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知らせを受けたのは深夜だった
余りにも突然すぎてしばらく動けなかった
「繭、どうしたの?」
「翔が・・・」
「翔?」
「今、病院から電話が」
「病院?」
「翔達の乗った車が事故に巻き込まれて・・・」
「落ち着いて、病院はどこ?」
「翔が死んだら、僕は」
「翔だけ?」
「冬矢と和海も」
「とにかく病院に急ごう」
「うん」
事故に巻き込まれるなんて嘘だ
そんなの信じない
「大丈夫だから」
僕は車の中で震えていた
そんな僕を抱きしめてくれたのは楓だった
「ここ」
赤いライトがくるくる回っていた
本当に嫌な場所
都内の病院に着いたのは明け方だった
車を飛び降り、急いで受付に向かった
「事故で運ばれた人はどこですか?」
「こちらです」
心臓はずっとドキドキしていた
「お二人は幸い軽症ですが助手席に座っていた方は意識がまだ戻っていません」
誰が助手席に?
「こちらです」
震えながら病室を開けると、翔と冬矢が眠っていた
「よかった・・・」
「繭・・・」
「翔、大丈夫?」
「何とかね、冬矢が庇ってくれたから」
「うん」
「和海は?」
「助手席に乗っていたの?」
「だな」
「意識がまだ戻らないって」
「自業自得だな」
「そうだね」
どうせなら死んでくれた方がいい
僕達が殺せないのは残念だけどね
「見て来る」
「ああ」
病室を出て、和海がいる場所に向かった
「面会は出来ません、ガラス越しでお願いします」
ガラス越しに和海を見つめた
包帯だらけの和海
たくさんのチューブとうるさい機械音
本当に怪我人なんだ
助かって欲しいとは思わない
「繭」
「戻る」
「うん」
動かない和海をしばらく見つめ拳を握りしめた
僕達が殺すはずだった
このままあっけなく死ぬのは許さない
「楓、どんな気分?」
「よくわからない」
「僕も」
病院はずるい
雰囲気だけで同情してしまいそうだから
「翔」
「どうだった?」
「動かない」
「このまま目覚めないかも知れないらしいぞ」
「じゃ、呼吸器を止めればいい」
「まぁな、でもそれは少し違わないか?」
「そうだね」
そして冬矢が目を覚ました
「ここは・・・そうか、俺達は」
「冬矢のおかげで助かった」
「翔、よかった」
「和海が心配?」
「・・・・・・・・・・・」
「まだ意識がないらしい」
「そうか」
「シートベルトは大切だね」
「和海はしていなかったな」
「うん」
翔と冬矢は次の日退院出来た
「冬矢はどうする?」
「俺はここにいるよ」
「燕羽は?」
「和海がいなければ安心だろ?」
「まぁね、じゃ何かあったら連絡して」
「わかった」
僕達は三人で学園に戻る事にした
和海の意識は戻りそうにない
「まだ死んでないけどさ」
「うん」
「人間ってあっけないよな」
「そうだね」
「どんな事故だったの?」
「よく覚えていないんだけど、信号無視したトラックが正面から突っ込んで来た」
「運転手は?」
「死んだらしい」
「そう」
「和海もこのまま死ぬかもな」
「そうかも知れないね」
すごく気分がいいとは言えない
翔が助かったのは嬉しいけど、何だか中途半端すぎて嫌な気分
翔も同じだと思う
事故で死ぬのは許さない
「じゃ、俺少し休むよ」
「わかった」
翔と別れて部屋に戻り、ベッドに腰かけた
「取り合えず安心したね」
「うん」
「繭、大丈夫?」
「病院はずるい」
「ん?」
「あんな姿を見せられたら・・・僕はっ」
「繭は優しいから」
「優しくなんかない」
「助かって欲しいの?」
「楓はどっち?」
「難しいね・・・全て許せるほど人間が出来てはいない」
「それが普通だよ、楓は恋人を殺されたんだから」
「・・・・・・・・」
「一番憎むのは楓だと思うし」
「そうかもね」
本当に嫌な気分だった
助かっても嫌な気分だし、死んでも同じ
すっきりしないまま、月日だけが流れて行った
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