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今朝は繭も回復して一緒に登校した
何というか、物凄い回復力に驚いた
「もう本当に大丈夫?」
「うん」
「そう」
校舎に近付くと、生徒が騒いでいた
「何だろう」
「・・・・・・上」
「上?」
繭の視線を追って上を見あげると、屋上に誰かが立っていた
「何をしているんだろうね」
「・・・・・・・・・」
「繭?」
「あいつは和海のうさぎ」
「えっ?」
そう言えば見覚えがある
部屋に忍び込んで来た奴だ
「捨てられたんだね」
「捨てられた?」
「ここにいても仕方が無いから行こう」
「でも」
「もう遅い」
「えっ?」
そして何とも言えない音がした
もしかして、飛び降りたの?
生徒の悲鳴と動揺
さっきまで呼吸していた生き物が目の前で死んだ
「おはようございます」
和海がやって来た
「ペットは飼い主が最後まで面倒見ろ」
「何のお話でしょう」
「楓、行こう」
「そう言えば昔・・・繭が可愛がっていた犬が死んだ時、ずっと泣いていましたね」
「お前が殺した」
「あの時の繭は本当に面白かったですよ」
「死ね」
繭の体が宙に浮いた
でも、和海は簡単にかわし繭を蹴飛ばした
「繭!」
「そう言えば病み上がりでしたね・・・」
「お前、マジうざいわ!」
翔が和海を後ろから蹴飛ばし、繭に近付いた
「大丈夫か?」
「うん」
「翔、今朝は早いのですね」
「行くぞ」
翔はそのまま教室ではなく温室に向かった
「午前中はここで休め」
「わかった」
「お前、腕を庇ったんだろ?」
「腕を狙われたから」
「だと思った」
そう言う事か
繭が簡単にやられるのはおかしいと思っていたけど、翔はそれに気付いていたんだ
「翔」
「ん?」
「甘いフルーツ」
「はいはい、待ってろ」
「うん」
朝食をしっかり食べて今度はフルーツ・・・
繭の体は半分以上が胃で出来ているのかな?
「これでいいか?」
「今は」
「だな」
翔はいい香りの漂う梨を持って来た
そう言えば梨をこうして見るのも久しぶりかも
「イチゴじゃないの?」
「イチゴは病気の時だけなんだ」
「そう」
「楓も食べて」
「えっ?」
「楓も食べて」
「うん」
「僕がやる、翔ナイフ」
「ほら」
大丈夫かな?
指とか切らないかな?
綺麗なナイフを受け取り、梨を切り分けた
「上手いだろ?」
「びっくり」
「リンゴだったらウサギにしてくれるぞ」
「うさぎは嫌」
「だったな」
何でも出来るくせに砂糖と塩を間違えるんだ
「出来た、食べて」
「じゃ、いただきます」
「うん」
梨を食べたのは何年ぶりだろう
そもそもフルーツは余り食べないしね
綺麗なお皿に梨を並べてみんなで食べた
「んじゃ、楓の疑問にお答えしよう」
「えっ?」
「自殺したうさぎのお話」
「・・・・・・・・」
「うさぎってさ、寂しいと死んじゃうとか言われてるけど実際はそうじゃない」
「違うの?」
「年中盛ってるし攻撃的、そして逃げ足が速い」
「意外だね」
「まぁ、盛ってるってのは和海向きかもな・・・でもって意外と悪食」
「草食のイメージだったけど」
「子育て中に見られると子ウサギを食べてしまう」
「えっ」」
「だけどここで飼われているうさぎは園長の飼育放棄が多いから、毎年数人があそこから飛び降りるんだよね」
「こんな所で一生を終わらせるなんておかしいと思うけど」
「だけどあいつらにとって和海は神みたいなものだからさ、ホント馬鹿らしいよ」
「神ね・・・」
二個目の梨を切り分けながら繭が話を続けた
「うさぎになると言う事は、将来を約束されたと言う事」
「将来ね」
「だから捨てられたうさぎは社会にも見捨てられてしまう」
「バイトでもすればいいのに」
「当然、家族も職を失う」
「もちろんウサギ同士で殺し合う事もある」
「そこまでするんだ・・・最低」
「でも無駄死に」
「えっ?」
「僕が遺産を相続したら和海はただの人、ざまあみろ」
「そう言う事だな、和海の傘下に入ったとしてもすぐに泣きを見る羽目になる」
「次は僕が全てを奪う番」
「成程」
そして燕羽がやって来た
「みんな探したよ~!」
繭が最後の梨を食べて翔に言った
「燕羽には特別甘いフルーツ」
「オッケー」
翔が持って来たのは高そうなメロン
「燕羽も食べるでしょ?」
「うんうん、大好き!」
繭と翔が視線を合わせた
何の合図なんだろう
「んで、何の話をしてたの?」
「コウモリの話」
「コウモリ?」
「フルーツバットと言うコウモリは甘いフルーツが大好き」
「そうなんだ」
コウモリの話はしていない
どうして?
「特にこういう甘いメロンとかね」
「へぇ」
「コウモリの話って知ってる?」
繭は突然物語の話をした
「知らないけど」
燕羽はメロンを美味しそうに食べながら聞いていた
俺はメロンが嫌いだから手を出さなかった
「昔、鳥族と獣族の戦いがありました」
「うん」
「鳥族が有利になるとこうもりは言いました、私には同じような羽があるので貴方達の仲間ですと」
「確かに飛べるね」
「そして獣族が有利になると私は全身に毛が生えているので貴方達の味方ですと言って獣族の仲間になりました」
「確かに生えてるね」
「コウモリはそんな事を言い、常に優勢な方に何度も寝返りました」
「成程」
「そして和解した鳥族と獣族の戦いは終わり、何度も寝返り双方にいい顔をしていたコウモリはどちらからも相手にされず仲間外れになってしまいました」
「そうなるよね」
「双方から追いやられ、孤独なコウモリは夜しか空を飛べず、獣から身を隠すように暗い洞窟で暮らす事になったとさ」
「面白い話だね」
話し終わる頃に、燕羽の手が止まっていた
そして翔が言った
「燕羽、面白かった?」
「そうだね」
「戦いが終わらなかったら今はどっちに寝返るんだろうね・・・コウモリは」
「俺にはわからないかな」
「だよね~」
「あっ、俺は移動教室だった!ご馳走様」
「うん」
移動教室?
今更・・・と言うかもう授業は始まっているのでは?
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