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目を覚まさない楓を見つめていた
今どんな夢を見ているの?
それはいい夢?悪い夢?
そこには誰がいるの?
千裕?それとも僕?
「子供なのは僕」
あんな挑発に乗ってしまったからいけないんだ
和海なんか相手にしなければよかったんだ
「・・・・・・・・・」
そして楓が目を覚ました
「楓」
「繭、俺のせいで怪我を」
「そんな事はどうでもいい」
そう、どうでもいい
楓が無事なら
「ごめんね」
「楓は悪くない、そんな顔しないで」
「・・・・・・・・・」
楓は僕を見ないまま話を続けた
「俺ね、思い出したよ」
「何を?」
「俺の傍にいるとみんな不幸になる」
「ならない!」
「千裕もそうだった・・・俺が千裕を愛さなければ何もされなかったはず」
「だから今度は僕がって言いたいの?」
「・・・・・・・・・」
「僕はそんなにやわじゃない、今まで生きて来た中で誰かの為に傷付いたりした事は無い」
「・・・・・・・・・・」
「だけど、このままなら楓は僕を傷付ける事になる」
「繭」
「楓、僕を見て」
「何を・・・」
怪我をした腕を思い切り掴み、傷口を開いた
流れ出す血はあっという間に右手を赤く染めた
「僕は誰?」
「・・・・・・・・・・」
「答えて!」
「もうやめて・・・」
「こんな事ぐらいでは死なない、だから答えて」
「繭!」
「そう、僕は繭・・・千裕じゃない」
「そうだね」
「これからもずっと」
「うん」
「もう少し眠って」
「それよりも医務室に」
「僕は平気、氷龍がいるから」
「わかった」
楓が眠ったのを確認して氷龍の部屋に向かった
「お前・・・」
「傷が開いた」
「開くはずはないだろ?故意で何かをしなければね」
「掴んだだけ」
「これを故意と言うんだろ?脱げ」
「うん」
シャツを脱いで椅子に腰かけた
怪我はいつも自分で何とかしていた
ドクターだって信用出来ない
だから治せない怪我は氷龍に任せていた
子供の頃からそうだった
病気をした時、診てもらったドクターに毒を飲まされそうになった事もある
怪我をした時も同じ、更に悪化させられそうになった事もある
全て和海の仕業
だからどんなに高熱を出しても病院には行かなかった
ただじっと寝ているだけだった
野生動物のように、体力を消耗しない方法で耐えるしかなかった
「しかし、麻酔も無しで声も出さないとは恐れ入る」
「声を出す事に意味は無い」
「確かにな」
声を出したところで痛みは同じ
そんな事昔からわかってる
散々和海を喜ばせて来た、だからどんなに痛くても声は出さない癖がついた
「それで、気は済んだのか?」
「うん」
「それならいい」
シャツを着て部屋に戻り、床に染みついた血を見つめた
ポケットからハンカチを取り出しその血を拭い取った
これが僕と和海の違い
和海は決して床に近付いたりしない
必要以上にかがんだりもしない
常に上から見下ろすように躾けられてきたから
だけど僕は違う
そんな見栄など何の得にもならないから
「繭」
「また起きた」
「そんなに眠れないよ」
「うん」
僕はここから見える景色しか知らない
後10センチ高い景色はどう見えるのだろう
「繭にお礼をしないとね」
「そんなのはいい」
「何かしてあげられたらいいんだけどな」
「・・・・・・・・・・」
「ん?」
「僕を持ち上げて」
「繭を?」
「うん」
「そんなのでいいの?」
「うん」
楓が立ち上がり、僕を両手で持ち上げた
同じ景色なのに違う
見た事が無い景色
ほんの数センチ違うだけの景色を僕は見ていた
「重いからもういい」
「大丈夫だよ、軽いし小さい・・・あっ」
「!!!」
「ごめんね」
「僕の身長は168センチになる予定」
「今のままでいいよ」
「どうして?」
「繭だから」
そう言って僕の頭を撫でた
「楓の見える景色と同じ景色が見たかった」
「そんなの簡単でしょ?」
「どうして?」
「俺が繭の視線に合わせればいいだけ」
「・・・・・・・・・・」
そして僕を膝の上に乗せた
「これで今同じものが見えているはず」
「うん」
僕はいつしか何かを欲しがるのをやめた
欲しがっても壊されてしまうから
玩具もペットも全て和海に壊された
でも、僕は楓を欲しいと思った
壊されるなら僕が護ればいい
絶対、この手を離さない
楓が離さない限りずっと
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