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18歳以上ですか?
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学園生活は、何事もなく過ぎて行った
繭が18歳になるまでは何も出来ないしね
「あの、翔様」
「ん?」
「こ、これを受け取って下さい」
何度目だろう
数えるのも面倒臭い
気持ちを伝える方法は手紙しかないけど
受け取るわけには行かないよな
「ごめん、それは受け取れないな」
「でも、もう燕羽君とは別れたと」
「そんな噂が立ってるんだ、まぁ仕方ないけどね」
「でしたら受け取って下さいっ!」
この子の顔、真っ赤だな
勇気を振り絞って俺に渡しに来たんだろう
その気持ちはわかっているけど、誰かと付き合うと言う選択肢は無い
「ごめんね、でもありがとう」
「翔様」
「俺みたいな悪に騙されちゃダメだぞ?」
俯いたまま泣いている、知らない生徒の頭を撫でて、その場を去った
「翔様」
後ろから声を掛けられた瞬間、微笑んだ
「繭、見てたのかよ」
「みんなは燕羽の事を知らないんだね」
「みたいだな、でもその方がいい」
「うん」
悲しくないわけじゃない
でも、もうすぐ燕羽に会えるからこうして笑える
「ボート小屋を壊された和海達は今度はどこでうさぎを飼っているんだろうね」
「使われていない倉庫」
「でも、同じように壊すのはさすがにバレるよな」
「バレるね」
そんな話をしていると、氷龍がやって来た
顔が怒ってるな
「翔、話がある」
「いい話では無さそうだね」
「ああ」
心を落ち着けなければ
「うん、話して」
「お前の馬が殺された」
「え?」
その馬は、燕羽が可愛がっていた馬
「どう言う事かな」
「さっき、部活の奴らが騒いでいたから馬舎に行ったら馬が殺されていた」
「・・・・・・・・・・」
「翔」
「犯人はどうせあいつらだろ?」
どうしてそんな酷い事が出来るんだよ
昔からそうだった
あいつには人の心なんか存在しない
「悪いけど、手厚く葬って欲しい」
「わかった」
「俺は・・・少し一人にさせて欲しい」
「大丈夫?」
「繭、ごめん」
「ううん」
怒りとか、悲しみとか、憎しみとか
全てが渦巻いた感情にどう名前を付ければいい?
今すぐにでもあいつらを殺してやりたい
その気持ちを抑えるのが精一杯だった
温室のソファーに座り、ぼんやり花を見つめていた
「燕羽、ごめん・・・お前の馬はそっちで面倒をみてやってくれ」
「俺が行くまでには乗れるようになれよ」
「クソッ!!」
拳をテーブルに叩きつけ、流れる赤い血を振り払った
こんな痛みでは足りない
燕羽が味わった痛みは計り知れないんだ
何度も叩きつけ、地面を赤く染めた
「もうやめたら?」
「楓」
「ごめんね、すごい音がしたから勝手に入った」
「・・・・・・・・・・」
「自分を傷付けるのはダメ、燕羽が悲しむと思うよ」
「どうしようもない・・・・・この感情を消したいのに」
「手を貸して」
楓はだらんとした俺の手にハンカチを巻いてくれた
痛みはある
でも生きている
「繭がね、心配しているんだ・・・あの子は勘がいいでしょ?翔も燕羽の所に行くんじゃないかって、毎日うなされてるんだ」
「楓、ごめん」
「その返事は、イエスと言う事?」
「・・・・・・・・・・」
「俺は翔が幸せな選択をすればいいと思う、だからもう少し演技の勉強をしないとね」
「だね」
「友達を失うのは悲しいけど、止めたりはしないよ」
「変な奴」
「もしかしたら、生きていれば燕羽の記憶が薄れて好きな人が出来るかも知れないけど、翔はそれが嫌なんだよね」
「そうだね、正解」
「うん」
「生きている方が地獄だった、でも燕羽と知り合って好きになって、今の生活も悪くないと思えたんだ」
「そう」
「だけど、また地獄に逆戻り・・・俺にとっては生きる事が地獄で、死ぬ事が幸せなんだと思う」
「いいね、その言葉曲にいただいても?」
「いいけど、この会話は繭には言うなよ?」
「わかってる」
「じゃ、もう帰ろう」
「うん」
楓の顔も心配そうな顔だった
だからもう少し我慢しようと思えた
「翔、あそこの倉庫」
「懲りないやつら」
「ちょっと運動でも」
そう言って、楓は地面に落ちていたサッカーボールを、倉庫の窓めがけて蹴った
窓は粉々
悲鳴も聞こえた
「命中!」
「さすが」
笑いながらその場を去った
「ざまぁみろだな」
「気持ちよかった」
「てか、運動神経抜群なのにどうして体育は休むんだ?」
「ん~、だるいし」
「確かに」
「球技は怪我が怖いしね」
「そう言う事か、ごめん」
「ううん」
楓の本業は人気バンドのギタリストだった
こんな所にいなくても生活なら十分出来る
「翔!」
「繭、ごめん」
「それより、手が・・・早く手当てを」
「うん」
泣きそうな繭の頭を優しく撫でる楓
繭は泣かない子なのにね
色んな事が重なったし、しんどいのかな
「翔、無茶な事しないで」
「ごめん、もうしない」
「約束」
「お前との約束は怖いな」
「約束」
「わかった、約束」
もう、失う物もないしね
腹が立つ事も無いはず
「いででっ!」
「僕を心配させたから消毒は一番しみるやつ」
「まじかっ!いでっ」
「ガラスが刺さったらどうするの?」
「ねっ」
「もう!」
「いででっ!繭、もっと優しく」
「ダメ!痛みを刻み込む」
「お前怖いよ」
「繭らしいね」
「楓、何笑ってんだよ」
「ごめんね」
そう言う事か
繭は自分が行けないから、楓に見張らせたのか
「はい、おしまい」
「サンキュー」
「消毒は毎日」
「マジか!」
「当たり前」
「しみないやつにしろよ」
「考えておく」
「繭ー」
ホント、ごめん
心配させるつもりじゃなかったのに
「繭、好きなパンを買ってやる」
「もうすぐ夕食」
「じゃ、明日」
「うん、メロンパン」
「了解」
楓は黙って俺達の会話を聞いていた
楓も繭が心配なんだろう
繭はホントにいい奴と結ばれてよかった
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