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和海の回復力には驚いた
まだ体は動かせないが会話は普通に出来るようになっていた
「冬矢」
「何だ」
「今更ですが、高校生の翔はとても綺麗でしたね」
「そうだな、子供の頃の翔を覚えているか?」
「ええ、いたずら好きでした」
「そうだな」
「俺達の母親はどんな人だった?」
「優しい人でした、早く会いたいです」
やはり母親の死もわからないのか
「母親はもういない」
「えっ?」
「病気でね」
「そんな・・・信じたくはありません」
「事実だ」
どうせすぐにバレる事だ
隠しておく必要も無い
「父親の事はどうだ?」
「あの人は好きではありません」
「俺もだ」
「家族よりも仕事を優先するような男です」
「確かに」
「繭の事だが」
「はい、繭が何か?」
「どこまで知っている?」
「悲しい事ですが、繭の母親は愛人だと言う事だけです・・・だから優しくしてあげたいと思っています」
「愛人の子供なのに可愛いのか?」
「関係ありません、繭のせいでは無いのですから」
「そうだな、あいつの責任だ」
やはり記憶は失ったままらしい
優しくしてあげたいなんて初めて聞いた
「お前はまだ受け止められないかも知れないが、俺達は高校生だ」
「はい」
「卒業したらどうする?」
「そうですね、会社を手伝うのも面白そうですが・・・留学したいです」
「留学か、でも翔と離れる事になるな」
「でしたら一緒に行きます」
「断られたら?」
「誠意を尽くすのみですね」
「成程・・・じゃ例えばの話」
「はい」
「繭が会社を継いだらどうする?」
「繭は賢い子です、どうもしません」
「全て譲ると言うのか?」
「私はそれでもいいと思っています」
「そうか」
全く欲が無いと言うのか?
あれほど執着していたはずなのに
「でも不思議ですね」
「何がだ」
「私はずっと眠っていたはずなのに髪は短いなんて」
繭が切り落とした髪
「邪魔そうなので俺が」
「そうでしたか」
とても穏やかに微笑む和海
黒い心など持ち合わせてはいない無垢な心
しかしそれであの二人が納得するのか?
いや、しなくても俺は和海を護る事しか出来ない
この和海を素直に渡す事など出来ない
どんなに悪い弟でも俺だけは味方でいたい
「いいですか」
燕羽の声だ
「入れ」
「失礼します、冬矢りんごを持って来た」
「りんご?」
「翔に頼まれて」
「そうか・・・燕羽、俺の弟の和海だ」
燕羽はまだ怖がっていた
表情ですぐにわかる
「はじめまして、冬矢にこんなに可愛い恋人がいたのですか?」
「恋人ではありません!」
「そうですか、お似合いなのに」
「燕羽、このりんごはいつ渡されたんだ?」
「帰り際にだけど」
「何も言っていなかったか?」
「和海さんが大好きだからって」
「そうか」
そうじゃない
これは試している
和海はりんごが苦手だ
「とても美味しそうなりんごですね、お礼を言っておいて下さい」
「そうだ!俺がむきましょうか?」
「お願いします」
それも翔達に頼まれたのか?
燕羽がりんごをむき、和海に手渡した
「すみません、冬矢お願い出来ますか?」
「ああ」
「ごめんなさい、気を付けるべきでした」
「気にしないで下さい」
燕羽に渡されたりんごを和海に食べさせた
嫌がる様子も無くりんごを食べる和海
「甘くてみずみずしいですね」
「よかったです」
和海は子供の頃、りんごを食べて体調を崩した事がある
それ以来、りんごは大嫌いな筈だった
「じゃ、俺はそろそろ帰ります」
「また来て下さいね」
「はい、じゃお大事に」
「燕羽、わざわざすまなかったな」
「ううん、また来るね」
和海がりんごを食べたのを確認して帰って行った
やはりまだ疑われているらしい
どうしたらいいのか
まだ何も考えられなかった
燕羽の帰りを繭と二人で待っていた
「渡して来たよ」
「どうだった?」
「言われた通り皮をむいて渡したけど」
「うん」
「冬矢が食べさせていた、腕はまだ動かせないらしい」
「和海はりんごを食べたのか?」
「食べたよ、甘くてみずみずしいって」
燕羽を使って確認した俺達
和海の大嫌いなりんごを持って行ってもらったのに・・・まさか食べるなんてね
「繭、どう思う?」
「和海はりんごが大嫌い、絶対食べないはず」
「だよな、腐ったりんごをわざわざ綺麗にコーティングして食べさせてから絶対りんごは食べなかったはず」
「僕も覚えてる、和海は熱を出して寝込んだ」
「ちょ!そんなものを食べさせてよかったの?」
「別にアレルギーじゃないし、昔の記憶が無いのならりんご好きになるかもね」
「ホントによかったのかな・・・会長はすごく優しかったからなんか申し訳なかった」
「優しかったって?」
「優しい笑顔でさ、翔にお礼を言っておいてって」
「優しい笑顔ね」
「学園にいた時の会長とは別人だった、俺初めて笑顔見たし」
「俺達は和海の笑顔なんて見た事無いよな」
「無い、意地悪そうな顔なら知ってるけど」
「じゃ、二人で行って来たらいいよ」
「そのうちな」
「じゃ、俺は行くね」
「サンキューな」
燕羽が部屋に戻り、俺達も部屋に戻った
「どう思う?」
「わからない、でも記憶を失った以上僕には殺す事は・・・」
「参ったな、でも芝居とかじゃないのか?」
「芝居でりんごは食べられないはず」
「だよな」
俺と繭はまだ答えが出ないまま悩んでいた
俺達がされた事は決して忘れる事は出来ない
クソッ!
どうしたらいいんだろう
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