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苦しくて辛くて・・・でも自分で何とかするしかない
今まではずっとそう思っていた
でも、楓の言葉で初めて弱音を吐いた
やる事はめちゃくちゃだったけど、すごく真剣だった
ずっと僕の手を握りしめてくれた
夢の中で聞こえるギターの音色が心地よかった
額に触れる手はすごく優しかった
「繭、目が覚めた?」
「うん」
「何か飲む?」
「うん」
「わかった、待ってて」
楓はずっと僕の傍にいてくれた
「もういい?」
「うん」
渇いた喉が潤ったらお腹が空いた
「スープ飲めそう?」
「飲む」
「じゃ、ゆっくりね」
「うん」
初めて自分以外の人の手から食べ物を口に入れた
それは僕にとってはすごく恐怖で絶対他人の手から何かを食べるような事はしなかった
「どうかな?」
「美味しい」
「よかった」
でもそれを許したのは楓だけ
楓は僕を傷付けたりしないから
「まだあるけど」
「飲む」
「うん」
野菜スープが美味しいと感じたけど物足りない
「パン!」
「それは・・・どうなんだろう」
「スープに浸して」
「それならいいかな」
「うん」
僕は楓に何でも言えるようになっていた
自分の絶対言えない意思を伝えられるようになった
「他に食べたいものある?」
「イチゴ」
「イチゴか・・・わかった」
「冗談」
「えっ?」
「今何時?お店は閉まってる」
「でも買って来るから待ってて」
「いらない、傍にいて」
「わかった」
そして翔がやって来た
いつもそう
熱を出すと必ずイチゴを持って来てくれる
今でも忘れずにね
「繭、これ食べるか?」
「イチゴ!」
「温室で育てたんだ」
「イチゴ!!」
「ゆっくり食べろよ」
「うん」
「すごいほっぺがパンパン、物凄い勢いで食べてるって思ってるだろ?」
「ばれた?」
「いつも繭が熱を出した時、イチゴを持って行ったんだ」
「うん、イチゴ」
「俺が駆けつける頃には熱が下がっててさ、こんな感じでイチゴを食べつくしてた」
「食欲があって安心した」
「そろそろ熱が下がると思ってさっき温室で採って来たんだ」
「もしかしてマンゴーとかもありそう」
「あるよ」
「どうして?」
「繭が好きな物ならある、一番安全だしね」
「でも和海が」
「それなら大丈夫、目立つところで育てているのはフェイクで繭が食べるものは俺以外入れない所で作ってるから」
「セコムはいらないね」
「そう言う事」
翔達が会話をしている時もイチゴを食べ続けた
「楓も何も食べていないんだろ?これを」
「ありがとう」
シチューかな?
でも僕がものすごーーーく食べたそうにしていたから二人で食べた
要するに僕の体調は食欲でわかると言う事を翔は知っていた
「繭、これを作って来たんだけど・・・」
今度は華がやって来た
作ったって・・・こんな時間に?
「何度か失敗しちゃって・・・やっと出来たんだけど」
「これは?」
「シフォンケーキかな、消化によさそうだし」
「・・・・・・・・・・」
「いらないよね・・・」
楓がケーキを食べた
「うん、美味しい!華ふわふわで美味しいよ」
「ホント?」
「じゃ、俺も~!うん、んまい!!」
翔も食べた
「繭も食べてみて」
差し出されたケーキを見つめ悩んだ
でも、楓が食べさせてくれるなら・・・
「美味しいです」
「よかった~」
「やっぱりここにいたのか」
「葵」
「ちょ!俺に食べさせたのは真っ黒だったのに!」
「味見かな」
「でも美味しかったけど」
すごく楽しかった
僕の周りにはみんなが笑っていた
こんな事は初めてで、すごく嬉しかったんだ
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