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病院の廊下でぼんやり天井を見つめていたら、首筋にナイフの冷たさを感じた
「さすがだな、情報が早い」
「お前がやったの?」
こういう時の翔は恐ろしい程怖くて冷酷だ
「ああ、俺が殺した」
「殺すのはどうでもいい、でもお前に殺す理由なんか無いだろ?」
「取り合えず、ナイフをしまえ」
「確かに、殺してくれたんだからまずはお礼を言わないとね」
そう言って、隣に腰掛けようとした翔に言った
「外に出よう」
「うん」
屋上の鍵を開け、夜景を見つめた
「冬矢、話があるんじゃないの?」
「そうだな・・・」
話をしたところで、気持ちは変わらないだろう
しかし、事実は話すべきだと思った
「俺があいつを殺した理由は・・・」
翔に全てを話した
「・・・・・・・・・・あの、変態野郎」
「だからと言って、和海を許して欲しいとは言わないよ」
「弟の為ってやつ?」
「あんな奴でも同じ血が通った弟だしね」
「ところで、冬矢はどこまで知ってるの?」
「それは、誰についてだ」
「冬矢と和海、そして繭」
「ああ、繭が本妻の子だろ?だから愛人の子供である俺達には何の権利も無い」
「知ってたんだ」
「まぁね」
「屋敷が燃えたと言う事は遺言書も無いって事だね」
「ああ」
「俺は、学園だけでいいし会社とかどうでもいいから冬矢の好きにしろ」
「繭の物だろ」
「お前はどうするつもり?」
「燕羽とどこかで暮らすさ」
「和海を捨てて?」
「・・・・・・・・・」
「命乞いはしないんだね」
「和海がお前達にやって来た仕打ちは許せないだろ?」
「出来れば、クソジジイは俺が殺したかったけどね」
「すまない」
「正直、ここだけの話・・・俺は迷ってる」
「和海の事か?」
「うん、記憶の無い人間を殺しても気分はきっと晴れない」
「そうか」
「でも、記憶を取り戻す可能性もある」
「だな」
「本当に、面倒臭くしてくれたね」
「すまない」
「当面は和海を見張る」
「ああ」
「それとこれ」
「またりんごか?」
「さすがにそれはね」
そう言って、さくらんぼを渡された
和海が好きなフルーツだった
「毒は入ってないよ」
「サンキューな」
「それと、建設中のウサギ小屋は音楽堂にしたから」
「ああ」
「じゃね」
そう言って、消えて行った
今は、それぞれの気持ちがバラバラみたいだ
復讐と言う言葉が消えたらどんなにいいか
「俺も涙腺が弱くなったな」
空を見上げて涙を止めた
ぼやけて見える月は和海の髪のような綺麗な銀色の月だった
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