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ひよことブタ
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ミーンミンミン
ジリジリと煩い音も段々と耳に馴染む不思議な感覚。
ああ、夏だなぁ。
ここに来てから初めての長期休暇は夏休み。
宿題も予定を組み立ててきちんと進めているし、家族の元には一週間帰ったし、阿野は夏休みいっぱいまで実家に帰っているそうだからいないし、これといってすることもなくて暇を持て余していた。
ベランダも日陰になっているとはいえ、気温が下がることはないから、とっても暑い。
「あーつーいー」
ごろりと寝転がってみれば、ほんの少し風がそよいだ。
「えーどころくん」
パチリと瞳を見開くとそこには俺の顔を覗き込む先輩の顔があった。
「あれ、先輩。今日はお出掛けじゃなかったんですか?」
「予定が明日に変わってしまいまして。フリーになってしまったので帰ってきました」
仰いだままパチクリとしていると、ニコニコとした先輩がずっと見下ろしてくる。
「どうしたんですか?」
「水遊びしませんか?」
青いビニールプールを後ろ手に隠し持っていたらしく、俺の鼻先まで垂れ落ちて来た。どこから持って来たんですか?と、問いたくなるような子どもプール。
手に取ってみると、先輩は悪戯に手を離してしまうからべしゃりと顔の上に落ちてくる。
「膨らませましょ」
「ましょ、じゃなくて膨らませろってことですよね」
鼻をさすって先輩の方へと顔を向けると、くすりと笑って台所へ向かってしまう。もう、と不貞腐れて起き上がり案外小さいそれを目の高さまで持ち上げて改めてマジマジと見つめる。
「小さい頃によーく遊んだなぁ、こういうの」
空気孔を探してくるくると回して見つけ出し、口に含んで思い切り膨らます。小さめとはいえ、これ結構しんどいですよ先輩。
頬を全開に膨らませて必死になって空気を注ぐこと数分、漸く形になったそれは小さいながらもちゃんとプールだった。
「おおー、お疲れ様です。ありがとうございます」
タイミングを見計らったようにリッターのペットボトルを数本持って先輩が戻ってきた。ベランダに置いたプールにじゃぶじゃぶと水を注いで、持ってきた分では足りなかったのかまた台所へ戻っていくから慌てて追いかけた。
「俺も手伝います」
ありがとうございます、と先輩は微笑んでリッターのペットボトルを二本渡して来たので、ひとつ頷いてそれを受け取り先に戻って水を注ぐ。
後から持ってきた先輩の分でひたひたになったので、足を浸すと冷んやりと気持ちがいい。
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