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はじめました
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はじめまして。
はじめまして。
中等部二年の、絵所 美教(えどころ よしのり)です。
高等部二年の、星屋 哲(ほしや さとる)です。
二年間宜しくお願いします。
此方こそ、宜しくお願いします。
我が学校は中等部と高等部の一貫で、全寮制である。
通常であれば、入学と同時に中等部の一年生と高等部の一年生がペアを組んで、三年間の相部屋生活がスタートするわけらしい。
二年生になるタイミングで家庭の事情で転入してきてしまった俺は、勝手もわからない中学生を一人部屋にするわけにもいかないとのことで、たまたま一人部屋だった星屋先輩と相部屋で過ごすこととなった。
星屋先輩はとても綺麗好きなようで、リビングらしき広い部屋は掃除も整頓もされていて見渡す限り綺麗。
部屋に風呂はなく、その代わりにトイレと簡単な水周りがあって、先輩が用意したのか簡易ガスコンロと調理道具は何となく揃っている。と、いうことは先輩はお料理も出来るんですね。
「食事ってどうなってるんですか?」
「朝は6時~7時、昼は12時~13時、夜は18時~21時まで食堂がやってます。購買は朝の7時~夜の19時まで。それ以外は各自の自由でオッケー……因みに寮の門限は21時ですから注意してくださいね」
「必ずそこで朝食を取らなくてもよい、ってことですよね」
失礼します、と俺の身長と同じくらいの冷蔵庫を開けると如何にも部屋で食事を取っていることが多いですと言わんばかりの食材がこれまたきっちり詰め込まれていたので、冷蔵庫を指さすと先輩は困った様な笑顔を浮かべて頷いた。
「僕、低血圧で朝弱いんです。だから朝食は部屋で取ってます、絵所くんは気にせず食堂使って構わないですからね」
「先輩、俺が朝食作るってどうですか?ひとりで食堂で食事取るのちょっと寂しいので……あ、食材は俺もちゃんと買ってきます」
「え?あ、じゃあ……食材の買い出しを日替わり交代にしましょう」
突然のお願いが意外だったのか先輩は顎に手を添えて暫く考え込んでから、やんわりとほほ笑んだ。そして大きく頷いて自室からルーズリーフとペンを取って来ては表を作り始めた。
そこには癖のない綺麗な字が並んでいて、月曜から先輩、俺、先輩、俺、先輩、と金曜日まで記された。
「絵所君が作ってくれますから、僕が一回多く行きます。それでお休みの土日は各自の自由ということで。冷蔵庫があまり大きくないので、必要最低限をお互いに買ってくることにしましょう?」
ひとつひとつ丁寧に指で指示して分かり易く説明してくれるのを確実に覚えようと頷いて返事していると、急に先輩がクスクスと笑い出すものだから不思議に思って見上げると、いやなんでもないです。と言われてしまった。
「風呂と洗濯物は共同です。風呂は1階、洗濯は3階で乾燥機もそこにあります……あ、休日に屋上が開放されるのでその時なら外干しもできますよ。ここは2階なので布団を運ぶのは少し厄介なんです、難点ですね……ああ、でも1階よりはましですか」
指を上下させて説明しているのが段々と独り言みたいになってきて、それが何だかおかしくて笑ってしまうと怒るでも不機嫌になるでもなく先輩は笑った。
「あ、ごめんなさい」
「いえ、少しは緊張ほぐれました?気を張ると疲れますから、リラックスリラックス」
何もかもお見通しなのだろうか、俺より4年長く生きている先輩は酷く大人に思えた。
思いついたようにケトルでお湯を沸かし始めた先輩は、指でまだ段ボールだらけの俺の部屋を指さして自分用のマグカップを持ってくるように言うので、素直に部屋へ行って持ち込んできた黒地に大きな黄色い星沢山プリントされたマグカップを持って戻ると、ひょいとそれを俺から取り上げて手慣れた様子でさっと洗うと何か粉末を入れて2つのマグカップへとお湯を注いだ。
あの、前言撤回してもいいですか?
まさかとは思いますが、そのファンシーなクマさんのマグカップは先輩が買ってきたものですか。それとも彼女さんが使ってるとかそういうことですか、いやでもここは男女別で出入りも色々と手続きが面倒だって言われたような……と、いうことは。そっか、そっか。
「はい、熱いから気を付けてね」
「ありがとうございます……ひとつ、聞いてもいいですか?」
「はい、どうぞ?ひとつでもふたつでも」
「そのマグカップは……プレゼントに貰ったものですか?」
「これですか?自分で買いましたよ?あ、通販が便利でいいですよ。後で受け取り方とか教えま……ってどうしてそんなに笑っているんです?」
「いえっ、あはははっ、何でもないです!俺も使いたいんでお願いします」
先輩が淹れてくれたのはロイヤルミルクティーでした。甘くてほんわかと優しい味で、この日から俺はメーカーを教えて貰ってこればかり飲むようになりました。温かくて優しくてほっとする大切な味。先輩が心細い俺にくれた優しさの味。
安心して生活していけそうで本当に良かった。
先輩、どうぞ宜しくお願いします。
はい、仲良く生活して行きましょうね。
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