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肉まんと砂遊び
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テストの最終日、部活もないしいつもより早く帰れることもあって家に帰って何をしようって阿野と話をしていた校門付近。
阿野は自主練習したいからと言うのでそこで別れると、同じくして友達と別れる先輩を見つけた。
「先輩、寮に帰りますか?一緒に帰っていいですか?」
「あ、丁度良かった。寄り道しませんか?」
「何処へ行くんですか?」
「小腹を満たしてちょっと遊びましょう、テストも終わったことですしご褒美ってことで」
疑問に思いつつも素直についていくと、先輩はコンビニに入ってそのままレジへ向かった。
何か買うものあったかな?とか、そんなことを思ってその姿を少し離れたところで見ていると、軽く振り返って姿を確認する先輩と目が合った。にっこり微笑んで手招きされたので素早く近寄ると、先輩は中華まんのケースを指差して首を傾げた。
「どれがいいですか?」
「えっと、あ!肉まん!で!じゃない!が!いいです!」
ふっと柔らかに笑うと肉まんをひとつ店員さんに注文してお会計を済ませた先輩は、いきましょう。とそれだけを買って店を出たので俺はまたその後を追う。
そのまま近くの公園に入って行った先輩の後をついて行くと、先輩は空いているブランコに腰掛けて少し揺れながら肉まんを半分に割った。
はい、と渡された半分はどう見ても少し大きくて、ちらりと先輩の方を見ると割ったときに失敗したのか俺のより小さかった。
受け取った肉まんを手に隣りのブランコに腰掛けて少し揺れてみる。
熱いくらいな肉まんは湯気をほこほこと立たせていて、それは先輩の優しさの塊のようで何だかじんわりと胸が温かくなった。
「いただきます」
はふはふと食べる中華まんは自分の中で冬が始まるのだと感じる食べ物ナンバーワンで、旨味と季節を感じさせてくれるからブランコに揺られながらモグモグと細かく咀嚼していく。
なんだか少し肌寒い外で食べるからなのか、いつもより美味しく感じて思わず笑顔になる。
クシャ、と包み紙を丸める音がしてそちらへ視線を向けると、急に大きく漕ぎ出してそのままジャンプして見事な着地を見せた。
それを見た目の前の砂場で遊んでいた小学生が目を輝かせて先輩に話かけていて、泥だらけの小学生の手とハイタッチしている。
ポケットにゴミを突っ込んでそのまま砂場に混ざって遊び始めるものだから、俺も慌てて食べ切って袖で口を拭って駆け寄ると、小学生に妙な歓迎をされて何だか楽しみが込み上げてきた。
「何作ってるの?」
「お城ー!」
「よーし、お兄ちゃんたちはトンネルを作りますね」
ブレザーをブランコの柵にかけてパーカーの袖を腕まくりをしてやる気をみせる先輩に目配せをされて、すぐに察してひとつ頷くと優しく目を細めてくれて、俺もブレザーを脱いで先輩のブレザーの隣りにかけてワイシャツの袖を捲ると、先輩はすでにお城のトンネル開通作業に取り掛かっていた。
反対側から小さなバケツに入った水で砂を固めつつ穴を掘っていくと、少しずつトンネルのようになっていく。久しぶりな砂遊びに無邪気に楽しくなってきた。
「おにーちゃん、じょーず!」
「待っててね、綺麗なトンネル作るからね」
小学生の子たちはお城の天辺を飾ろうと固めていて、夢中になって穴を掘っていたら指先に何か触れた。
思わずその穴を覗くと光が見えてそこには先輩の指があった。
「せんぱーい!どうしますか?」
「そのまま固めてくれますか」
「はーい!」
内側を二人で水を使って固めると、綺麗なトンネルが出来上がって。その瞬間に一体感がその場に生まれてみんなで歓声と拍手をあげた。
自分たちもこんなに楽しめると思ってなくて、みんなで泥だらけの手でハイタッチすると不思議と大きな笑い声が出ていた。
みんなで手を洗って其々に帰宅していく小学生に手を振って見送ると、ふと自分たちの汚れっぷりにまた笑いが零れてきて、制服のズボンもシャツもパーカーも見事に泥だらけだった。
「帰りましょうか」
「そうですね、寒くないですか?」
「寒いです!走って帰りましょう!競争ですね~よーい、どん!」
「え!ちょっと!ええ、ずるい!」
泥だらけで羽織れないブレザーを抱えてバタバタと追いかけっこして、ふざけて帰る道は然程長くはないけれどこの時間が楽しくて楽しくて意外に足の速い先輩の背中を見て笑顔が零れていた。
最終的に体力のない先輩はラストであっさりと俺に抜かれて、死にそうな荒い呼吸をしていてゴロリと寝転がって大きく胸を前後させている先輩の横にしゃがみ込んで暫く眺めていたけれど、その表情はとても楽しそうで俺まで嬉しくなった。
嬉しいとか楽しいって、伝染してくるんですね。
もっともっと感じれるのかな、これからこういうことがもっと増えるのかな、ねぇ先輩。
俺、今とても楽しいです。
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