじゃやるか」
楓の机で宿題を始めた翔
戻る気はなさそうだ
「繭?」
「会計と学園祭の経費の話があるから」
「ほい」
あの部屋にいたくはない
僕は何かと用事を作り、部屋から離れるようになっていた
「俺も邪魔なのかよ・・・」
部屋を出て行った後、楓のベッドを見つめた
生活感が無い部屋、冷たいままのベッド
「ゴミだらけじゃないか・・・ってこれは」
ゴミ箱に捨てられていた封筒が気になって中を見てしまった
封筒の中にはライブのチケットが二枚入っていた
「だよな・・・」
チケットを封筒に入れてゴミ箱に捨てた
「生徒会の仕事もわかるけど肝心な事を忘れていないよな?」
そして繭が戻って来た
「おかえり」
「あの野郎・・・殺す」
「えっ?」
「僕がどんなに計算を合わせても勝手に経費を使い込んでる」
「和海の事かな?」
「殺す」
「ちなみにいくら?」
「2千万」
「ちょ!」
「ばれるのが分かってて使うとかムカつく」
「だな」
「ウサギ小屋の建築費」
「懲りないね~」
「別にいい、出来たら壊すだけ」
「その金の方が無駄じゃない?」
「無駄じゃない」
「あそ」
「ところでさ」
「うん」
「音楽祭どうするの?もうすぐだけど」
「どうもしない」
「だってピアノがいないだろ?」
「翔がいる」
「いやいや、クラス違うし!」
「じゃ、僕が弾く」
「そっか」
待つと言う選択肢は無いわけね
「お前このままでいいの?」
「翔、宿題終わったら戻って」
「まだ終わってないし」
「じゃ、静かにして」
「わかったよ」
ホント、わかりやすい
まだ完全には消していないんだ
「許す選択はないのかな?」
「出て行く?」
「どうでもいい話だろ?付き合えよ」
繭はため息をついて話に付き合ってくれた
「そもそも許すとか意味が理解出来ない質問なんだけど」
「あそ」
昔の記憶を辿る
繭が怒った時、俺はどうやって許してもらったのかを
だけど喧嘩とかしなかったしな・・・
何気なく繭の机に視線を向け、ブックスタンドを見つめた
「懐かしいな、昔よくやってたな」
鏡に映る文字
俺達の秘密のやりとり
和海に気付かれないようにこっそり書く逆さ文字
俺達はそんな方法で秘密のやり取りを繰り返していた
見ただけでは気付かない単なる傷だけどちゃんと意味はある
「昔の事」
「そうだけどさ、繭は隠すのが上手かったよな」
「翔が下手なだけ」
「確かに」
このままでいいのか?
本当に繭一人で生きて行くつもりなのか?
過去に戻りたいとは思わない
だけどこのままでは余りにも中途半端過ぎて・・・
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