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そんな先輩との星の観察は学校敷地を抜け出した小高い丘の上の芝生で行われた。
徐にごろりと寝ころぶ先輩を真似てみるとまるでプラネタリウムみたいで、視界は目一杯の星で覆われた。
「夜空に光る星、あれですね。あれにはその光り方には2種類あります」
「はい」
「ひとつは、太陽の光を反射して光って見える星。金星や火星など太陽のまわりを回っている惑星や、惑星のまわりを回っている衛星などです。私たちの地球もわく星のひとつですから、宇宙から見ると光って見えます。地球の衛星である月が明るく見えるのも、太陽の光が反射しているからですね」
「それはなんとく理科の授業で習ったような気がします」
「じゃあ、もうひとつ。太陽のように水素ガスを燃料にして、自分自身が光を発している恒星。水素ガスはヘリウムガスに変わるときに、とても大きなエネルギーを出します。これは原子爆弾が連続して爆発するようなもので、ものすごい熱と光を放つのです。夜空にかがやく星のほとんどは恒星だと思ってください」
「爆発した光が見えているってことですか、ところで、こうせいってなんですか?」
「ああ、説明不足でした?恒星っていうのは先ほども言ったように、私たちの太陽のように自ら輝いている星のこと呼びます。恒星の周りを回っている地球などは惑星と呼び、自ら輝いているわけではなく、太陽の光が反射しているから明るく見えるのです。因みに、惑星を回る星のことを衛星と呼びます。地球で言えば月が地球にとっての衛星です。一般的に星とは、惑星は含まず恒星のことを言います。夜空を見上げて見える星のほとんどが恒星で自ら輝いている星、つまり太陽なのです。恒星は今、この瞬間にも誕生しているのですよ」
「どうして昼間は見えないんですか?」
「それは、太陽の光があまりに明るいので、地球の私たちからは、太陽の光がとどかない夜にならないと、ほかの星のかがやきが見えないからですね。」
質問すればちゃんと返してくれて、わかりやすく説明をし直してくれる。それが楽しくて、目についた星を指さすと、名前の由来や古代神話に至るまでの全てを解説してくれた。
質量とか熱量とかはちょっと退屈してしまったけれど、神話や逸話話は面白くて興味深くて、時々難しくて、もっと沢山知りたいと思えた。
そこでも先輩の頭の賢さを嫌になるほどに実感して、少しでもこの距離が埋まってまともに会話が出来る様に勉強しようと密かに心に誓ったのは勿論秘密。
密度の濃い1時間、あっという間の1時間。また連れてきてくれますか?と尋ねたらにっこりと微笑んで頷いてくれた。それが心が躍るほどに嬉しくて帰り道浮足立っていたことを笑われてしまった。
翌日、俺は缶コーヒーとプリンを購買で購入して高等部へ献上しに行った。
行く途中、普段見かけることのない中学生が高等部校舎にいるせいか、もの珍しい目を向けられたけれど、これも罰だと腹をくくり全力ダッシュで駆け抜けた。
…が、これのせいでプリンがぐしゃぐしゃになってしまったのを先輩が袋から取り出した際に発覚して。
あまりのショックに俺の顔が崩壊したのを見て、扇田先輩がコーヒーを盛大に噴き出して先輩に向かって噴射し、その被害たるや全てが先輩へと注がれた。
それなのに、先輩は楽しそうに笑ってぐしゃぐしゃのプリンを食べてくれて、コーヒーまみれのパーカーは扇田先輩が笑いながら洗っていた。
扇田先輩には改めて謝ったら、朗らかに笑って謝り返してくれた。
結局、元から許されていたことを知って、色々と先輩には頭が上がらない思いでいっぱいになって中等部へと全力で走って帰った。
教室へ帰ると、同じクラスで一番仲がよい阿野(あの)に行く前は死にそうな顔してたのに、何かいい事あった?と聞かれたくらいだからきっと表情が綻んでいるんだと思う。
先輩、ありがとうございました。それと、プリンごめんなさい。
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