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悪戯と王子様
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冬を迎えようとしてる。先輩の苦手な季節、俺が好きな季節。
なのに。
俺は不満いっぱいに机に伏していた。
「よしくん?どしたの」
「つまんない」
「……ああ!高校2年生は一昨日から修学旅行だもんね!」
「つまんない」
高校生は4泊5日で修学旅行へ行っている。
初日はなんてことなかった。昨日も大丈夫だった、なのに。
3日経って猛烈的に襲ってきたこのつまらなさ。
出発当日の朝、先輩をいつもよりも早い時間に叩き起こして、おにぎりを作っておいたので買
っておいたお茶と一緒に渡してお見送りした。
その夜も、次の日の朝も、そのまた夜も、そして今日の朝も。
何だか猛烈につまらなくて耐えられなかった。
机に伏してガタガタと音を立てて揺らしていると急に重みが加わって動かなくなり、顔を上げ
ると阿野の尻が目の前にあった。
なんだか気分が悪くてその尻をパンチして見上げると阿野はいたーい、とふざけながらも何か
を考え込むような表情をしていて。暫くそれを見ていると、小さな子供が悪戯を思いついたよ
うなしたり顔をするのである。
これは良からぬことが起きる予兆。
「んー、じゃあさ!じゃあさ!今日あれ、やってみる?」
「……あれ?」
「そう、あーれ!」
この阿野言うアレ。実は以前こっそりやって楽しかったから二人して味をしめた遊び。
「他校に忍び込んで遊ぼう」というものだったりする。
これは放課後に他校に忍び込んで、その学校の雰囲気に馴染んでしまおう。というもの。
俺たちの学校は全寮制なこともあって、部活動以外の人間も割と放課後は学校に残っている生
徒が多い。それに対して他校はみんな街に出て遊びに行くらしく、放課後の教室なんて殆ど人
がいないではないか。
それを弟がいるクラスメイトに聞いた俺たちは、近くの進学校なら服装自由だから私服な俺た
ちが忍び込んでもわからないのではないか、と決行に至ったら、面白いくらいに成功したもん
で、それをまたやろうという提案である。
「また総栄(そうえい)高校行くの?」
「だって逢坂(おうさか)高校は制服きっちりだから私服で入れないでしょ」
「んー」
「行かない?」
「行く」
モダモダしていたものの、結局はイエスの返答を出した俺に、そうこなくっちゃ!と元気に笑
う阿野につられて笑顔を浮かべると、阿野は心底嬉しそうに更に顔をにやつかせた。
少し、楽しくなってきた。
つまらない、つまらないと落ち込んでいた気分を取り戻して平穏に無事終了した放課後。
部活を休んできたらしい阿野はウキウキで教室へ戻ってきた。
「バスケ部ってそんな緩いの?」
「ううんー!俺って愛されちゃってるから許してもらえるの~」
くねくねとわざとらしくうねる姿を横目で呆れて受け流して、鞄を持って寮へと向かう俺を、
待ってよ~と後ろから追いかけてくる。
じゃれ合いながら寮へと戻り、各自私服に着替える。バレないように出来る限り高校生に見える服装にしなくちゃいけないのに。
待ち合わせ場所に居た俺の相棒はパーカーとジーパンだった。
俺が言うのもなんだけど、寒くないの?しかもそれいつも通りだよね。
「わー!よしくん大人っぽいー!学校にそんな恰好の人いるかなー?」
「その小学生からそのままです、みたいな服装よりはいいと思ってる……」
そうかなー?と自分を見返す阿野を見ていたら軽く溜め息が漏れた。
「行こう」
それでも、前回成功したことに味をしめている俺は、楽しさに心が浮ついていた。阿野も同じだったようでニコニコとしている。
浮足立つ、という言葉をそのままに浮ついた俺たちは、この後ピンチに見舞われるなんて思ってもいなかった。
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