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苦しそう・・・
見ているだけで辛くなる
「繭、頭を冷やそうか?」
「いい」
「嫌なの?」
「僕は大丈夫」
翔の言っていた言葉の意味を理解した
こういう事ね
すごく苦しそうなのに黙って耐えている繭
「繭、俺には我儘を言って欲しいな」
「・・・・・・・・・」
「一人で頑張らなくてもいいんだよ?」
「・・・・・・・・・」
「それとも俺が信用出来ない?」
「・・・・・・・・・・」
「繭」
「冷やす」
「わかった」
急いで氷枕を借りて頭の下に置いた
これでいいはず
「楓・・・」
「何?」
「頭が痛い」
「えっ、頭痛?」
「違う・・・氷だけじゃだめ、水」
「わかった」
氷枕だから氷だけでいいと思ってた
急いで水を入れて頭の下に置いた
「どう?」
「首が・・・」
「直角だね、待ってて」
意外と難しい
今度は水を減らして何とか丁度いい感じになった
「繭」
えっ・・・手が冷たい
「寒いの?」
「寒い」
「待ってて!」
靴下を履かせよう
でも、3枚以上は履かせられない
「違う・・・」
「えっ?」
「ペットボトル」
「ペットボトル?」
「それにお湯を」
「わかった、待ってて」
成程賢いね
急いでペットボトルにお湯を入れてベッドの中に入れた
「熱い・・・」
「ごめんね、水を」
「タオルで」
「わかった」
そうか、タオルに包めばいいわけね
「楓」
「何?」
「入れすぎ」
「ごめん」
沢山入れすぎたらしい
お湯はたまに入れ替えないとね
「手も冷たいね・・・」
「手は・・・握ってくれればいい」
「わかった」
冷たい手を両手で握りしめて繭を見つめた
しばらくすると汗で髪が濡れていた
「着替え」
新しい下着とパジャマを用意して繭に言った
「着替えよう」
「うん」
タオルで汗を拭いて着替えさせた
そして繭はそのまま眠ってしまった
「38度、下がって来た」
手足が温かくなって来たのでペットボトルを取り出し、額に乗せたタオルを取り替えた
頭を冷やしても熱が下がらないなんて初めて知った
わきの下と足の付け根の保冷剤を取り替え、手を握りしめた
「どうしよう・・・どうするべき?」
点滴が終わりそう
このまま放置したら空気が入って死んでしまうかも知れない
葵に電話をかけて部屋まで来てもらった
「どうした!」
「点滴が終わって・・・繭が死んじゃうかも知れない」
「お前の頭は何十年前なんだ?これは点滴が終わっても空気は入らないんだよ」
「そうなの?」
「ったく・・・で、熱は?」
「38度」
「いい感じだ、点滴は続けるから終わっても慌てるな」
「うん」
「でも放置はよくないから終わる頃に来る」
「わかった」
「じゃ、頑張れよ」
「うん」
繭は死んだように眠っていた
時折、呼吸を確認してしまう
俺は起こさないようにギターを弾いて曲を作り始めた
「楓」
「ごめんね、起こしちゃった?」
「ううん、楓のギターは好き」
「どこか痛いの?」
「喉乾いた」
「わかった」
買ってあったスポーツドリンクのキャップを開けてストローを入れた
「少し体を起こすよ」
「うん」
そっと体を起こし、ストローを近付けた
繭はものすごい勢いで飲み干した
驚いた・・・掃除機でも入ってるのかな?
「もういい?」
「うん」
「じゃ、氷を入れ替えて来るね」
「うん」
氷枕を取り替え、また眠った繭の傍でギターを弾いた
「出来たかな」
曲が出来た頃には夕陽が沈んで大きな月が浮かんでいた
「楓、繭は?」
「翔」
翔が息を切らしてやって来た
「成程ね・・・進歩だな」
「書類は間に合った?」
「もちろん、和海は悔しそうだったよ」
「よかった」
「ところで誰が点滴を?」
「葵かな」
「よく繭がやらせたな」
「ねっ」
「いつも一人で処置をして耐えて来たんだよ」
「・・・・・・・・・・」
「でもよかった、甘える事を覚えてくれて」
「質問」
「ん?」
「この点滴も繭が?」
「そうだよ、薬も全部自家製」
「すごいね」
「そうでもしなければ死んでしまうしね」
「・・・・・・・・・・」
「罪を犯していなくても死刑だと判決が下れば死刑になる、そうやって罪をかぶせる人間が世の中には腐るほどいるんだ」
「だね」
「病院内で起きた事故を口裏を合わせて隠す事も出来る」
「怖いね」
「そう言う危険から身を守るには自分で守るしかない
でも今は、楓がいる・・・それだけで十分だと思うよ」
「ああっ!」
「何?」
「点滴が終わった・・・大丈夫、だけど・・・でも」
「慌てるなって」
翔は点滴の針を抜いて、そのままテープを貼り付けた
「血が止まったら外してもいいから」
「うん」
「熱は・・・37.5度か、後は十分に眠ればすぐに良くなる」
「よかった」
「お疲れ!」
「食事はどうすれば?」
「繭が欲しがればスープでも飲ませてやれ」
「わかった」
「じゃ、何かあったら教えてね」
「うん」
そして葵がやって来た
「ごめん、部活でトラブルがあって・・・ってお前が?」
「翔かな」
「よかった」
「何が?」
「お前が抜いたらそのまま放置で血の海だ」
「えっ?」
「それは冗談だけど、熱は下がったか?」
「うん」
「じゃ、水分補給をしてやれよ」
「わかった」
「お前も何か食べろ」
「そうする」
「じゃな」
「うん」
そう言えば、今日は何も食べていなかった
でも、お腹は空かないし繭と食べる方が美味しいに決まってる
色々あったけど、早く元気になるといいな
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