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「大きなうわごとだな」
「本当に」
あの後、冬矢は消えてしまった
きっとそれも計算だろう
俺達は血だらけの燕羽を温室まで運び、手当てをした
燕羽はうなされながら俺達にずっと謝っていた
「どうする?」
「・・・・・・・・・・」
「最後の反抗だったんじゃない?命まで懸けてさ」
「それで刺されるなんてまぬけ」
「まぁな」
「翔はどうしたい?」
「繭に任せるよ」
「じゃ、外に捨てよう」
「おいっ!」
「冗談」
「お前なぁ・・・まぁ、俺は信じてやりたい」
「・・・・・・」
「体まで張ったんだしさ、理由もあるわけだし」
「・・・・・・・・・」
「だよな、無理だよな」
「楓は寂しそうだった」
「そっか」
「だから楓の為に僕が折れる、ただし二度目は無い」
「マジか!繭~、成長したな」
「条件は二つ」
「条件?」
「うさぎをやめる事としばらく盗聴器を付ける事」
「盗聴器?」
「小型の盗聴器がある」
そう言って綺麗なヘアピンを燕羽の髪につけた
盗聴なんてする必要はないけど、繭のけじめみたいなものだろう
「で、どうする?」
「冬矢に運ばせる、冬矢が仕組んだ事だから最後まで責任を取ってもらう」
「わかった、じゃ呼ぶぞ」
「うん」
冬矢に電話をかけて燕羽を寮まで連れて行ってもらった
今回は冬矢にやられたって所だな
「じゃ、戻りますか」
「うん、かなり遅くなった」
「だな」
中庭を歩きながら繭が石を拾い上げた
成程ね、仕返しはする訳ね
俺も石を持ち、顔を見合わせて和海の部屋の窓目掛けて投げた
「結構大きな音だな」
「行こう」
「ああ」
うさぎが騒ぎ出した
本当にうるさい
「じゃな」
「うん」
繭と別れて部屋に戻った
「小さな仕返しだな」
「まぁね」
「疲れただろ、紅茶でいいか?」
「砂糖たくさん入れてね」
「ああ」
「氷龍は知ってたの?燕羽の事」
「繭も知っていたはずだ」
「俺は知らなかったけど」
「燕羽に同情心でも沸いたんだろ?冬矢にしては珍しい」
「確かに珍しいね」
冬矢はいつも蚊帳の外
絶対にこっちには入ろうとはしない
でも、嫌いじゃない
むしろ賢いと思うしね
だけど、弟想いだから気に入らない所もある
「面倒臭っ!!」
「落ち着け」
「冬矢はこのまま何もしないのかな」
「さぁな」
「それで楽しいのかな」
「翔はどうなんだ?楽しいと思うのか?」
「俺?」
「ああ」
「全てが終われば楽しいと思えるのかもね」
「そうか」
「いっ・・・」
「痛むのか?」
「たまにね、昔の傷が疼くんだよ」
そう
和海達につけられた傷がね
すごく痛むんだ
親子揃って俺を痛めつけた
忘れないよ、味わった屈辱も痛みもね
「横になれ」
「うん・・・氷龍」
「傍にいる、安心しろ」
「うん」
心が痛くて壊れてしまいそう
だけど俺には氷龍がいてくれる
俺は一人じゃない
誰でも一人が好きな訳じゃないはず
「好きだよ、氷龍」
「どうせなら愛してると言って欲しい」
「今は言えないかな・・・わかるでしょ?」
「そうだな」
俺は誰を好きなのかもわからない
今はそんな気にもなれない
心のどこかで愛情を拒んでいる
全てが終われば俺もちゃんと笑えるのかな
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