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「雪か・・・」
事故から何週間経ったのだろう
和海はずっと眠ったまま
寝顔を見るのは本当に久しぶりだった
昔からプライドだけが高い弟だった
だけどそのプライドのせいで心を無くしてしまった可哀想な和海
いつから笑わなくなった?
いつから金に執着するようになった?
「生まれ変われても許してもらえないだろうな」
余りにもその手を汚し過ぎた
感情をどこへ置き忘れたんだ?
それでも弟には違いない
どんなに冷酷でもお前が可愛いんだ
「和海、雪だぞ」
全て真っ白になればどんなにいいか
「綺麗ですね」
「和海?」
「雪を見たのは何年振りでしょうか」
「お前・・・」
和海が目を覚ました
急いでドクターを呼んだ
「私はずっと眠っていたのでしょうか」
「そうだな」
「夢を見ていました・・・繭に勉強を教える夢でした」
「・・・・・・・・・」
様子がおかしい
和海はどうしてしまったんだ?
「繭と翔は元気ですか?」
「ああ」
「雪が積もったら一緒に遊びたいですね」
やはりおかしい
和海が笑っている
「和海」
「はい」
「ウサギは好きか?」
「うさぎですか?」
「ああ」
「飼育した事はありませんが」
「そうか」
やはり記憶が?
「繭達に会えますか?」
「今はまだ無理だな」
「そうですか、残念です」
「会ってどうする」
「どうするって・・・弟ですよ?」
「そうだな」
「繭は大人しい子ですから心配です、一人で屋敷にいるのですか?」
「いや、学校にいる」
「学校・・・」
「高校生だ」
「高校・・・不思議ですね、最近まで小学生だと思っていたのに」
「繭は好きか?」
「勿論です」
「翔は?」
「好きですよ、いたずらっ子ですが可愛いですね」
「繭の可愛がっている犬を知っているか?」
「ええ、毎日散歩に行っていましたね」
「そうだな」
「元気でしょうか」
「・・・・・・・・・・」
繭の可愛がっていた犬は和海が殺した
「和海、楓を知っているか?」
「楓・・・誰でしょう」
楓の記憶がないのか?
「お前は今何歳だ?」
「中学・・・」
「お前は高校生だ」
「信じられません」
「繭と翔も同じ高校だ」
「そうなんですか、早く会いたいですね」
「・・・・・・・・・・・」
やはりおかしい
しかし芝居にも見えない
俺はどうしたら・・・
「ドクターと話をして来る」
「はい」
俺は疑問をドクターにぶつけてみた
検査をしてみないとわからないが、和海は記憶を失っている可能性があった
「少し寝ろ」
「はい」
和海の寝顔を見つめながら繭達に知らせるか悩んでいた
記憶を失った和海が哀れ過ぎる
そして数日後、翔達に連絡をした
「電話だ」
「はい」
電話は翔からだった
和海に合わせる前に話をする必要があったから
「冬矢」
「まず話を聞いて欲しい」
「殺すなと言いたいの?」
「そうじゃない、しかし・・・」
「何?」
「和海は記憶を失っている」
「・・・・・何それ」
「検査もした、一時的かも知れないが本当に記憶が無いんだ」
「全て忘れてるの?」
「翔と繭の事は覚えている、早く会いたいと言っている」
「勝手すぎるだろっ!」
「とにかく和海に会え、後はお前達で決めろ」
「翔」
「行くぞ」
まだ信用していない顔だ
俺だって信じられない
「和海、繭と翔が来たぞ」
「本当ですか?」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「久しぶりですね、本当に高校生なんですね」
「和海」
「繭、直ぐよくなりますから・・・退院したら一緒に遊びましょうね」
「和海」
「翔、相変わらず綺麗ですね・・・来てくれて嬉しいです」
「屋根裏部屋」
「屋根裏?繭、あそこには行かないで下さいね」
「ウサギ小屋」
「私はウサギを育てた事はありません」
二人は少し戸惑っていた
無表情な二人と和海の笑顔
「繭、キャメロンは元気ですか?」
「・・・・・・・・・・・」
「今度おやつを買いに行きましょう」
「死んだ」
「えっ?」
「死んだ」
「そうですか・・・寂しいですね」
とても悲しそうな顔をしている
自分で殺した事を忘れているらしい
「また来る」
「はい、お待ちしています」
翔と繭は無言で病室を出て行った
二人を追いかけ、話を聞いた
「記憶って便利だよね、都合の悪い事は忘れるとか」
「翔」
「その手は血で汚れているのに」
「繭」
「僕達は帰る」
「わかった」
「また来る」
「ああ」
二人は無言で帰って行った
今、何を考えているのだろう
何も覚えていない和海を殺す事を考えているのだろうか
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